見出し画像

箱庭図書館/乙一 読書記録#29

 「物語を紡ぐ町」文善寺町を舞台とした、6つの短編小説が収録されています。それぞれの作品は独立した作品ながらも、ゆるやかに背景設定や登場人物を共有しています。

 収録作の中で特に印象的だったのは、1作目の「小説家のつくり方」です。文庫版22ページと短いながらも、驚かされるトリックと絶妙な読み味が同居しています。乙一作品には、的確な構成の技術と抒情的な情景描写の両方があると思いました。
 そして6作目の「ホワイト・ステップ」。雪積もる文善寺町で起きた小さな奇跡の物語です。1〜5作目の要素も登場し、作品全体の総括にふさわしい一編でした。

 「あとがき、あるいは『箱庭図書館』ができるまで」では、本作成立の経緯について作者の口から語られています。集英社のWEB文芸発の企画「オツイチ小説再生工場」に応募された、読者によるボツ原稿を乙一がリメイクした結果、『箱庭図書館』は生まれました。各作品のリメイク過程の話も掲載されていて、とても興味深かったです。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?