シロクマ文芸部 | 収監
布団から抜け出した矢先、あっけなく捕まった。罪は認める。自覚はあるよ。
時間泥棒だ。
「時間は大切だからなあ。命と一緒だって、よく言うだろう。時間はだめだよ、時間は」
「反省してる。みんなにも謝った」
「何が原因かちゃんと考えたか」
「途中まで書いていた物語の冒頭のシーンが病院のベッドだった。昨夜、その話を書いている途中でシロクマさんのお題を知ってしまったんだ。『布団から』で始まるお題だって」
「つまり、安易にくっつけたんだな」
「……そうだよ。品性の欠片もなく」
「罪を犯した者はどうなるかわかってるか」
「……収監されるんだろ。掌編刑務所に」
「そう。お前の大好きな掌編刑務所。大体収監されるのは土曜日だけど、どうする?」
「土曜日。明日か……。明日は人間ドックの予約を入れてるんだ。出来れば日曜にして欲しい」
「いいだろう。ただし、毎週ショートショートnoteは書けなくなるぞ」
「自粛するよ。出直すって宣言したんだから」
「出直すなんて言って、こんな風に言い訳を小説風に書いてるじゃないか」
「もうしばらくは書かないよ。ほんとに。反省して、本を読んで、心を潤わせて、また戻ってくるよ。あ、でも、日記は書きたい」
「まあ、日記くらいはいいだろう……」
[完]
掌編刑務所とは、杜崎まさかずさんが考案されたものです。
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