(詩)心の丘

雪を知らない蝉時雨
蝉時雨を知らない雪

季節と季節の隙間を
すれちがい
ずっとすれちがい
とわに
めぐり会うこともない

向日葵を見たことのない
ペンギンと
ペンギンを見たことのない
向日葵

氷と陸との
あっちとこっちは遠すぎて
見つめ合うことも
できないまま

ただ地球はまわり
歳月は過ぎ
恋人たちは別れ、花は枯れ
かなしみはそのまんま
さびしさもそのまんま
みんな、涙もほほえみも
そのまんまで
ただ闇に消えてゆくだけ


もしも歳月が
ひとつの心なら

雪と蝉と
心の中では
めぐり会っていると
言って下さい
心の中で
融けあっていると

夏にはそれが蝉として
冬にはそれが雪として
心が姿を
変えているだけ、だと


もしも宇宙が
ひとつの心なら

ペンギンと向日葵と
心の中では
抱きしめあえると
信じさせて下さい
心の中では
じっと見つめ合い
語り合い

それが氷の上では
ペンギンとして
それが向日葵畑では
向日葵として
心が生まれ
生きているのだと


もしも風が
ひとつの心なら
そしてそれが
あなたとわたしの心なら

なにも
悲しみはない、と
笑って下さい

あなたとわたしが
たとえ
めぐり会えなくても
互いに今
生きていることを
知らなくても

あなたはわたしに
わたしはあなたに
いつかちゃんと
かえってくる、と

なぁんだ、ぼくたち
ひとつだったんだ
そんなふうに

いつか
たったひとつの
心の丘の上に立って
風に吹かれ
なんにも言わずに
見つめ合えるから


ねぇ、そんな
心の丘が
この世界のどこかにある

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