野良犬とチークを

野良犬がなめる
はだしの少女の足をなめる
お返しに
少女は野良犬の頭をなでる
いい子、いい子となでる

少女の指で
頭をなでられるのが
くすぐったくて
野良犬はもっと
少女の足をなめる

少女はもっと強く
野良犬の頭をなでる

なめるとなでる
なでるとなめるの
無限旋律

降りしきる雨の中で
妖しいネオンライトが
雨にぼやける
街のかたすみで

ねえ
さみしいって、言ってごらん
さびしい、と
そしたら思い切り
抱きしめてあげる
びしょぬれのまま
抱きしめてあげる

雨の中でおもいきり
抱きしめてあげるから
ねぇ

やがて少女のもとへ
ひとりの男が近づいてくる
野良犬はおどろいて
狂ったように、ほえる

だいじょうぶ
すぐに、もどってくるから
わたしなら、だいじょうぶ

そして少女は
男の後について
ネオン街の
安ホテルへと消えてゆく

わたしなら、だいじょうぶ
わたしなら、おまえの
くすぐったい舌の感触が
いつでもわたしを
守ってくれるから

わたしなら、大丈夫
ラストダンスは

ラストダンスは
おまえと踊ることに
決めているから

野良犬が
はだしの少女の
足をなめていた
降りしきる雨の中で
少女のはだしの足を

今も野良犬は
少女の帰りを待っている
いっぴきの野良犬が
少女の帰りを
雨に濡れながら、待っている