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『笑いのカイブツ』愛され方を選べない男の話

『笑いのカイブツ』を観てきました。落語作家としても活躍する伝説のハガキ職人、ツチヤタカユキさんの自伝小説を映画化したものです。

これは「根多(ネタ)」というものに対して真剣に取り組んだことのある全ての人に刺さる映画ですね。私も雑誌やラジオへの投稿が好きでしたし、今もアマチュアで落語台本を書いてるわけですから、俺用?みたいなストーリーだったんですよ。観て良かったです。

NHKのケータイ大喜利と、オードリーのオールナイトニッポンを模した番組が投稿先として出てくるんですけど、採用されたり常連になったり褒められた時の悦び、これすごくわかるんですよね。ざぶざぶドーパミン出るんですよ。で、さらにネタ作りにハマっていく。

投稿番組には、ジャッジがいます。採用と不採用、ネタの優劣を決めてくれるわけです。面白いか面白くないかは、自分の信頼するジャッジに委ねられる。いわば投稿者と選者、1対1の関係性でいらわれるわけです。

ところがこれがプロの作家になると、相手は一気に「世間」となるわけですね。1対10000000です。ジャッジに委ねていた世間とのすり合わせを、自分でやらねばならなくなる。ここに大きな壁があるわけです。映画の主人公もここでのたうち回ります。死にそうなほどに。

誰だって何かで褒められたり、大きな達成感を得たことはあると思います。けど、それだけでは生きていけない。生きていけないのに、他に愛され方を選ぶことが出来ない男。とんでもなく不器用だけれど、とんでもなく純粋でもある、そういうカイブツの話が心に沁みました。

岡山天音さん、好演ですね。仲野太賀さんの芸人役の説得力も凄かった。そして菅田将暉さん、ウエスト細っ!

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