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全米を泣かせなくていい! ~感情を揺さぶる文章を書くために

あなたにとって、「泣ける作品」とは?

先日、小川こころが主宰する「書きたい人のコミュニティ 青猫とペン」の参加メンバーさんたちと、「泣ける作品」について雑談する機会があった。

絵本や小説、映画、音楽など、
メンバーさんたちが熱く語る「自分にとって泣ける作品」は、じつにバラエティーに富んでいて、かなり盛り上がった。(メインの文章ワークショップよりも……汗)

おもしろいなぁと思うのは、同じ作品(たとえば、絵本『100万回生きたねこ』であっても、人によって「エモい」と感じる場面が違うこと。

思えばこれは、文章ワークショップでも日頃から実感していることであった。ワークショップでは毎回、メンバーさんたちがいろいろなテーマで文章を綴る、楽しいワークの時間がある。(えっ、楽しいのは私だけ…?)

メンバーさんたちが書き上げた文章を読ませていただく際、その面白い現象は起こるのだ。
文章が「A・B・C・D」のような展開で書かれているとしたら、ある読み手はBの部分でうるっと涙したり、別の読み手はCの部分でにんまり笑顔になったり、また別の読み手はBの部分ではニコニコしていたのに、Cの部分で感極まっていたり……。
まさに、人によって刺さる場所やリアクションが異なっていることが多いのである。

「心理描写」で、その人の心のうちにふれるコツ

人はなぜ、さまざまな文章や言葉に心惹かれるのだろう。
そこには、喜び、哀しみ、迷い、悩み、打算など、人間ならではのリアルな心理が描かれているから。

心理描写に自分との接点を感じると、読み手は笑ったり、涙したり、共感を覚えたりしながら、文章に織り込まれた世界に深く入り込んでいく。

心理描写を綴るコツをひと言でいうなら、
”心が揺れ動くプロセスを捉えること”といえる。

どんなふうに心が移ろい、気持ちが動き、
「嬉しい」「楽しい」「悲しい」「悔しい」などの感情が湧いてきたのかをていねいに描くことで、
味わいや奥行きのある文章が生まれるのだ。

人は「論理」でなく「感情」で動く生き物です

たとえばメール文を例にとっても、
「先日のイベントではありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします」
のような定型のあいさつ文では、なかなか印象に残りにくい。

相手との仕事内容にちょっと思いを馳せて、その仕事が自分にとってどうだったのか、どんな感情が湧きおこったのかを想起してみる。
そのうえで、
「○○課長からアイディアをいただいたおかげで、お客様だけでなくスタッフのモチベーションも向上する楽しいイベントになりました。ぜひまた、一緒に仕事をさせてください」
のように伝えると、相手の心にしっかり響くはずだ。

たとえ読み手が不特定多数でも「一対一」のつもりで書く

ここまでの話をまとめると、
書き手の内面を掘り下げたていねいな心理描写が、共感や自分ごと化を促し、読み手の中に「気づき」「発見」「覚悟」などの強い感情を呼び覚ます。
これが「泣ける作品」(感情を揺さぶる作品)を書くコツ、といえるだろう。

そのために必要なのが、文章を受け取る相手をぐぐぐ~っと絞り込むこと。
先ほど例にあげたメール文のように、読み手が明確に決まっている場合はもちろんだが、たとえ複数の読み手に届ける記事でも、それは同じ。
読み手は、そこに書かれた内容を、自分に届けられた「一対一」のメッセージとして受け止っている。

とはいえ、不特定多数の読み手の場合、どうやって相手を絞ればいいの?と悩んでしまうよね…。
そんなときは、下記の方法で読み手のペルソナに迫ってみよう。

➀まず、年齢や性別、職業などの「属性」を想定する。

➁その「属性」をもつ人の悩みや課題、ライフスタイルに焦点をあてる。

たとえば、
「子育てが一段落し、ライターとして転職活動中のアラサー女性」
「腰の痛みや運動不足に悩んでいる、ひとり暮らしの50代男性会社員」
のように、具体的な読み手を想定すると、その人に伝えるべき内容がくっきり浮かび上がる。

全米が泣かなくたっていい。
たった一人の読み手を泣かせることができたら、
あなたの文章は、届くべき人にちゃんと届いているってことだから。


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