見出し画像

掴む、削る、楽しむ。 林響太朗さん×TENT

まずはこちらをご覧ください。

CHOP

PLATE

CHOPLATE!

ということで、まな板になるお皿CHOPLATEのムービーが完成しました!

実はこのムービー、星野源さんのPVなどでお馴染みの林響太朗さんに制作いただきました!!

せっかくの機会なので、CHOPLATE動画制作の裏側などについて林さんと一緒にお話していきたいと思います。


1.コアを掴む力


TENTアオキ
昨年末にトークイベントで初めてお会いしてから約一年。いよいよお仕事をご一緒することができて、とても嬉しいです!

今日はよろしくお願いします。

TENT アオキ

林響太朗さん
よろしくお願いします。

DRAWING AND MANUAL 林 響太朗さん

TENTアオキ
今回のムービー、初回の絵コンテを提案いただいた時点で「もう完璧です。これでいきましょう!」って僕は即答したわけなんですけど、そもそもどうやってこのプランが始まったんでしたっけ?


林さん
たしか最初の打ち合わせでアオキさんとお話する中で
「CHOP」
「PLATE 」
「CHOPLATE!」
ってこのフレーズ良いよね。って盛り上がってた気がします。


アオキ

あ、そうか。たしかに僕から趣旨を説明する打ち合わせの時点で、その場ですぐに林さんから「手品みたいにポンポンと進む」ってイメージを話してもらえてました。


林さん
だから僕はそのイメージだけ柏原(かしはら)と熊谷(くまがい)に伝えて、二人に資料を作ってもらったんですよ。

左 DRAWING AND MANUAL 柏原さん
右 DRAWING AND MANUAL 熊谷さん


アオキ
へえー!たしかに資料を見て、きっと社内で楽しくアイデアを出し合ったんだろうなあとは思いました。


林さん
そうですね。どんな料理をどんなシチュエーションで、という部分については、本当に二人が出してくれて「日本酒かあ、まあそれもありじゃない?」みたいな感じで。

アオキ
この提案の時点で、僕としてはコアのところをガシっと掴んでもらえているって実感があったんですよ。


林さん
コアの部分っていうのは?

アオキ
普通にCHOPLATEの動画を考えると「ある朝起きて朝ごはんを作って」とか「ナイフでシューと切っていく」とか、あるいは「まな板になる」とか「電子レンジにも食洗機にも対応」などの説明を入れていきがちだと思うんです。

いただいた提案は、切っている瞬間すら省くという削ぎ落とした表現で。なのにそれが楽しさに昇華されるというのがすごいなと。


TENTハルタ

CHOPLATEはこれまでもWeb上でシンプルな俯瞰写真があって、一方でSNSではリアルな暮らしの中でテーブルに置かれているシーンとかが多かったと思うんです。

今回のムービーはそれらを無駄なく統合したところが流石だなと思いました。

TENT ハルタ

アオキ
そう、お皿を運ぶところも省いてるんですよね。そうやって徹底的に省くと気取った感じになりがちなんですけど、今回の省き方って楽しさになってるじゃないですか。そこがすごい。


林さん
もしかしたら名前がそうさせてくれるっていうのはあると思います。CHOPLATEっていう名前にその考え方が既に入っていて。

だからこそ最初の打ち合わせの時点で、CHOP、PLATE、CHOPLATE!って。やりたいことが明快に伝わる。

もしもっとキザな名前だったら、こうはならなかったと思います。

アオキ
なるほどー、ありがとうございます。嬉しいです。

ちなみに、ご提案いただいた企画書の中にはいわゆるコピーっぽい文字が書いてあるんですよね。この文字自体は「そうだな、その通りの商品だな」と思います。

アオキ
でも、もしこの文字列が動画に入っていたら、僕は「やっぱり違う」と言っていたと思うんです。


林さん
コピーがあるから入れとかなきゃって、よくある話ですよね。僕たちの資料内の文字はあくまで姿勢として書いているのであって、極論ですけど言葉がないのに伝わるっていうのが一番面白いと思ってます。

そしてやっぱりCHOPLATEっていう名前だから、名前が出てくるだけで伝わるという部分もあると思います。


アオキ
なるほどー。

CHOP
PLATE
CHOPLATE !



