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AO・推薦入試の指導の極意とは? :後編【“直観力”を鍛える】

前編【その選択は“逃げ”なのか?】
中編【話すより“聴く”】

これまでの日本の教育スタイルは、知識の体系を伝えるために、先生が生徒に対して「話す」指導が主流でした。

ところが、AO・推薦入試における指導は、先生が生徒の話を「聴く」ことで、本人の中にある価値観や、求めている将来像を引き出す指導が最も重要になります。

「話し上手は聞き上手」という諺もありますが、実は、AO・推薦入試に限定することなく、「聴く力」は、すべてのコミュニケーションにおける土台なのでしょう。

もちろん、これは、表面的な情報を聞き取る行為ではありません。

生徒一人ひとりの、心からの関心望んでいる理想について、深めていく必要があります。
つまり、過去の経験やその時の喜怒哀楽など、そもそもの信頼関係が結べなければ引き出せないような、非常にデリケートでセンシティブな情報を扱うことになるのです。

そういう意味で、指導者と生徒の間に、いかに「信頼関係」が築けているかということが、生徒本人の「見えない可能性」を引き出す大元であり、結果として、合格に大きく寄与することは、私自身のAO・推薦指導経験から、非常に痛感しています。

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実は、AO・推薦指導の現場では、指導者側の指導経験から「合格への成功パターン」をつくり上げ、相手の話を聴くよりも「合格のための雛形」のようなものを「教え込む」ことに注力する指導者もいます。

もちろん、指導方法にこれが絶対ということはありませんが、私は、「合格のためのテンプレート指導のような発想で生徒と向き合っても、一人ひとりの固有性を引き出すことは難しいのでは?」と、常々疑問でした。

だたし、非常に多感な10代後半の中高生一人ひとりと向き合い、信頼関係を結び、本音の話を引き出す指導は、多大なエネルギーを要します。
正直なところ、「自分とは何者であるか」について、徹底的に深めながら「将来像」「研究テーマ」を発見していく、AO・推薦入試におけるほぼ職人技のような指導に、限界を感じることが多々ありました。

とはいえ、属人指導に陥ってしまうAO・推薦指導を、画一化とは違う意味で、「標準化」することはできないものか?

そうした問題意識から活用するようになったメソッドが、実は、日本アクティブラーニング協会が開発する「円盤型教材」です。(参考:SDGsカリキュラム

これは、もともとAO・推薦入試のために開発されたカリキュラムではありません。
いわゆるアクティブラーニング用のメソッドとして、自分自身の視点を磨き、実社会の課題について「自分ごと」として捉える素地をつくり、「非認知能力」を鍛えることに主眼が置かれています。

円盤型教材には、多岐にわたる領域から複合的に作問されている、非常にユニークで「正解のない問い」があります。その問いに、わずか5分という制限時間の中で解答するというプログラムの構成です。

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解答形式は、は80〜160字という記述式があったり、絵や漫画を描いたり、をつくったり・・・。一般的な「問題」と「解答」という概念からは想像できないようなアウトプットが毎回のトレーニングで求められます。
しかも、制限時間は5分と限られていますから、ネットや本で調べることも、じっくりと解答を作り込むこともできません。

まさに、自分の中にある全てを総動員して、ほとんど無我夢中で表現することになります。
最初は慣れない様子の生徒も、こうしたトレーニングを重ねていくと、明らかに解答から、その生徒の個性やあり方のようなものが滲み出てくることがわかるようになるから不思議です。

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自分の中にある「直観」に、自らでアクセスしながら解答をアウトプットしている・・・そんな感覚です。

感じる方ではなく、観音様の“観”の字の方を用いた「直観力」という点が、実は、非常に重要です。

般若心経の冒頭は、“観自在” という言葉から始まりますが、「直観力」とはまさに、「自在に物事を観る力」です。

ある現象を一面で捉えるのではなく、自分の中にある深い洞察によって本質的に認識できれば、自分について、あるいは自分の人生について、本当の意味での善い選択や決断に至れるようになるのではと思います。

そんな願いから開発された円盤型教材ですが、これはまさにAO・推薦指導にも通じる力であること。しかも、熟練の指導者がいないと対策が進まないという属人的な状況から、受験生の主体的なエネルギーそのものを動力源にした、まさに自律的で創発型の新しいAO・推薦指導が実現できるのではないか・・・?!

そんな可能性と見通しから、円盤型教材を活用した結果、明らかな手応えを得られ、今の「AO・推薦入試オンラインサロン」(概要HP)に繋がっています。

つまり、AO・推薦入試の指導の柱は、添削による加筆修正を促すことや、受かるための方法論を教えることではありません。

本来、本人が有しているであろう「自己教育力」を、高めるための環境をいかに設定するか。

九分九厘、そこに懸かっているのではないかと、私は思っています。

次は「AO・推薦入試 “合格者”と“不合格者” それぞれの行く末」です。
お楽しみに。


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