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読書履歴 3

私の人生に色濃く存在している作品、印象に残った作品を3作ずつ挙げていく。
小説、画集、教科書、雑誌など、本の形になっていれば対象とし、ジャンルを限定しない。





7. 仏教聖典/仏教伝導協会

おすすめの本を聞かれた時にこれを挙げると、様々な反応が見られて面白い。

「またまたご冗談を」みたいな感じで一笑に付す人もいるし、「ほう、面白いチョイスですね」と興味を持つ人もいるし、「うわ、なんかめんどくさい奴に聞いちゃったかもしれない」みたいな苦笑いを浮かべる人もいるし、「大丈夫?つらい事でも?」と心配してくる人もいる。

多くの日本人同様、仏教と神道ごちゃまぜの環境に育ち、宗教を宗教らしく学びはせず、仏壇に手を合わせ、神社に初詣に行き、神頼みといっても特定の神様が浮かぶわけでもなく、宗教の違いを理由に戦争起こすとかまじ意味不明なんですけど、とか思いながら生きてきた。

これを手元に置くに至ったのは「仏教とキリスト教の違い」について検索したことに端を発するが、特に仏教と科学の関係に興味を持ったことによる。

仏教ウェブ入門講座「科学と宗教」
https://true-buddhism.com/religion/science/


たとえ偉人の言葉であっても長い年月を経て本人の意図しない切り取りをされている可能性があるし、記事自体が「ほら!偉い人たちが仏教を認めてるんだよ!科学的だってさ!」みたいな趣旨なので話半分に聞いておこう。

私はどんな宗教であろうとそれが自分の心を救ってくれたり生活を明るくしてくれるなら分け隔てなく取り入れればいいと思うし、つまり一つの宗教に絞って他を排除する必要などないと思っている。

しかし、なるほど。
宗教を科学と照らしたことはなかったなと思った。

科学者のトップオブトップが両立可能と言っているのだから「神の御業」みたいなファンタジーでゴリ押しされない話が聞けるのだろう。

実際にこの本を読んでみると「なにこれすげー納得できんじゃん……」と思うところが多い。
私の心を救ったり生活を明るくするか・宗教として信仰するかは別として、「ほんと、おっしゃる通りです」という部分があるのは事実だ。

とっつきにくい点を挙げるとするなら名詞に対する馴染みのなさである。

ヒマーラヤ山の南のふもとを流れるローニヒ河のほとりに、釈迦族の都カピラヴァスツがあった。その王シュッドーダナは、そこに城を築き、善政をしき、民衆は喜びしたがっていた。王の名はゴーダマであった。
妃、マーヤー夫人は同じ釈迦族の一族でコーリヤ族とよばれるディーヴァダハ城の姫で、王の従妹にあたっていた。
(中略)
シュッドーダナ王の喜びはたとえようがなく、一切の願いが成就したという意味のシッダールタという名を王子に与えた。

仏教聖典:pp.2-3

全297ページのうち上記のようなサンスクリット語頻出状態で記述されるのは冒頭わずか10ページまでであるが、その10ページで危うく心が折れかけた身としてはどうか諦めず、あるいは冒頭を飛ばして読むことを推奨したい。

他に考えられる対策として、あらかじめ「聖☆おにいさん」を読んでおくというのは割とありだと思う。

ブッダとイエスのルームシェア in 立川という聖人を凄まじくカジュアルに扱った作品なので、彼らにまつわる人物も気軽に登場し、名詞が何度も繰り返し出てくる。

当然ブッダに関連する範囲にはサンスクリット語の名詞も多く含まれるので、相関図を含めいつの間にか言葉が頭に入っていくことになるのだ。

もちろん効率的とは言えず「聖☆おにいさん」では履修できない単語もたくさんあるが、「意味も分かんないしカタカナの羅列にしか見えない」という状態から「意味分かんないけどなんか馴染みある語感だ」と思えるくらいの変化は十分に期待できる。



8. ハイパーハードボイルドグルメリポート/上出遼平

元はテレビ番組であり、テレビ放送された回を含む書籍版であるが、違いは取材者の主観や映像に含まれなかった点が大幅に補完されているという点である。

映像では取材者(ディレクター/カメラマン)の感情や思考にはほとんど言及がなく、テロップ等は映像の中で起こっていることに対する説明や補足のみだ。

映像を観てから本を読んでもいいし、本を読んでから映像を観てもいい。
私は本で補完し、補完した情報と照らしながら映像を再度鑑賞した。

世界有数の安国である日本で生まれ育った人間が、治安が良くない国の、地元の警察が匙を投げるような場所に単身で乗り込もうと思い、取材をしようと思い、実際にそれをやり遂げ、よく無事に帰ってこれたものだと感心する。

治安の悪さのみならず、余計な誤解を生みやすい環境が整っている。
文化も違う。価値観も違う。言葉も完全に通じるわけではない。通訳がいる時もあるが、通訳とて身の危険がある。

そういう「やらない方がいい理由」が山のようにある中で、あえて実行し、警戒心と敵愾心の塊のような目を向けられ、時に武器を持ち出されて一触即発の事態になりながらも、「飯を食っているところを撮らせてくれ」という要求を飲んでもらうところまで持っていくのだ。

人間力や胆力みたいなもののパラメータがおかしなことになっているとしか思えない。



9. 建築知識 特別編集 猫のための家づくり

生まれる前から家に猫がいて、猫とともに暮らし、自分から撫でてくれと寄ってきたのに引っかかれ、噛みつかれ、後ろ足で蹴られ、飛びかかられ、生傷を作り、服が毛だらけになり、よく分かんないタイミングで吐かれたりなどし、ごみ箱を倒され、障子を穴だらけにされ、網戸の穴を拡張され、柱が傷だらけになり、虫を持ってこられたことに恐怖し、なんかずっと文句言われてる感じがする、どうしたの?どうしてほしいの?とご機嫌をとり、
そんな猫に数えきれないほど救われて生きてきた。

実家を離れ、上京した。
猫を愛してやまないが、飼うことができない。

そんな時に出会ったのがこの本だ。

猫が暮らしやすい家ってどんなのだろう?
どうしたら快適に暮らしてもらえる?
そういうポイントをイラスト付きで解説してくれ、模様替えやリフォーム、引越し、家を建てるときなどに大いに役立つ資料である。

飼えないっつってんだからそんなの意味のない情報じゃないか、と思うだろうが、この本を読むと猫のいる生活をリアルに想像でき、なんかもう猫と共に暮らしている気分になれるのだ。

これはここに、あれはそこに置いて、ここを猫が通るから、そっちにはこうして……

イマジナリー猫とのイマジナリー共同生活である。




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