2.クリアになる指示


TENTアオキ
当日の朝、撮影現場に入らせていただいた時に一番びっくりしたのは人数の多さと機材のデカさでした。

林さん
いやいや、だいぶミニマルでやったつもりだったんですけどね。言われてみれば、照明部は四人いましたもんね。


アオキ
その照明の方々を含めて、僕は衝撃を受けましたよ。

大人数が関わるプロジェクトって、どうしてもこう、コアがボケていくイメージがあって、僕は少人数の方が鋭いものができるなって日々思っているんです。

でもあの現場は、人数がいるほどコアがクリアになっていた。監督(林さん)の指示に従うんじゃなくて、言われなくても各自が勝手に動いてるのに、目に見えてどんどん良くなっていく。


林さん
そうなんですよ!まじで僕は照明監督とほとんど会話してないですからね。任せてます。


アオキ
喋ったり指示出したりしてないのに、完全に共通のゴールイメージに向かうことができていた。あれはどういうことなんですか。


林さん
制作部の山岡さんのチームが「これを今からやりまーす」って常に指示共有してくれているから、スムーズに進んでいるのかなあと思います。

東北新社 山岡さん

林さん
とはいえ、いくつかのシーンでは照明監督と話し合った気がします。


アオキ
そういえば、かなり序盤のころに林さんが影の角度を指示していたときがあって、その指示の仕方に僕は感動したんですよ。


林さん
え、どんな指示ですか


アオキ
影の角度をもうちょっと直したいって時に「16:9の対角線で影を落としてください」って指示してて。これね、割と僕にとって人生の衝撃くらいの指示で。

林さん
いやいや、でも綺麗くないですか。


アオキ
そう、綺麗なんです。そして何より指示された側にとってわかりやすい。「もうちょい時計回り、いや、もうちょっと戻して!行き過ぎだよ!」ではなく「16:9の対角線上に」これは誰も間違えようがないし、綺麗だし。


林さん
でもそれはそれで厳密にやり出すとつまんないで、大きな指針としての指示ではあるんですけど。


アオキ
わかります。そこからの調整はあるものの、まずは一声「対角線に影を落とす」って言う。これで現場のスピードが上がりますよね。


林さん
なるほどなあ、勉強になります。


アオキ
いやいや、勉強になったのはこっちですよ。




3.予定外を取り入れる


アオキ
この、お皿が回って動いてるところ

アオキ
ここって絵コンテにはなかったシーンですよね。なんで撮ることにしたんでしたっけ。


林さん
あれは妻がいたからですね。


アオキ
林さんの奥さんの黒谷優美さん。スタイリストとして当日入られてましたね。


林さん
あの人もアートディレクターなんで、現場で思いついて「やれるっしょ」ってノリで皿を回し始めた。


アオキ
現場で思いついて実験しただけのカットが、最終的には重要な場面になっている。しかもこのカットのおかげで、CHOPLATEの頑丈さや軽さが感覚的に伝わるんですよね。

林さん
「本当に割れなーい」みたいな感じで回してましたね。面白そうだから撮っただけなんですけど、撮っておいてよかった。


アオキ
そんな感じで、予定にないこともどんどん実験して取り入れていくという姿勢もすごいなと思いました。


林さん
実は編集に入ってすぐのときは作業が進まなくて困ってたんです。それで、アオキさんから「音楽はこんなイメージ」っていう参考となる曲をいただいていたので、それを当てこんでみたら、作業がスっと進んで。

その作業の中で、この回すカットがあると構成としてまとまるってことに気がついたんですよ。ただただ料理が連続するのではなく、軽くて頑丈なんですよっていうことも伝えられると、プレゼンテーションとしてもまとまるなって。

アオキ
しかも説明的になりすぎず、楽しくなる。


林さん
そうですね。

実は現場で製品を撮りながら、やっぱりモノが綺麗なので、綺麗系のスタイリングや照明になっていっていたんですよね。それ自体は良いことで、実際に音楽やテンポも含めて綺麗な感じにまとめることはできたと思うんです。

でもここで、アオキさんが曲のイメージを出してくれたことで「楽しさ」という指針をより明確にしてくれたなって思ってます。


アオキ
いや、なんか少しでもお役に立てたなら嬉しいです。



4.解像度を高め合う

アオキ
僕からの指示と言えば。最初の3カットくらい撮影が終わった段階で「今更で申し訳ないんですけど、左上から右下に影を落とすようにできますか?」って、恐る恐る相談しました。

