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#2 上京噺

色々と記憶を辿りながら頭の中を整理していこうと思う。

当時20歳の私に衝撃を与えた言葉。
「〇〇さん、来週から東京で勤務になりました。」

就活を終え、近場で働くと思い込んでいた私に
聞いたことのない地名で淡々と詳細が聞かされる。
動揺していた。当然だ。

圧倒的に関西に事業所の多い会社で東京に行くことなど
ロシアンルーレットでハズレを引くようなものだったからだ。

私は書いたことのない地名をメモに記し、その一週間後
上京することになる。
(当時の動揺ぶりはメモを見返すと安達区と書いてあった)

私は家に帰り家族に知らせ、翌日には知人にも伝え
大急ぎで引っ越しの準備に取り掛かった。
考えてもいなかった一人暮らし。
知らない土地。好奇心旺盛な私に動揺はあったものの、
決まったことは仕方ないと割り切り、
新生活への期待で胸がいっぱいだった。

この当時友達と東京に旅行しようと自ら計画を立てていたことも
影響があったかもしれない。
私は20年間東京という街を知らなかった。
せいぜい家族とディズニーランドに行ったくらいだ。
あれを千葉と呼ぶなら実際には東京に行ったことがなかった。

追い込まれると私は何故かその状況を楽しみたくなるのだ。

勤務地が決まる1週間前にはベトナムに通訳なしのホテルを取り
訳も分からない土地で2泊3日過ごしたこともあった。

そんな土地に比べればここは日本の首都。東京。

ここから私は東京という街の魅力に惹かれ、気づけば好きになっていた。


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