小説詩集「かなしみの星屑」
休日の午後、カゴを抱えて出かけることがある。
そんな日は、街のあちこちにかなしみの星屑が落ちているから。
雑貨屋と古着屋、教会やお店の裏どおりなんかをゆっくりと歩いた。
星屑って、拾い上げてみるまではどんな種類なのか解らない。
寂しそうに落ちているのでさえ、拾い上げてみると案外暖かいことがある。
多分かなしみの中に、諦めだけでなくって憤りもあるから。
「だってね、」
て、彼に言ったことがある。
だって、そんな熱量のある悲しみは、結局は需要と供給の問題なわけだから。
「必要か、どうか?」
「うん、それだけで、人って悲しみの星になるんだよ」
「大変だな」
って、彼はさびしそうに言った。彼の需要は供給にまさってるというのに。
街の吹き溜りみたいなところに来たら、ちった花びらと一緒になって私の星屑も見つかった。おかしくなって拾い上げて、胸におし当ててみると、熱量は落ちてて、でもまだドクドク音がした。
家に持ち帰って彼に見せよう。笑うかな、「おかしな星屑だな」とか。それで私は笑った。
「よし、かえるぞ」
とか言って、新しいお茶やらケーキやらをかった。
アパートの前まで来てみると、光るものを見つけて立ち止まってしまった。見たことのない星屑だった。エレベーターの前からエレベーターの中、11階まであがってドアが開いて、それはてんてんと彼の部屋の前まで続いてた。駆け寄って拾い上げたら、とても冷たかった。まるで無機質なものみたいに。それで、私は崩れるにみたいになって座り込んで、星屑を胸につよく押し当てた。根源的な、みたいな悲しみが宇宙みたいに広がっている中を、さまよう。
ドアが押し開けられて、
「甘いものかってきたんだろ」
とか彼が言う。
「わかるの、」
「超能力だよ」
とか言う彼が、もっとべつな、静かな熱量さえない悲しみをじっと見つめているのを思う。
かなしみの星屑って、拾い上げてみるまでは解らない。だから私がいるんだ、とも思えた。
おわり
❄️需要と供給的な、求められるものの中に、求められないものがあって、求められること、は暫定的なんだけれど、そこに打ち負かされる、と言ったちっちな絶望みたいな悲しみとひんやりとした宇宙的な悲しみの対比、的お話です。
あれも、これもとか思い描いて、頭の中でぐるぐると、あるいはスマホのメモの中にザクザクと書いているうちに、長いはずのおやすみは終わるもので、ため息です。
血流がおかしくなるほど面倒なことばかりあるけれど、それをものともせずにまた書きます。ろば
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