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静かに、確かに、伝える。 柏原柚葉さん×TENT

まずはこちらのムービーをご覧ください。



食器洗いは、お手入れだ。
TEILE

このTEILEのムービーは、前回のCHOPLATEのムービーと同じくDRAWING AND MANUALさんにお世話になりました。


1.タイミングを見ないと


TENTアオキ
ということで、監督/撮影:柏原柚葉さん、監修:林響太朗さんという形で進んだTEILEのムービー撮影の裏話などをしていければと思います。

今日はよろしくお願いします。

左 林響太朗さん 右 柏原柚葉さん

柏原さん
よろしくお願いします。


林さん
よろしくお願いします


TENTアオキ
このTEILEのムービーについても、僕は初期提案資料を見た段階で「バッチリです、これでお願いします」とお伝えした気がします。


柏原さん
ありがたかったです。でも実は社内では事前に林さんにチェックしてもらってて「このアングルで本当に撮れるの?」とか何度もやり直しをしてました。


TENTアオキ
なるほど。この最初の提案の時点で、製品にグっと寄ってモノの良さを捉えようって意図が明確にあって。もう「なんでわかるんですか!?」って気持ちでした。

アオキ
普通に食器洗い用品のムービーって言うと、汚れたお皿を片付けてってなりそうなのに、寄りでプロダクトを撮る、その連続。

言葉にせずに「作業」と「手入れ」の違いが明示された気がしました。

TENTアオキ
それで撮影当日ですね。僕が現場入りした時点で準備は整っていて。プレビュー用のモニターからは、背景に光が映り込んでる美しい映像が見えて。

アオキ
「すげー!すげー!ありがとうございます!」って。まだ何も撮ってないのに叫んじゃいましたよ。


柏原さん
ありがとうございます。その時は私はとにかく良いアングルを探すのに必死になってました。


TENTアオキ
それで、2カットくらい撮影が進んだあたりだったかな。林さんが現場に到着されてモニターを見た瞬間に。

「うーん、どうしようかな。アオキさん、これタイミングちょっとゆっくりすぎませんか?」って。


林さん
え、なんか言ってましたっけ?

柏原さん
パッケージを開けるシーンだったんですけど、林さんから「もっと雑に開けるほうが良いんじゃないの」って指摘が入りましたね。


アオキ
そうそう!その一声で僕はハっとして。光とか構図はしっかり見ていたんですけど、「動画だからタイミングとか見ないと!」って慌てましたよ。

時間軸にアンテナが立ってなかったことに気づきました。林さんから「騙されちゃダメですよー!ちゃんと見なきゃ!」って言われて。


林さん
いや、光の美しさに騙されちゃうんですよね、撮影する側も綺麗にして騙しちゃうところあるんで。

林さん
手タレントの方も、製品をすごく丁寧に扱ってくれようとする方だったので、余計に違和感があって。

「こんなに丁寧で良いんだっけ?」って思ったのと、商品としても勢いがあったほうが格好良さそうだなって思った記憶があります。


アオキ
それを指摘されて、柏原さんはどう思ったんですか?


