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言葉はどう思いつくか

「TENTさんは、言葉はどう思いつくんですか?

前回の「不安」に続き



ウエダさんからそんな質問をいただきました。

ウエダさん


1.グサっと刺さる一文


ウエダさん
僕はTENTさんの製品が好きでたくさん使ってるんですけど、製品だけでなく言葉もすごいなと思ってまして。


ハルタ
言葉…たとえばどんなですか?


ウエダさん
たとえば、
「あなたの暮らしにスタンバイ」
STAN. by zojirushi
「一本の線からはじまる新しい暮らし」
DRAW A LINE
「つくるとたべるを一つにする」
FRYING PAN JIU
とかとか。

TENTさんのプロダクトって、いつもああいうグサっと刺さる一文がついてるんですよ。あれも自分たちで考えてるんですか?




アオキ
そうですね。もちろんクライアントさんや一緒にやってる仲間と話し合いながら、みんなで決めてはいますけど、とくに言葉の専門家に依頼するとかは、やってないですね。


ウエダさん
ああいう言葉って、どうやって出てくるんですか?

アオキ
うーん。「今から言葉を考えるぞ!」ってすごく悩んでやってる感じではなくて。

Webページを作らなきゃとか、カタログ作らなきゃとか、申請書に記入しなきゃとか、必要に迫られたタイミングで、わりと時間をかけずにサクッと書いちゃっている気がします。

TENTアオキ



ウエダさん
なるほど。製品のアイデアを考えたりカタチを考えたりしてるうちに、自然と言葉もできている感じなんですかね。


アオキ
うーん。
ああ、そうか。
そういえば、5、6年前くらいに変えたことが1つあって。もしかすると、それが今回の言葉の話に繋がっているかもしれないです。


ウエダさん
おお、それは聞きたい。何を変えたんですか?


2.あなたの名前はオーマ

アオキ
それまでは、たとえばデザインの案が5つあったとしたら、それぞれの案をA案、B案、C案…みたいに呼んでたし、書類にもそう書いてたんです。

でもそうすると、みんなで話すときに呼び間違えちゃったり、A案がオススメみたいに見えちゃったりするからやりにくいなって思って。

ある段階から、それぞれの案に仮の名前をつけることにしたんです。


ウエダさん
仮の名前ですか、たとえばどんな?


アオキ
そんなに大した話じゃなくて。丸っこい形には「マル案」。四角っぽい形には「シカク案」みたいな。一言でどの案なのかわかるような言葉です。


ハルタ
たとえば象印STAN.の時で言うなら、採用されたあの案は「うつわ案」って呼んでました。

そうすると「"うつわ案"って呼ぶなら、この部分はこう変えるべきだよね」という話が自然に出てくるようになって。

TENTハルタ


ウエダ
自然に。


アオキ
うーんと。
漫画版のナウシカにですね、巨神兵が出てくるんですけども。

ウエダさん
ナウシカですか!?唐突ですね。


アオキ
すみません。たとえ話なんですけど。
巨神兵って、最初はわりと意識を持たない、ついてくるだけの存在というか、赤ちゃんみたいな存在なんですね。

でも、あるシーンでナウシカが名前をつけてあげるんです。
「あなたの名前はオーマ」って。

そうしたら、巨神兵が急に饒舌になって
「風の谷のナウシカの子、オーマ!!」「オーマは光輪を帯びし調停者にて戦士なり」って。急に知性を持ち始めて、自走しだすんですね。


ハルタ
わりと重要なシーンですから、ぜひ読んで欲しいです。


ウエダさん
は、はい。


アオキ
アイデアに名前をつけると、それに似たことが起きるんですよ。「◯◯さんが考えたアイデア」ではなくなって。そのアイデア自体がどう研ぎ澄まされたいかを語り出す感じ。

そうするとデザイン作業する上ですごく楽になるんですよね。悩む時間が短くなるというか。


ツジさん
横からすみません、ウエダと共にTENTのお手伝いしているツジです。

ツジさん

ツジさん
なんか話を聞いてて、そこにTENTの真髄があるように思いました。

アオキ
真髄!?

