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トレイル未経験のサブ3ランナーが富士登山競走五合目コースを走るとこうなる

1 はじめに

 いつもお世話になっております、アオキプランです。私は、普段は公務員として働きながら、社会人お笑い芸人として休みの日に舞台に立つなど活動をしています。

 また、私の趣味の一つはランニングなのですが、ランニング歴1年半でフルマラソンサブ3(3時間切り)を達成しました。詳しいプロフィールはこちらの記事から↓

 現在の目標は市民ランナーのグランドスラムの達成で、2023年の四万十川ウルトラマラソン100㎞でサブ10(10時間切り)も達成しました。サブ10達成の記事はこちらから↓

 市民ランナーのグランドスラム達成まで、富士登山競走山頂コースの完走を残すだけになりました。山頂コースを走るためには、五合目コースを2時間20分以内にゴールをしないといけないということで、今年は五合目コースに初挑戦しました。

 タイトルにあるように私はトレイルランニングの経験はありません。今回は、フルマラソンサブ3、100㎞ウルトラマラソンサブ10レベルの市民ランナーが、トレイル未経験で富士登山競走に挑戦するとどうなるかお届けします。最後まで是非ご覧ください。

2 練習

 私はフルマラソンのサブエガ(2時間50分切り)を目指しており、現在、走行距離が週70㎞、月300mを目安にトレーニングをしています。ただ、雨とか飲み会とかの都合で、結局は週50㎞、月200㎞くらいの走行距離になっています。

 日々のトレーニングで富士登山競走に向けて特別なことはしていません。強いて言うなら、いつものランニングコースが割とアップダウンがあるくらいなのですが、五合目コースを走った今、全く意味がないアップダウンだったと分かりました。

いつもの10kmコース、こんなアップダウンは意味がない!

 NR多摩に所属しているランニング仲間に誘っていただき、五合目コースの試走はできました。五合目コースは距離としては約15㎞なので、試走前は「たぶんハーフマラソンと同じくらいの強度でしょ」と余裕をぶっこいていましたが、思っていた3倍は辛かったです。試走していなかったら、レースで心が折れていたと思います。

 「富士登山競走の練習は、富士山でしかできない」と言われているらしいですが、確かにそうだと思います。路面は、トレイルランニングで再現できるかもしれませんが、連続した傾斜と標高は富士山でしか再現できないからです。初めて出場する方は、少なくとも1回は試走した方が良いと思います。

走った高度が富士山の形をしている(試走時)

3 コースの特徴

 五合目コースは距離としては15㎞なのですが、山頂コースへの挑戦権を得られる2時間20分を目指すとなると、ロードしか走っていない市民ランナーにとっては、それなりに辛く感じると思います。平均すれば9分30秒/kmで良いのにです。なぜ辛いかというと、コースがかなり特徴的だからです。

 コースは「富士吉田市役所」をスタートして、まずは3㎞地点の「富士浅間神社」(スタートからの標高差+130m)の給水を目指します。次の給水は7.2㎞地点の「中ノ茶屋」(同+340m)です。ここまではロードです。

 その次の給水が10.8㎞地点の「馬返し」(同+680m)ですが、中ノ茶屋以降、舗装が悪くなり、ひび割れたアスファルトの上を走ることになります。接地点を選ぶようにして走る必要があります。また、馬返しに近づくにつれて傾斜が大きくなっていきます。

馬返し(試走時)

 そして、馬返し以降は登山道です。丸太の階段や岩や土の斜面が続きます。12.7㎞地点の「三合目」(同+1000m)に最後の給水ポイントがあり、15㎞の「五合目」(同+1460m)がゴールです。スタートからの距離と標高差を比べると、どんどん傾斜が大きくなっているのが分かります。