柏原さん
「あー、たしかにー!」って感じでした。

柏原さん
とりあえず光と画角を最優先にやってて、林さんに指摘されてからは動きの速さとか、丁寧にやりすぎないとかを意識できるようになりました。


アオキ
二次元しか見てなかったけど、そういえば三次元もあったわ!みたいな。


柏原さん
そこで見るべきところが定まった気がしました。


林さん
二人ともアンテナが立ってなかったのか!いやあ、よかったですね。



2.間違いという呼び水


柏原さん
今回、プロダクトがとても綺麗に作られているから、綺麗に撮らなきゃって気持ちがすごく強くて、最初から汗だくでした。

林さん
物の良さをどこまで出せるかっていうのはあるよね。


柏原さん
ちょっと角度が違うだけで、映像だから奥行きがあるというか、平面になりすぎないように。少しでも良い角度でと思いながら。

アオキ
とはいえ、朝一番の林さんからの指摘。あれでアンテナが立ってからは、なんか現場全体の緊張もほどけてスムーズに進んだ気がします。


林さん
俺も後半は何も言わなかった気がする。頑張ってーみたいな。


柏原さん
めっちゃ気を遣ってくれてましたよね、言わないようにって。


林さん
いや、アングルの好みってあるじゃないですか。すごく主観的な部分。そこに関しては、僕が演出という立場ではないので、任せるべきだと思ってました。

それでもたまに指摘してたのは、好みというよりは「普通に使う時にはそうしないだろう」という部分です。綺麗だけど不自然なのはよくないよっていう指摘。


アオキ
たしかに。「わかるけど、普通はそこには置かないんじゃない?」みたいな指摘をされてた気がします。

ハルタ
なんかその様子を遠巻きに見ながら、信頼関係があるチームなんだなーって思いました。柏原さんも林さんの指摘をそのまま鵜呑みにせず、時には無視もしたりして。


柏原さん
え、私、無視してたんだ。

ハルタ
いや、これが良いって時にはそれを貫いてる感じで。


林さん
大丈夫。軸がある上でだから「こうしたい!」ってのがあれば良いんですよ。

たまに、僕の伝え方が良くなくて軸を見失ってしまう人もいて。そういうときは「君がやっていることは違うと思う、こうだからこういう考えでやりたいんだけど、どう思う?」って話し合います。

そもそも僕がわかってない時もあって、先にやっててくれて「違うよ」って言うこともあるから、ひどい話ではあるんですけど。


アオキ
それわかります。いったん他の人にやってもらえるって、それが間違っていても助かるんですよね。

TENTではそれを「呼び水」って言ったりするんですけど、一個間違ったものがあるからこそ、見えてくるものってあって。

林さん
そう、めっちゃ助かるんですよね。「あ、これではないんだな」ってのがあるのは。


アオキ
そこからようやく方向性が見えてきて頭がクリアになるみたいな。だからダメ出しして凹まそうとしているんじゃなくて、ダメだと言うことがわかってよかった。ありがとう!という感じ。


林さん
そう。一方で、やってくれたことが意外とよくて「その考えもあるんだ」って時もあるし。


アオキ
チームでやる醍醐味。間違いも予想外も共有して次に進む良さってありますよね。



3.そりゃあ時間おすわ


アオキ
後半の製品集合カットを撮影していたあたり、柏原さんだいぶスイッチ入ってましたよね。林さんも「まだ撮るんだ…」って言っていたくらいで。


林さん
ゾーン入ってましたよね、いい感じでした。

柏原さん
いや、なんというか、この集合カットは大切で、最初にも最後にも絶対に使うから。時間を気にして取り逃したらやばいなって気持ちで、ここは逃せないなと。

林さん
普段は柏原は僕のサポートしてくれてて「なんで時間おすんですか、まじありえない」って言ってるんです。


柏原さん
いつもは「時間を考えてやればいいのに、時間ないのになんでそれも撮ろうと思うんですか!?」って思ってます。

でもあの日は「そりゃあ時間おすわ」って。

林さん
良い体験談。良い気づき。


アオキ
体験してみて、原因はわかったんですか。


柏原さん
自分でカメラを回していると時間感覚がなくなっちゃうんです。これ違うかも、撮り直す、そうしたらあっという間に時間が過ぎている。


アオキ
とくに集合カットのところはグラフィック作りみたいなところだから、モノの配置を細かくやりましたよね、あれやりだすと、並べてるだけで15分とか吹っ飛んでいく。

林さん
あそこはアオキさんも入って微調整してくれて、めちゃくちゃ助かりました。


4.時間軸にグリッドを引く

アオキ
今回のTEILEのムービーは、編集が終わった後にも、僕がわりと口を出しちゃった気がしてるんですけど、そのあたりはどうでしたか


柏原さん
私も絵コンテ通りに編集して「単調になっちゃってるかなあ、でもこういうのもありかもな」って出していたので、ハッキリと言ってもらえて助かりました。

アオキ
よかった。「チッ!」ってなってたら嫌だなあって思ってたので。


柏原さん
いや、ならないす!

