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人格適応論《性格6分類説》エリック・バーン【知的雑学トリビア・豆知識】

性格とは

性格とは、人の行動や考え方を特徴づける、比較的安定した態度と定義する。英語の「キャラクター」(character)の語源は、印章を彫る道具を意味するギリシャ語の「カラクテール」(kharakter)であり、そこから「特徴的な印」という意味が生じた。
性格には遺伝が影響することが知られているが、子供時代の体験とそれに対する適応が性格を決定する重要な要因となっている。

心理学の進展

20世紀初頭の心理学では、主に心の病を抱えた人々の研究に焦点を当てていた。しかし、その後の心理学は、心の健康な人々や子供から大人への発達、人類の心の発達の歴史を積極的に研究するようになった。
人の性格も、かつては心の病との関係で研究されることが多かったが、最近では性格の長所と短所の両方が考察され、性格と心の発達の関係が深く理解されるようになった。

交流分析とPACモデル

カナダのエリック・バーンは、20世紀中ごろに「交流分析」という心理学の分野を確立した。バーンの理論によれば、人の心の状態には、親の行動パターンを無意識に模倣している状態(Parent)、成人としての経験と知識を生かしている状態(Adult)、子供のころの振る舞いを再現している状態(Child)がある。このPACモデルは、人の性格の特徴やコミュニケーションの性質を説明するものであり、これが発展して6つの「人格適応型」が提唱された。

人格適応型の6分類

「人格適応型」とは、人の性格を6つに分類する方法である。すべての人がこの6種類に単純に分類されるわけではないが、多くの人が1つまたは2つの特徴の組み合わせによって理解できる。
この6つの性格は、子供時代の適応によって形成される。子供は無力な存在であり、生き延びるために周囲の大人と良い関係を保とうとする。そのために行う決断が、成人後の行動に影響を与え、その人の性格を決定する要因となる。

自己理解と他者理解

この6つの分類は、理解が進むにつれて、自分自身や他人を深く理解するために役立つ。これらの特徴は、普段は隠されていることが多いが、大きなストレスに直面したときに特にはっきりと表れる。
自分を理解することで、特に子供の頃に形成された望ましくない行動パターンに気づき、それを変える方法を見つけることができる(ただし、自分の手に負えない場合は、専門家の助けを借りるべきである)。

性格の6分類は、個人の行動や思考のパターンを理解するための有用な手段だ。この分類を通じて、自己理解や他者理解を深め、より良い人間関係を築くことができるだろう。子供時代の体験と適応が、どのように性格形成に影響を与えるかを理解することは、私たちが自分自身を知り、成長するための鍵となる。


1.創造的夢想家/Creative Dreamer

子供のころ、親が自信を失いがちだったため、何も求めないという決断をした人たち。大人になっても他人に頼らず、空想で欲求を満たす傾向がある。哲学者や芸術家になりやすいが、引きこもりがちで現実逃避しやすい面もある。

2.才気ある懐疑者/Ingenious Skeptic

何度も不当だと感じる仕打ちを受けた子供が育つと、過剰に用心深くなり、他人の意図を疑うようになる。数学や法律の専門家に向いているが、人を非難しやすく、自分にも厳しい。頑固で、自分の考えがすべて正しいと思いがち。

3.魅力的操作者/Charming Manipulator

愛情や欲しいものを競争相手に奪われたと感じる環境で育った子供。誰もあてにせず、他人を操ることで生き延びようとする。魅力的で商売やプロジェクト推進に長けるが、一つのことに専念できず、誠実さを欠くことがある。

4.おどけた反抗者/Playful Rebel

自主性を認めない親に育てられた子供が反抗し、親が批判する悪循環に陥る。大人になっても人生を戦いと見なし、ものごとに白黒をつけたがる。鑑定家や探偵に向いているが、他人の指示に従わず、物事を複雑にしてしまうことがある。

5.責任感ある仕事中毒者/Responsible Workaholic

小さいころから親の望むことを強く求められ、自分の欲求を諦めた子供。大人になっても責任を果たすことを優先する。良心的で信頼できるが、権限を委譲できず、細かい指示を出しすぎる。周囲からは不機嫌で退屈していると見られる。

6.熱狂的過剰反応者/Overenthusiastic Reactor

愛らしさや面白さばかりに関心を示され、考えることや成果を評価されなかった子供。ポジティブな感情をエスカレートさせ、負の感情を隠す。社交的で広報や宣伝に向いているが、情緒不安定で自己中心的。批判に弱く、大きな混乱をきたすことがある。

[出典:バラ十字会AMORC]


参考文献

「熱狂的過剰反応者」「責任感ある仕事中毒者」「才気ある懐疑者」「創造的夢想家」「おどけた反抗者」「魅力的操作者」といったユニークな名称の六つの適応タイプにクライエントを当てはめることで、性格の特徴や行動パターンを短時間で的確に判別できる画期的な方法を、交流分析の初学者にも分かるようにやさしく紹介した。心理療法、カウンセリングのみならず、日常の人間関係でも広く活用できる、効果的な理論として期待が高まっている。原書名: Personality Adaptation: A New Guide to Human Understanding in Psychotherapy and Counselling(人間理解における新たな指針:心理療法とカウンセリングにおけるパーソナリティ適応)
【目次】
パート1 導入
1 六つの人格適応タイプの紹介
パート2 人格適応タイプのモデル
2 発達的見地
3 人格の構造
4 各人格適応タイプの変化するための課題
5 各適応タイプの詳細とまとめ
6 適応タイプの組み合わせ
7 人格適応タイプとDSM-IV-TR分類の関連
パート3 六つの人格適応タイプモデルの診断
8 ドライバー行動:診断の鍵
9 適応タイプの診断に関する他の手がかり
パート4 ラポールの構築とその維持
10 ドライバー行動からの誘惑を避けるには
11 コミュニケーションの五つのモード
12 ウエア理論を使ったラポールの構築
13 人格適応タイプ間の相互作用
パート5 個人を変容へと導くために
14 各人格適応タイプを用いたセラピー
15 プロセス脚本に対決する
16 心理療法におけるプロセス・モデルの使用とその概観
パート6 人格適応モデルをさらに応用する
17 六つの人格適応タイプを用いた診断と治療計画
18 境界性人格障害と自己愛性人格障害
パート7 臨床における人格の変容――治療の実際
19 演技型のクライエント――自分のパワーを取り戻す
20 強迫観念型のクライエント――「存在しているだけでいい」ことを学ぶ
21 パラノイド型のクライエント――「世の中は安全」と感じる
22 スキゾイド型のクライエント――自分の感情と欲求を認める
23 受動攻撃型のクライエント――葛藤から自由になる
24 反社会型のクライエント――本物の自分になる
25 複合した適応タイプを持つクライエント
付録
A 今までの性格分類理論と人格適応タイプとの関連性
B 人格適応タイプを測定する
C ヴァン・ジョインズの人格適応タイプ質問用紙


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