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(小説)おおかみ少女・マザー編(二・六)

(二・六)『クローン人間』禁止
 ●遂に人口比率で肩を並べた人類とクローン人間(二〇八〇年一月記事)
『時を遡ること五十年前の二〇三〇年、その年より地球上の人口減少対策の柱として本格的にスタートしたクローン人間の創造と普及拡大。毎年人口の減少が約五千万人であることから、そのままその数を埋める為、毎年約五千万人(クローン人間が出産した子孫も含む)のクローン人間を創造、誕生させて来た。これが功を奏し、二〇三〇年に約四十五億人だった地球上の総人口を、本年度までほぼキープしてこれたのである。
 また同時に、クローン人間の数が徐々に増えて、この四十五億人の中の人類とクローン人間の割合が、本年度遂に同じ五十%ずつとなった。つまり人類とクローン人間の人口数が同じになった、肩を並べたという訳である。(どちらも約二十二億五千万人。計算通りにゆけば、数年前に達成していた筈であるが、生身の人間の生き死にであるから計算通りには行かず、本年までずれ込んだ)
 人類とクローン人間の数が同じであると言うこと。果たしてこれは、一体何を意味するのであろうか?クローン人間の最年長者は五十歳或いは五十一歳であり、人類社会の中で中核を担う存在となっている。また毎年約五千万人ずつクローン人間が増えているということは、各世代、各年代に均等に約五千万人ずつクローン人間が存在しているということでもある。
 このクローン人間が人口比率で人類と肩を並べたということは、その数に限らず社会に於ける力関係、人間関係全般に渡っても対等になった、ということを意味している。であるからして今後人類社会は、人類とクローン人間とが共に手を取り合い、助け合い、協調してゆかねばならないのである。それによって今後も人類社会が進歩、発展してゆくよう、共に努力してゆこうではないか。』

 ●『クローン人間』禁止を国連が決定(二〇八〇年十二月記事)
『本日国連総会に於いて、『クローン人間』という言葉の使用を禁止する声明が出された。これは人類とクローン人間を区別、差別しない為であり、全加盟国が賛成した。従って本声明は、実質この地球上、全世界で採用されることを意味しているのである。』

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