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AO・推薦入試の指導の極意とは? :中編【話すより“聴く”】

前編【その選択は“逃げ”なのか?】

意外と知られていない事実ですが、現時点で既に私立大学入学者の52.4%はAO・推薦入試で合格しています。
半数以上の定員が、AO・推薦入試によって、すでに年内に埋まっているという現状があるのです。

国立大学のAO・推薦比率も、年々増加傾向にあり、定員の3割までを目指す方針です。

さらに、さまざまな社会情勢の変化から、そうした受験方式に対する受験生自身の関心が高まっていることから、ここ最近、AO・推薦入試の「指導方法」や「カリキュラムづくり」について、教育関係者の方からご相談をいただく機会が、とても増えています。

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一方で、私が前職にて、ある塾でAO・推薦指導にあたっていた時代、他の教育関係者の方から、「本人の主体性が求められるのがAO・推薦入試なのだから、塾・予備校が指導するなんて邪道ではないのか?」という指摘をいただくことが頻繁にありました。

この批判は、たしかにもっともです。

受験生の「人物像や将来性」が選考の最大のポイントとなる入試がAO・推薦ですが、指導することによって、とにかく合格することだけを目的にした、自分をよく見せるための「過剰な作り込み」に陥ってしまえば、それはもはや教育ではありません。

ただ、だからといって、「何も指導しない」ことが教育上のベストな選択ということではないはずです。

では、教科書などで体系化された「知識や概念を教える」こととは、全く異なるAO・推薦指導の本質はどこにあるのでしょうか?

私は、とてもシンプルなことだと思っています。

それは、ただひたすら、「相手の話を聴く」こと。

えっ?それだけ?と言われそうですが、私は自身の経験から、これが一番重要だと確信しています。

通常の教科学習においては、教室の中で最も発話量の多い存在は、先生だと思います。
ですが、AO・推薦指導においては、教場において発信する量が最も多い存在は、生徒です。

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生徒が、自分についてアウトプットし表現することで、自分の中にある価値観や理想について、「自らで気づく」ことがとても重要なプロセスだからです。

わかりやすい板書や説明により生徒の関心を高める優れた「教え方」も、もちろん大切ですが、生徒の内側にあるものを引き出す「聴き方」が、AO・推薦指導においては一番の肝です。

ところが、この「聴く指導」は、シンプルでありながら、実際は本当に難しいのです。

以前の記事でも少し触れましたが、このような指導は「メンタリング」と呼ばれ、日本アクティブラーニング協会では、その実践について、教員研修や企業研修を行なっています。(もちろんこうした研修は、AO・推薦指導に限定される指導メソッドではありません。)

実際の研修では、様々なステップやプログラムが存在しますが、AO・推薦指導における「聴く指導」について、あえて言語化すると、次のようなイメージです。

・相手に考えさせる
・相手の専門知識を引き出す
・相手の経験を引き出す手助けをする
・言葉の意味を質問する
・解決法を相手に求める
・相手の賢明さを示す
・総合的に考え、全貌を見る

一般的な教育は、「答え」があり、それを知っているのは、いつも「教える側」です。「正解が何であるか」について、あるいは「正解にたどり着くための道筋」について、教師から生徒に教える指導が、ごくごく一般的な教育のイメージでしょう。

ですが、人物をあぶり出していくことが求められるAO・推薦指導においては、「相手の中に答えがある」ことが大前提。正解を教える指導とは、そもそも概念が真逆であるところに、その難しさがあります。

何よりも、指導する側が求められる最も重要な点は、生徒の中に答えがあることを信じることなのだと思います。

(後編につづく)

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