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韓国おひとり様旅行Epi.1 不測

3月某日 D-0

ふぁぁー💤ねっっっっむい!
AM10:00起床だったと思う。外は曇りがちな晴れだった。身支度をしてから、最後に荷物の再確認を行った。
「よし…これでOKかな!」
玄関を出ようとすると、母がやってきて、私を見て微笑んでこう言った。
「忘れ物をしない!これが一番大事だからね」
韓国旅行の準備期間で、耳にタコができるほど聞いたフレーズ。いい加減もうやめてよ…とは思っても口に出さず、はいはい、と軽く流し、傷が目立つスーツケースを左手で引きながら、リュックを背負い家を出た。

だが家を離れて5分後、立ち止まってからスマホを取り出し、カメラの動画に設定した。かねてから、今回の旅行は"なるべく撮影する旅"にしようと決めていた。主に理由は3つある。
ひとつは、社会人になる前の僕の青春の記録を残したかったため。ふたつめに、人生初の一人旅の経験をもとに、今後の旅行をもっと快適にしたいため。もうひとつは……ラヴィット!(TBSの朝番組)にもし呼ばれた時にこの映像の数々を後半のロケVTR放送枠に採用してもらうため。それは無理あるか。
そうして不純な動機を抱えながら、レンズは下に向けて、動画撮影の赤いボタンを押す。
「はい、僕は今現在家を発ったところです….」
どこが今現在なのか。既に5分以上も経っているというのに。
その事実には蓋をして、わかりやすく緊張した声を録音してから、いつもお世話になっている最寄駅へと足を運んだ。

羽田第3ターミナル

出発2時間前到着の17時半を目標に、羽田第3ターミナル駅へ向かう予定だった。しかし予定よりやや早く、17時20分には無事に着いた。長いエスカレーターを上り、3階へ。そして少し歩くと目の前には多くの航空会社のロゴがずらっと並んでいる。その郡もA~Fくらいまであったのだろうか。こんなに広いと、私が乗るアシアナ航空の預入荷物の受付を探すのも一苦労だ。インフォメーションセンターに相談するか、それとも勘を頼りに進むか。ただ時間に余裕はあるので、ここは一旦自力を選んだ。そうすると、航空会社は多いが距離が長い左方向or距離はないが航空会社少なめの右方向の2択。この最初の選択で運命は大きく変わる。根拠もクソもないが、最終的に選んだ答えは『右』であった。絶対外す流れだろ…..と思いきや、なぜかちゃんと見つかった。電車の遅延もなく、ここまで幸先いいスタートを切れたってことは、きっとツイてる。
でも早すぎたせいで人がほぼいない。暇つぶしに羽田空港の外国人ウケしか狙ってない有名スポットを巡っていた。その途中エスカレーターでスーツケースはド派手に音を立てて転げ落ちた。後ろや周辺に人がいなかったので一安心、、、これは”なんか”ツイてるな。
数十分後くらいしてから、預け入れ荷物の受付が開始。機械で色々発券し、スーツケースはベルトコンベヤーに乗っけて運んでもらい、搭乗券もゲット。いざ"DEPARTURES"のゲートへ。♪どこまでもー限りーなくー降りー積もる雪と あなたへの想いー♪と内心歌いながら改札を抜け、いかにも帰国する外国人観光客の方々の後ろに並び、金属探知機などの検査を経て、ラウンジに着く。
…ああ保安検査早すぎ。時間余りに余ってる。でも夜ご飯でお金あんまり使いたくないなーと思い、多少撮影したり、ウォンに一部両替したり、ラウンジにある自販機でポカリを買って飲み干したり、ぼーっと人間観察したりして入国審査まで別の事をしていた。
入国審査を終えると、飛行機に搭乗。外は既に暗かった。
通路を進み、座席番号をしっかり確認して座席に着く。この時間寝ようかと思ったが、先々の不安が頭をよぎって眠れない。韓国到着してからやらなくてはならないことがあり、それら全てを到着後1.5時間くらいの間に済ませる必要がある。まず、事前にオンラインで購入したSiMカードを空港内にある某大手通信事業の受付で受け取る。次にインフォメーションでAREXの乗り場を教えてもらい、3番目にWOWPASSを購入、AREXで孔徳駅へ向かい、予約したビジネスホテルを探す……どれも時間がかかりそうだ。でも何を隠そう、唯一僕にはコミュ力という万能武器を持ち合わせている。それに会話の中の不明点は曖昧にせず、自身が理解できるまでしつこく尋ねるほどのお化けコミュ力。これがあれば…………いやこれなしには何も出来ぬ男であった。方向音痴もたまに発動すれば、機会の操作は人並にやれるものの、知らないことが多すぎると気になったボタンは片っ端からポチポチするせいで、時に大きなエラーを起こすこともある。さらに韓国語はカムサハムニダ以外ほぼ話せない。もちろん英語もボキャブラリー不足。そう、この馬鹿者には日本で培ってきたコミュ力を頼りにする以外道がない。
僕にはそれしかないだろ、と割り切ったつもりでも不安は解消できぬまま飛行機は夜の羽田を飛び立った。

