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成功するか?を過度に重要視すると・・・

9月10日から16日は厚生労働省の「自殺予防週間」です。

自殺予防週間では、自殺について、誤解や偏見をなくし、正しい知識を普及啓発することをおこなうということで、わたしもその心に賛同しまして、情報を紹介していこうと思います。

突然ですが、みなさんは「こういうことを大切にしたい」ということはありますでしょうか?

こういうことを重要にしたいということがはっきりとしていて、言葉にすることが、人生の方向を導いてくれて、ウェルビーイングに満ちた生活にしてくれることはよくいわれています。

一方、重要にしたいということに固執してしまうと、逆にメンタルに良くない場合があるようです。

今回は私たちの研究グループで行った論文についてご紹介しつつ、人生で重要にしたい領域とメンタルの関係について考えてみましょう。

ひとは幼少期からの体験によって、ある種の人格形成がなされていきます。そういった人格形成の特徴のことをスキーマと呼んだりします。

スキーマとは、そのひとの考えや思考の源になるような考えの傾向のことです。例えば、「人を大事にするべき」というスキーマがある場合、困っている人を見かけたら「助けなきゃ」と考えるでしょうし、実際に手助けするという行動をとるでしょう。

こういったスキーマの中でも、「達成動機」と「他者依存性」という2つの領域が理論的にも研究的にもうつ病の発生要因として重要視されてきました。

達成動機というのは「成功するかどうか?失敗するかどうか?」の領域を重要視する傾向です。他者依存性というのは「対人関係がうまくいくかどうか?」の領域を重要視する傾向です。

成功する、対人関係を重視するというのは重要なことな場合も多いので、こういったスキーマがあることが必ずしも悪いわけではないのですが、うまくいかなかった場合や対人関係でトラブルがあった場合など、強い抑うつ感を感じる場合もあるということです。

わたしたちの研究では、大学生を対象にして、うつ病の基準までは至らないものの抑うつ症状を感じている閾値下うつ大学生とそうではない大学生の間で、達成動機と他者依存性に違いがあるのか?について調査しました。

108 人の学生のうち、34 人が閾値下うつで、74 人は閾値下うつではありませんでした。2つのグループで比較したところ、閾値下うつの大学生で達成動機のスキーマの得点が高いということがわかりました。

やはり、成功するかどうかにだけ固執してしまうと、うまくいかなかったときに大きな喪失感を感じ、メンタルヘルスに悪影響を及ぼす場合があると考えられます。

成功するかどうかももちろん大事ですが、それ以外の価値判断基準を持つことも同時に重要と言えそうです。

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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筆者 あおきしゅんたろうは福島県立医科大学で大学教員をしています。大学では医療コミュニケーションについての医学教育を担当しており、臨床心理士・公認心理師として認知行動療法を専門に活動しています。この記事は、所属機関を代表する意見ではなく、あくまで僕自身の考えや研究エビデンスを基に書いています。

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