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何にでも神が宿っていると思えば有り難いものだ【伝説の安心感】


ラブぬか漬け 〔超ショートショート〕


「ぬか床様ぁ、お許しくださいぃ」
ふざけた調子で軽く頭を垂れて、冷蔵庫からタッパーに入ったぬか床を取り出す。

最後に触ったのは五日前か。
相当にご立腹だろうな。
くくっと笑いながら蓋を開けると、ツーンと鼻をつく独特の匂い。

「お許しください、お許しくださいぃ」と言いながら糠の中から小さな人参を取り出す。

糠床の表面は青ざめ、ところどころ白く浮いたカビのようなものも見られるが、そんなものは無かったことにして、塩を足し、底から豪快にかき混ぜる。

「今日の貢物は大根でごぜぇます」

汁物に使わなかった残りの大根を糠に沈めて、またわざとらしく頭を垂れる。

ぬか床様は裏切らない。どんなに怒っても、塩と貢物さえ怠らなければ、数日後には美味しいぬか漬けに育ててくださる。

「ありがてぇなぁ、ぬか床様は」

ご飯と汁のおかずに添えた人参をポリポリと噛み砕きながら、ため息をついた。




#毎週ショートショートnote
に初めて参加させていただきます。
今週のお題【伝説の安心感】で創作しました。

一つ前にも同じお題で書いてみましたが、文字数のルールを知らなかったので書き直しました(汗)

企画をご紹介くださったLove the PTA Toshi Inuzuka様、ありがとうございました。

たはらかに様、楽しい企画をありがとうございます!

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