そうしたらすぐに林さんが「オッケー、撮り直しましょう!」って言ってくれて、照明のセッティングから何から全てをやり直し、それまでに撮影した3カットも全部撮り直しになってしまって。

僕は「うわあ、、すみません!!」って思ったんですけど

林さん
いやいや、言ってもらわないと。やっぱりアオキさんのほうがプロダクトへの愛情の時間が全然違うのと、今までやられてきた蓄積があるじゃないですか。美学的なところも含めて。

一方でその時の照明セッティングとかって、僕たちのやりやすさっていう事情でしかないから。「左上から右下に光を。たしかにそのほうが良いな」って、共感しました。


アオキ
僕は一応クリエイティブディレクターという名前で参加していたんですが、なんか最初は「監督さんにあれこれ言いづらい」みたいなイメージを持っていたんです。

でも午後くらいから林さんの姿勢が理解できて。「言われたから撮り直す」というよりは「あ、それもあり」って納得して取り入れてくれるんだなって。

林さん
むしろ意見を言ってもらった方が良くて。お互いのリスペクトがあった上で言い合っていくと、お互いの解像度が上がっていくんですよね。

たとえば日焼け止めの撮影で、メーカーの担当者さんは、顔に日焼け止めを塗った時の、その塗られた形状にこだわりがあるんです。最初はよく分からないんだけど何度も撮り直すうちにだんだん担当者さんの意図が理解できてくる。

最終的にはメーカーさんよりも早く、僕が「キター!」って言っちゃうくらいゴールが共有できてて。そうやって解像度を高め合っていけるのが、一緒にやる良さだと思います。


5.楽しそうな現場から



アオキ
朝6時からで夜24時すぎまで撮影で、なんか大変だけど、とっても楽しい現場でしたね。どんどんテンションがおかしくなって、撮影現場で料理をカットするたびに「ナイスチョップ!」って声が飛び交うみたいな。

早朝から深夜まで朗らかな現場
「響太朗の朗は"ほがらか"ですから」

アオキ
林さんのテンションの上がり方ってなんか、徹夜明けの美大生みたいな感じだなーって思ってました。


林さん
たしかに。実際に徹夜もよくやります。でも本当楽しくやらせてもらえました。


アオキ
楽しく仕事して、キレッキレのアウトプットを出す。これって僕たちTENTが目指してるし実際にやれてると思ってるんですけど

DRAWING AND MANUALさんも同じ感じで仕事してるんだなーって。そこは衝撃というか、悔しかったですよ。

林さん
うちは「楽しそう」さは負けないと思いますよ。現場にも良い人ばっかり集まってくれて、恵まれてますね。


アオキ
フードスタイリストの左近さんもすごく素敵な料理をどんどん出してくれたし、照明チームの皆さんも東北新社の皆さんも、一人一人が楽しく、共通のゴールに向かっていける、最高のプロの現場を見ることができました。

今回を見た方にも現場の楽しさの片鱗を感じてもらえると良いな。
今日はありがとうございました。

またお仕事ご一緒できると嬉しいです!


林さん
ありがとうございました。またぜひ。



そんな感じで出来上がったCHOPLATEのムービー。記事内では映像の話で終わりましたが、音楽にもすご〜くこだわってます。

音量を大きめにして、何度でも見てもらえると嬉しいです。

<CHOPLATE>
監督・撮影・編集 | 林響太朗(DRAWING AND MANUAL)
演出補 | 熊谷寿将(DRAWING AND MANUAL)
演出補 | 柏原柚葉(DRAWING AND MANUAL)
撮影チーフ | 山村健(SWITCH)
照明 | 田上直人(flip-book)
照明チーフ | 山本学
美術 | 黒谷優美
フードスタイリスト | 左近充英子
音楽 | 戸波和義 (YUGE.inc
   畑中南緒 (YUGE.inc
ミキサー | 浅田将助(1991)
プロデューサー | 山岡元輝(東北新社)
プロダクションマネージャー | 清水利行(東北新社)





「♡マークのスキ」は、noteにアカウントを作っていない方でも押すことができます。この記事を「いいな」と思った方は、気軽に押してみてください。

Twitterやってます
https://twitter.com/aoki_TENT
Instagramやってます
https://www.instagram.com/aoki_tent/?hl=ja
YouTubeやってます
https://youtube.com/playlist?list=PLwtR6grbO_fhFbeSa2rjDHEFZipihIivk

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?