3.言葉がつくと魂が宿りはじめる

ツジさん
若いデザイナー同士でわりと出る「大量の案を出すべきか、一案にしぼるべきか」みたいな話題があって。

僕も実際、前の職場とかいろんなデザイン事務所さんでお手伝いする中で「とにかくいっぱい案を出して!」って言われてきたんです。でもそのやり方ってわりと辛いし、出てきた案にも魂がないというか。


アオキ
闇雲に数を出そうとして出した案って、見たら分かっちゃいますもんね。


ツジさん
そうなんです。でも、出たアイデア1つ1つに一言で伝わる名前をつけると、連想ゲームみたいに何をしたら良いかがどんどん思いついて、そうしているうちに1つ1つに魂が宿っていく感じがあります。


ハルタ
たしかにね。



ウエダさん
アイデア出しの時の言葉についてこれまで聞いてきたんですけど、よく思い出してみると、TENTさんってそれだけじゃなく、ずっと言葉のことに時間かけてますよね。

たとえば、プレゼンテーションしたり、Webページ作ったり、Storesに商品説明を書いたり、世の中に製品が出るまでの段階で何回も。


アオキ
たしかに、言葉に時間をかけている自覚はなかったんだけど
アイデア → 言葉 → カタチ → 言葉 → 構造 → 言葉
みたいに回数としては何度も言葉のフィルターを通してるかもしれない。


ウエダさん
そうすることで最初に言ってたみたいに「必要なタイミングでサクッと」言葉が出てくるんですねー。ふむふむ。


4.武装を解除したい

ウエダさん
ところで、ここんところお手伝いしてて、TENTさんは普段の会話も独特だなーと思ってます。たとえば「スケールしない」とかそういうカタカナ言葉が全く出てこないじゃないですか。


ハルタ
そうだなあ、なんでだろう。デザイナーの人とか、マーケッターの人とかが使う専門用語。単純に、わかんないんですよね、僕は。

あとは、場を和ませたいというか、同じ部屋で話してる人をできるだけ笑わせたい、ニコッとしてもらいたいじゃないですか。だから、ちょっと面白い言葉を使いたいなあって気持ちはありますね。




アオキ
たしかに、できるだけ緊張はほぐしたいですね。専門用語ばっかりだとカチコチになっちゃう。


ツジさん
かわりに独特の言葉が普段から飛び交ってますよね。たとえば「心の座りが良い形」とか「やだみをとる」とかは、TENTさんで初めて聞きましたし。


ハルタ
あー、たしかに良く言ってるね。


アオキ
あまりにも普段から言ってて気づかなかったけど、TENT独自だったのか。


ウエダさん
TENTさんはプレゼンテーションも独特ですよね。短くて、普段使うような言葉で作られてて。

僕が学生の時は、プレゼンテーションの時なんかには理論武装してたんですよ。何を聞かれても言い返せるように準備しとこう!とか。


ハルタ
わかります。アイデアを守る城壁をすごく頑丈にしようとしちゃうんですよねでもそれって違う気がしてて。

僕たちは、城壁を頑丈にする時間があるならアイデア自体を強くしたいんですよね。


アオキ
僕も大きな会社に勤めてた時は、鎧を着たり武器を揃えたり、武装してから出勤してるようなイメージありました。

そういうのに疲れちゃったからこそ、TENTではいつでも武装しないでモノづくりしたいと思ってますね。



ツジさん
その武装しないっていうのが、普通の暮らしと繋がってるってことなのかなと。いいなあって思います。


ウエダさん
いやー、今回も発見があって面白かったです、ありがとうございました!


アオキ
いえいえ。またなんかあれば質問待ってます。



最後にちょっとだけイベント告知


そんなウエダさんとツジさんが
5月3日(火)〜5日(木)の3日間
TENTのTEMPOにて、自分たちの製品展示を行います!

当日は私アオキは現場にいませんが、ウエダさんとツジさんは3日間ずっといる予定なので、ぜひ見にきてください。

さらに

ということで、軽く交流できる会をやるみたいなので、この記事を読んで、ウエダさんツジさん、あるいはモノづくりに興味が湧いた方はお気軽にご参加くださーい!





もし聞いてみたい質問がありましたら、コメント欄からどうぞ。

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