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小説詩集「地球さいごの日」
先生が机から立ち上がって今日が今日で終わるだけでなく、地球最後の今日となるんだ、って言ったから私たちは椅子から転げ落ちる勢いで教室を飛び出した。
で、美術準備室に置きっぱなしだった原稿をとりに3階までかけあがった。
「部長、」
て言って私は彼女が地球最後の日にデッサンの続きをしているのに驚いた。
「あっ、」
て振り向いたから、どうも、て言って準備室にはいった。石膏像棚のしたの引き出しからプリントアウトした「緑の叙事詩」の束をかき集めた。
準備室を出ると、やっぱり部長はメガネを外したりしながら本当の影を見つめてた。
「先輩、いつもデッサン怠けててすみませんでした」
とか私が言った。
「いいのよ、でもなんで怠けてたの?」
「うまく線がかけなくって、線の羅列がみんなみたいに形を捉えてないのが明白すぎて書く気がうせたんです」
だから、美術部に入ったのに準備室にこもって文芸の秘密結社をつくって活動してた。
「いいのよ、あなたはあなたで部員としての役割を果たしてた」
準備室でパソコンのキーを打つあなたの横顔を私たちよくスケッチしてたのよ、怠けてるダメ部員がいつも真剣なのがわかってた。
「そうだったんですか、隣の吹奏楽の音がめっさうるさくて推敲するのが大変だったんです」
そういえば、流石に今日は吹奏楽の音がしない。
「屋上でやるらしいわ、さっき移動してた」
そうなんですか、って言って一礼して私は屋上まで駆け上がった。
半開きのドアを開けると管楽器が思いっきり空にむかってて、彼らは吹き鳴らしてた。
「屋上でね、演奏したいっていつも思ってたのさ、」
てホルンの子が教えてくれた。
「うん、」
て言って、しばらく聴いて、手すりにもたれて校庭を見下ろした。彼がトラックを周回してるのがみえた。
「おーい、」
て手を振ったら「緑の叙事詩」の束が手からこぼれて風に飛んでった。
私は校庭に駆け降りて、彼が近づいてくるのをライン上でまった。
「よっ、」
「走るんだね、地球最後の日も、」
並走すると、彼はうなずいた。
「読んでもらいたいものがあったけど、さっき風に飛ばされちゃった」
「また書けよ、最後のときまで」
「書くか、」
て、私は携帯を取りに教室に戻った。
いつも早弁してる男子たちが、ビックマックを大量に食べまくってた。
窓辺に集まってる子たちは、相変わらずクラスメートをジャッジしてて、私を見るなり頭の上から上履きの先までをスキャンしてふん、て風情でまた話し始めた。
「ジャッジじゃなかったんだ、」
あれ、カタルシスだったんだ。刻々と近づく地球最後の時を迎えるストレスを回避するには有効なのかもしれなかった。忘れたい何かがいつもあったんだ。
校庭で、携帯を打つ。打って、考えて、消して、戻す。それが、永遠の奥行きを持っていたから最後なんかないんだ、って思えた。
彼が走り終えて、私の隣に座る。私は携帯のドキュメントを差し出す。
チャイムがなってホームルームの時間が終わった。
地球最後の日の体験活動を終えて、私たちは無限みたいに思える放課後に散っていった。
おわり
❄️こどものころ地球最後の日はきっと美味しいものが食べたくなるんだって思ってた記憶が、今日の私に語りかけてきました的な発端です。
ゴールは見たくないけど、見ておきたいみたいな願望なのかもしれません。地球最後の日みたいなのを想像しても、そうは頑張れない私ですが、目一杯堪能したいって気持ちになるのは、今悲しみがうすらいでるからでしょうか。また書きます。ろば
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