 ということで、なぜ辛いのかというと、ひたすら上り坂を走らないといけないのと、コースの約半分が登山道だからです。

 ロードなら「あと〇km」と言われてどれくらいでゴールできるか大体分かると思いますが、「登山道をあと〇km」と言われても、路面や傾斜などの条件が違うと、どれくらいかかるか分からないと思います。

 市民ランナーにとっては、「制限時間内に登山道を上らないといけない」という未知の体験が、距離以上にレースを辛く感じさせるのです。

4 目標設定

 とりあえず試走では2時間10分くらいで五合目まで行けたので、熊が出ない限りは2時間20分でゴールできるだろうと思っていました。山頂コースは、前年のタイム良い順に出走時に前のグループから走れるということで、五合目コースの目標を1時間50分にしました。馬返しまで55分、登山道55分で1時間50分の計算です。

 試走では1㎏くらいの荷物を背負っていて、シューズもヴェイパーフライ2で登山道が安定しなかったので、ギアが変わればもっと楽に走れるだろうと思って、この目標設定にしました。

やめよう弾丸登山(試走時)

5 レース前日~当日朝

 2024年の富士登山競走は前日受付しかありませんので、前日に富士吉田市に入ります。中央道を走る高速バスがあるので、それで行きます。序盤渋滞していましたが、2時間くらいで着きました。

 富士山駅から受付会場の富士北麓公園へシャトルバスで向かいます。スタート時に預けた荷物もここに運ばれるので、ゴール後は五合目から出るシャトルバスでここへ向かいます。大会のホームページをよく読まないと、受付やゴール後の動きが分かりにくいので、要注意です。

遠目から見て山頂まで登るのはヤバいなと思います

 前日にも富士山五合目までバスで行きました。あんまり意味がないと思いますが、高地慣れが目的です。16時くらいだったので寒かったです、ゴール後に着るための薄手のダウンも持ってきていました。

 夕飯はホテルの近くのファミレスで済ませました。ファミレスは量の調整が簡単にできるのでカーボローディングにピッタリですね。

うなぎ2枚にご飯大盛り

 ホテルの朝食が6時30分から利用できるのですが、7時20分ホテル発のシャトルバスに乗るために、スーパーで朝食を購入することにしました。ホテルのバスタブにお湯を張り、入浴剤を入れて浸かります。寝る前にバナナと飲むヨーグルトを食します。

 当日は5時45分に起床するつもりで、ストレッチを終えて21時30分には就寝しました。レース前日あるあるですが、深夜2時30分くらいに目が覚めてしまい、その後1時間くらいは眠ることができませんでした。

 予定どおり5時45分に起きて、朝食です。パックご飯、カリカリ梅、バナナ、プロテインを食します。このほか移動中にスポドリ500m、エナジードリンク400m、エナジーゼリー200kCalを摂取します。補給食としてエナジージェルを2本と塩タブレットを4個携行しました。

ホテルの電子レンジが使えると便利

 朝食後はキネシオテープでテーピングです。路面がフラットでないので、捻挫防止のために足首に、靴擦れ防止のためにかかと・母指球に貼りました。フルマラソンと同様に、ベビーワセリンを足の指と肩甲骨周りに塗ります。

 ギアは、上下がNIKEのエアロスイフト、キャップ、サングラス、CXWのレッグスリーブを装着しました。シューズはNIKEのズームフライ5にしました。試走で履いたヴェイパーフライ2は、クッションが柔らかすぎて登山道には向かないということで除外し、ペガサス41と悩みましたが、カーボンプレート内蔵でよりスピードの出やすいズームフライ5にしました。

オリンピックも始まるのでUSAユニホームで

 ロビーでNR多摩の皆さんに挨拶をして、スタート会場にシャトルバスで向かいます。五合目の着替え用の荷物と、その他の荷物に分けて、大会本部に預けます。ウォームアップを済ませて、9時のスタートを待ちますが、天気が良いと気温も高いので、日陰にいた方が良いです。今回はホテルでトイレをしっかり済ませたので、スタート会場では余裕を持ってトイレに行きました。

