ラインマーカーズ/穂村弘 読書記録#42
例のごとく、好きな収録歌を引用しつつ語っていきます。
火を初めて見た新鮮な感動が、「呼吸する色の不思議」という言葉に表れているように思いました。「火よ」と教えてくれた「貴方」もまた、闇夜の灯のように尊い存在だったのでしょう。音数がぴったり57577なのも好きなポイント。
冷蔵庫の音が聞こえるほど静かなダイニング。しかし確かに息づくものがそこにある。ふたりはそれぞれに本を読んでいて、時折ページをめくる音が聞こえる。静謐ながらもかすかに生の気配を感じさせるような、穏やかな時間を切り取った歌だと感じました。何だか安心する景色だ。
直接書いてあるわけではないけれど、「泣く」と「鳴く」のダブルミーニングが読み取れます。「泣くのは馬鹿だからにちがいない」と、何か厳しい決意とともに、自分を叱咤しているような感じがしました。雛鳥の時分と青臭い苦悩。そんな心情と「強風の朝」は良く合っていると思います。
短歌のテクニックとして、「上の句と下の句との飛躍」というか、意味をひょいと飛び越えて広がりを生むような、対照のワザがあるように思います。小説の情景描写などにも通じるものがあるかもしれない。例えば、このような歌。
上の句(台詞、心情)と下の句(風景・情景)が相互に影響して、詠嘆の深みを増しているように感じます。ところでこれはきっと偶然ですが、どちらも「雪」が詠み込まれた歌でした。
短歌、奥が深い。まだまだ勉強していきます。
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