とくに製品の文字を入れるっていうのはすごく助かりました。指摘だけじゃなく文字のデータもすぐに作成して送っていただけて。

私は文字1つ置くのにもめちゃくちゃ時間がかかったのに、一瞬で送ってもらえたのでビックリしましたよ。


アオキ
文字のレイアウトについては、ムービーのスクリーンショットにグリッドを引いてバババ!ってレイアウトしました。

アオキ
そこは林さんチームとフィーリングが合うところなんじゃないかって勝手に思ってるんですけど、グリッドで考えるのって、僕は好きなんですよね。

アオキ
グリッドと言えば、一つ大事な話を思い出したんですけど。オンラインでみんなで編集を見ていた時、最後のたたみかけるようにカットが切り替わる部分で

「何フレームとか1秒とか、自分なりの基準となる単位を決めて、それで全体を構成した方が良いよ」

って林さんが柏原さんに指摘していたんです。

アオキ
あの一言は僕の人生における衝撃で。

僕はグラフィックとかプロダクトでよくグリッドを使っていて。自宅を建てる時に、建築もグリッドで考えることができるって学んだんです。

それで今回の林さんの指摘は、時間軸にもグリッドが使えるってことなんだなって。

アオキ
平面や立体や空間と同じく、時間軸であっても自分の中の基準を決めて、その倍数や分割で構成する。そんな発想なかったんで、痺れました。


柏原さん
たしかに打ち合わせの時にも言ってましたね。


林さん
でもレイアウトも微妙にずらした方が良い時ってあるじゃないですか。その感覚もありますよ。

林さん
映像の時間でもばっちり1秒で切ってたらそれはそれでつまらない。一個だけ1.3秒のところがあると、そこだけ動きが見えてきたりとか。その調整は慣れですね。


アオキ
わかります。なんとなくずれているのと、基準があってわざとずらしているのとでは違う。何を立たせたいのかの意図があるかないかという話。


林さん
まさにそうですね。グリッドを作る段階で意思が定まってますよね。


5.削るのではなく研ぐ


林さん
実は柏原は今回のムービーが、初めての主担当のお仕事だったんですよ。


アオキ
ええ!熟練の極みみたいな渋い企画と映像ですよね。


林さん
渋いですよね。「いいぞ!」って。一本めでこれでくるか!って僕も思いました。

MA(音質やバランスを調整、音の最終仕上げを行うこと)もすごく良くできてて、匠な感じで。音響担当さんに、長文を何度も送ったらしいじゃん。


柏原さん
いや、二、三回だけですよ。

柏原さん
寄りと引きのときの音の印象をもっと変えたいとか、服の擦れる音を抑えて欲しいとか。


林さん
そうやって製品に触っている音を立てせたってことか、素晴らしいね。


アオキ
考えなしに削っても丸くなっちゃうだけなんだけど、残すところを明確にして削ると研ぎ澄まされていくんだっていう。

削るのと研ぐのとは違う」って、最近人から言われたんですけど。今回の作業工程にも当てはまるなあと思いました。


林さん
それめっちゃ良いですね。いやあ、柏原も勉強になったね。


柏原さん
本当にありがたい経験でした。


アオキ
いやいや、こちらこそ良いムービーを本当にありがとうございました。
ぜひまたご一緒しましょう!

音の細部にまでこだわったTEILEのムービー。
音量をONにして、大きな画面で、何度でも見ていただきたいです。

監督・撮影・編集 | 柏原柚葉(DRAWING AND MANUAL)
監修 | 林響太朗(DRAWING AND MANUAL)
撮影チーフ | 山村健(SWITCH)
照明 | 粂川葉(Eight Pictures inc.)
照明チーフ | 入尾明慶(Eight Pictures inc.)
ミキサー | 浅田将助(1991)
プロデューサー | 山岡元輝(東北新社)
プロダクションマネージャー | 清水利行(東北新社)
クリエイティブディレクター | 青木亮作(TENT)





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