 8時35分から五合目コースの開会式が始まります。スタート前待機場所に並ぶといよいよ日影がないので、キャップは必須です。MCが盛り上げ上手で、ランナーの士気も高まります。いよいよ9時にスタートです。

富士吉田市役所の壁画はたまに変わるらしいです

6 レース展開(馬返しまで)

 私は前から4番目のIブロックからスタートしました。スタートゲートを通るまで1分くらいかかりましたが、グロスタイムしか計測されないので、関係ありません。目標1時間50分、死んでも2時間20分を目指します。

 約11㎞地点の馬返しまで55分で行きたいので、平均5分/kmで刻むことが目標です。中ノ茶屋からの約3.5㎞が悪路となることを考えると、序盤は4分30秒/kmで走りたいと考えていました。

 後ろのブロックからスタートなので、最初の1㎞はスピードに乗ることができませんでしたが、3㎞地点の富士浅間神社までは4分30秒/kmで刻むことができました。

 しかし、その後中ノ茶屋にたどり着くまでに5分/kmを下回るペースまで落ちてしまいます。単純に力不足ですが、気温と湿度が高かったのと、スタート後に前に出るために蛇行したりスピードの上げ下げがあったというのも一因かなと思います。

 中ノ茶屋から馬返しまでの間に、3回歩いてしまいました。30秒くらい息を整えてまた走り出すということを繰り返していましたが、周りのランナーも急勾配でスピードが出せないので、割とすぐに追いつけたのですが、これの良し悪しは専門家に教えていただきたいですね。

 ということで、馬返しを1時間29秒で通過します。目標より5分遅いのですが、とりあえず五合目を目指します。

ずっと坂道なので、それに比例するようにラップが遅くなります

7 レース展開(五合目まで)

 馬返しからは登山道です。試走に連れてきてくれた方には、「平坦な個所は走るんだよ」と教えてもらったので、基本的には歩くものだと考えていました。

 ところが、私より馬返しの通過が遅かったランナーの皆さんは、登山道をガシガシ走ってきます。「なんでこの人たちは丸太や岩の上を走れるんだ?」と不思議に思いながら、どんどん抜かされていきます。順位が分からないので何とも言えませんが、馬返しから五合目までに100人に抜かれて、10人を抜いたくらいの感覚でした。

 疑問は解決しないままでしたが、五合目を目指します。馬返しまでで脚を使ってしまったのか、平坦な個所も走ることができません。ちょっとでも走るとふくらはぎを攣りそうになっていました。

 そして恐れていたとおり、三合目の給水ポイントと五合目の真ん中くらいの13.7㎞地点で右脚のふくらはぎを攣ってしまいました。

 マラソンで脚を攣ってしまったときは、スピードを落としながら走ることができ、給水ポイントでスポドリを飲んだら回復しましたが、片足にかかる負担が大きい山登りではそんなことがもできません。

 全く動けないので、登山道の端に座ります。「終わった」と思いながら回復を待っている時にも、どんどん他のランナーに抜かされていきますが、皆さん「頑張れ!」「あと少しですよ!」と声をかけてくれました。ロードではこういう経験はなかったので、ピンチでしたが嬉しい気持ちになりました。携行していた最後の塩タブレットを舐めたら痙攣も治まったので、一歩ずつ進み始めました。

馬返し後、14km手前で2分くらい座り込んでいました

 そして、五合目のゴールが近づいてきます。私と同じように座り込んでいるランナーも出てくるので、声を掛けます。1時間50分には全然及びませんが、2時間切りは見えてきましたが。ただ、コースは把握しきれていないのであとどれくらいの距離なのか分かりません。応援の方の「あと300m!」を信じて出し切りました。最後だけ走れました。