機内

飛行中しばらくすると、機内食を渡される。

玉子を散らした照り焼きチキン乗せご飯、バターロール、生野菜、ブルーベリーの形した謎の食べ物、さらにケーキもある!右上のカップはCAさんが持ってくる緑茶orコーヒーを注ぐためにある。

ポテサラっぽい食べ物のそばに⚫の形したものがあると思うが、アレが1番よく分からない味だった。はっきり言ってまずい
あと生のトマトが大の苦手なのだが、お綺麗なCAさんたちにいい顔したかったので、澄ました表情で全部食べた。この時誰1人僕を見ていなかった。そりゃそうだ。
食事後すぐ眠れるかと思ったら気圧のせいで想像以上に頭がやられてしまい、悶絶している最中に飛行機はいつの間にか金浦空港へ着いていた。復路では十分に対策していこうと堅く決心したフライトになった。

金浦空港

「っし、いっちょやってやろうじゃねぇか」と内心呟き、降りて歩きながら深呼吸をする。一本道の通路を進み、途中Q-CODEやパスポートを見せてチェックが終わると、エスカレーターを下り、預け入れ荷物のあるベルトコンベアーで待機。羽田で早めにスーツケースを渡してしまったせいか、25分ほど探すのに時間がかかった。予定より大分ズレ込んでいる。早く通信会社を見つけねば。
焦りつつ出口の扉を出ると、そこには……想像より広くもない空港ロビーの景色。裸眼1.0の男は左を向くとインフォメーションのマークを発見した。意外と楽勝??
インフォメーションで1人佇む女性(以下インフォウーマン)に話を聞いてみる。まずは、SiMカードが必要になるので、「Where is KTローミング(通信会社名)?」って言ったと思う。恥ずかしながら、すぐそこにあった。裸眼1.0の目は節穴である。ササッと移動して、オンライン予約した証明書と引き換えに緑色の袋に入ったSiMカード(入れ替え用の銀色のピンも同梱)をゲット。
またインフォウーマンの元に行き、「Where is AREX?」。The 中1英語レベルの英会話炸裂。それに対して英語で返ってくる。何言ってるか分からないが、おそらく「案内板の指示に従っていけば大丈夫」といった返答だろう。でもインフォウーマンさんよ、どの案内板なんだ?(あとでよく周り見たら案内板ちょっとしかないから分かりやすかった。ごめんちゃい(ノ≧ڡ≦)☆)
ここで、しつこく尋ねる姿勢が活きてくるわけだ。「ん??え??(基本滞在中マスクしてるので声のトーンと目で表現)」「Ah…」お互い気まずくなる。この噛み合わない空気は耐えるほかない。そこから日本人向けの鉄道路線地図を渡されて色々議論を交わしたあと、ついに目的地の最寄り駅にあたる、孔徳駅までの行き方と到着予想時間を把握した。ここからはそんなに迷子にならないようにすれば、ホテルのチェックインの受付終了時間前に間に合うはず。
すぐそばにあったエスカレーターをくだり、早足でひたすら進む中、WOWPASS発券機を見つける。「こ、これだ!!」コイツがいわば交通系ICカード兼クレジットカード機能を持つ便利カード。慎重に読みながらポチポチしたあと、ゲーセンにある一昔前のデータカードダス的に落ちたWOWPASSを手に入れた。

そこからAREXを……いや待て。おい、この時点で案内板からAREXの文字が消えた…だと!?どういうことだ!!

