深夜放送
そのラジオ局は
ラストバラードが終わり
DJがおやすみを告げたら
あとは夜明けまで
波の音を流した
深夜放送に
夢中の不良少年は
朝までのわずかな時間
ラジオから流れてくる
しおざいの中で
眠りに落ちた
夢の中では
決まっていつも
ひとりの少女が現われ
けれどその顔は
ぼやけていて
その代わり少女はいつも
海のにおいがしていた
そうやって育ったせいか
今もラジオをつけると
しおざいが
聴こえて来る気がする
夜明け前に目を覚ますと
どうしてもつい
波の音をさがしてしまう
もう少女の夢を
見ることもないのに
あれからいつも
女の子と出会うたび
海のにおいを
さがしてしまう
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