 ゴールタイムは、グロスで1時間58分46秒。2時間20分を切れたので、来年の山頂コースへの挑戦権を獲得しました。

無事に山頂コースへの挑戦権をゲット

8 レース後

 レース後は、五合目でNR多摩の皆さんと合流し、荷物を受け取ってシャトルバス乗り場へ行きます。観光客の薄着での弾丸登山が問題視されていますが、我々も大概です。

 五合目のシャトルバス乗り場は、国内外の観光客・登山客で溢れかえっていました。簡単に着替えてシャトルバスに乗り、富士北麓公園へ向かいます。

富士山五合目は山梨の原宿

 富士北麓公園では前日から飲食やサポートの出店があります。受付時に出店で使える100円のチケットを7枚もらったので、ランチに使います。こういうのは色々なお店を使ってもらうために、1店舗あたり1枚までという制限があるのかと思ったら、そんなことはなく一気に使うことができました。すべてのお店がそういう運営だったか分かりませんが、チケットは使うべきです。

800円のタコライスがチケットのおかげで100円で買えました

 レース直後という最高のシチュエーションでビールを飲んだ後は、シャトルバスで富士山駅に行き、帰りは富士山駅から電車で帰りました。電車でも2時間半くらいで最寄り駅に着くことができたので、富士山は意外と近いんだなと感じました。

9 レース雑感

 市民ランナーのグランドスラム達成のため、山頂コースの挑戦権は絶対に必要だったので、まずはそれが叶って良かったです。山頂コースは4時間30分が制限時間ですが、「五合目コースの時間×2+10分が目安」と言われているので、条件が整えば山頂コースも完走できるのではないかと考えています。

 ただ、今回のように五合目に到達する前に脚を攣ってしまうと、複合的に身体に異変が生じて完走できない可能性が高いので、脚を攣らない走り方を研究したいと思います。シューズも工夫できそうです。塩タブレットは給水でも配っていましたが、来年もあるとは限らないので多めに携行しようと思います。

 また、馬返し以降に抜かれていった人たちは、どうして登山道を走ることができたのかずっと疑問でしたが、帰りの電車中で「あの人たち多分トレイルランナーだわ」とようやく気づきました。

 私は市民ランナーのグランドスラム達成のために富士登山競走に挑戦しているので、ロードのことしか考えていなかったのですが、富士登山競走には多くのトレイルランナーも挑戦しているんだなと気づきました。脚を攣って座り込んでいた時にランナーに声をかけてもらうのは珍しいなと思いましたが、トレイルランナーのマナーと聞いたことがあるので、合点がいきます。

 富士登山競走は、市民ランナーもトレイルランナーも挑戦するレースなんだなと感じました。

 また、世界遺産・富士山を走っても許されるという大会で、富士吉田市の皆さんのみならず、富士山を愛するすべての人に支えられて成り立っているんだなと感じました。富士登山競走がずっと続くよう、登山のマナーや自然環境を守らなくてはいけないと感じました。

やめよう薄着で弾丸登山(おまいう)

10 おわりに

 フルマラソンサブ3、100㎞ウルトラマラソンサブ10レベルの市民ランナーが、トレイル未経験で富士登山競走に挑戦すると、トレイルランナー(であろう人たち)に馬返し以降ガシガシ抜かれるという結果になりました。

 富士登山競走は市民ランナーもトレイルランナーも挑戦するレースであると感じた中で、私はあえてロードの練習しかせずに山頂コースに挑戦したいと思います。

 市民ランナーとトレイルランナーの異種格闘技戦みたいで、ワクワクするからです。ロード代表として山頂コースに挑みます。ただし試走は行きます。行った方が絶対に良いからです

 今の実力だと山頂コースを完走できるか分かりませんが、秋冬のマラソンシーズンでサブエガ達成に向けてトレーニングをするので、今よりもロードはレベルアップすると思います。

 来年の同時期に、山頂コースを完走し、市民ランナーのグランドスラム達成を報告できるよう頑張ります。

 それでは、次回もよろしくお願いします。

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