ーーまだこの時、あの野郎は"AREXはAREX"としか認識していなかった。AREXが標準語であり、音楽レーベルのエイベックス(avex)の流れでエーレックスと発音するのが当たり前だと信じ込んでいた。正しい発音はアレックスであり、本来"Airport Railway"と表現される。例えるなら、シドニーオリンピック金メダリストの高橋尚子氏の本名を知らずに、愛称のキューちゃんで覚えていたのと全く同じ考え方であるーー

それをまだ分かっていなかったこの時の僕は突然大きな不安に駆られた。日本で買った最新のガイドブックをもとに何週間も前から下調べしていたが、AREXが案内板で示されなくなったということは、今は廃線…?俺が今まで見てきたものは幻だったのか??………って思考してる時間あるなら、駅員探してとっとと聞きやがれって思った人へ。はいド正論です。
少なくともこの夜中で駅員が歩いてるような雰囲気が無いので、駐在してそうな場所を探す必要があった。そこはすぐ見つけられたものの、中の構造がよく分からず人が見えない。でもブザーらしきボタンを押すと、ひょいと一瞬にして女性が出てきた。なんか怖い。
先程の中1英語の要領でAREXの場所、WOWPASSのチャージ場所を尋ねると、相手も中1英語で返してきたので助かった。

※とまあ、その先のAREX乗る~孔徳駅の出口に着くまで紆余曲折あって時間がかかったのだけれど、文字起こしするにも面白くないので割愛。ひとつ残しておきたい言葉は、中国語できる女性の駅員さんと孔徳駅のミセンの時のキム・デミョンみたいな男の駅員さん、案内ありがとうございました。

孔徳駅、マポ区

さて、孔徳駅10番出口へ着いた(後に目的のホテルまで遠回りになってしまったことが発覚)。真夜中の麻浦区は少し静かだった。人通りもあまりない。Googleマップを開くが、ここからホテルまで行くのもよく分からない。やはり現地人に聞こう。
でも周りを見渡しても……こっちに向かって歩きタバコしながら「残業終わりです」って顔してるメガネのオジサンしか聞けそうな人がいない。普通だったら絶対選ばないが、人気のない状況では迷ってる場合じゃない。「Excuse me!」と聞くが、そのオジサンは気付かない。もう一度「Excuse me!」と尋ねるが、これもスルー。再度「Excuse me!!!」ようやくわかってもらえた……のだが、持っていた煙草を躊躇いなく綺麗なアーチを描いて後ろの道路に捨てた。けれど今の私はそれを注意してる場合ではない。
私のスマホを見せて、ここ行きたいとジェスチャーすると、おじさんはガッチリ俺のスマホを奪って、眼鏡を外しじっくり見る。返答は、俺のスマホを返したあと指さしながら韓国語で「あーいって、こーいくんだよ」と大雑把な指示をする。ゴリゴリの韓国語だし、そんなんじゃ場所分かんないよ!とマスク越しで困った顔作ったら、「どこ行きたいの?」と韓国語で聞かれた(のだと思う)。「Roynet Hotel Seoul Mapo」って言うと、なんと彼は持ってたスマホで場所を調べてくれた。さらに、「Follow me」と言い、後ろをついていくとほぼ近くまで彼が案内してくれた。意外と優しいじゃん。それとも面倒くさそうな観光客への諦めもあったか。
「カムサハムニダー」と感謝して笑顔でお互い別れたが、結果彼の優しさよりもタバコのポイ捨ての印象がどうしても勝るのであった。

そしてロイネットホテルソウルマポ、日付変わる0時前に到着。急いでチェックインして6階の部屋へ。部屋の中の撮影もして、動画も回して、風呂入って……確か3時に寝た。あと元々支度遅すぎ人間であるため、そこはご愛嬌。

以上が1日目+αの旅。続きは2日目朝から。

P.S.
この旅の経験上、場所分からずマップアプリでスマホを見せる時、窃盗はなくともスマホ奪われる確率高そうなので、ちょっと工夫した方がいい。そもそもスマホを見せる必要があるか、も視野に。

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