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(詩)リンダあるいは

リンダあるいは
どぶねずみみたいに

今夜はきみに
辿り着けない雨に打たれながら
とぼとぼひとり街を歩いた

「どぶねずみみたいに・・」
口ずさみながら

あれはリンダだったか
マリアだったか、あの歌の

きみのださい純和風のお名前とは
似ても似つかない
いかした女の子の名前

アベ、マリア
アベ、リンダ
アベ、そして

さいわいあれ、マリア
さいわいあれ、リンダ
さいわいあれ、そして

どれだけ雨に打たれても
それが降りしきる
その雨のしずくが
きみのいる街へと連れてゆく
いつかきみのいる場所へ辿り着ける
そんな雨ならば

いくらでも濡れよう
いくらでも濡れて歩いてゆける
どぶねずみみたいに

今本当におれ
どぶねずみみたいなんだ
ほんとうに

もしきみが目にしたら
いつもは泣きそうな顔したきみの目も
思わずおなか抱えて笑い転げるだろう

だけど今夜の雨は
きみに辿り着けない
限りなくきみには辿り着けない
ひとりぼっちの雨だから

ただこうやって
濡れて歩きたいだけ
今夜の雨は

アベ、マリア
アベ、リンダ
アベ、きみの名前
口にしようとしたら
震えていた唇が
今にも壊れそうになった

さいわいあれ、マリア
さいわいあれ、リンダ
さいわいあれ、

どぶねずみ、みたいに


そして今この雨に
おれ、というわたしと
いっしょに濡れる
同時代のあなたに

さいわいあれ

今夜はそして
やまないで下さい
今降りしきる雨の粒たち

どぶねずみみたいに濡れる
ひとりのわたしと
今夜は付き合っていて下さい


※詩中の歌は、THE BLUE HEARTS の『リンダ リンダ』です。

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