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女子女子していない掃除

いつも柔軟剤で揉める。


仕事が一段落したタイミングが重なったこともあり、久しぶりにしっかりめの掃除をした。


襖で区切られた2つの部屋を1つにし、窓を開けるとふんわりとした風が入り込んできた。もうすぐ梅雨入りだというのに心地よく乾いた風だった。


シーツを外し、枕カバーを外し、洗濯機を回す間に水回りや家具の埃を掃いて、それからそれぞれの収納を整理する。いつもの流れ。


「前どっちのだっけ」と柔軟剤を両手に僕。
「うちのじゃ」
「じゃ今回は俺のね」
「えー、そんなルールなくない?」
「ないけどなんか不公平」
「あおの匂いになっちゃうじゃん」
「思春期の娘が父親にいう暴言じゃん」
「じゃんけんで決めようで」
「なんでだよ」


いや、別にどっちでもいいんだけど。結局じゃんけんで負けていつきの柔軟剤になった。


アロマタイプのフローラル系。ふんわり薫る。香り長持ち。僕のよりちょっと値段が高いやつ。


「うちの高級じゃけえ、感謝せえ」
「暴君だ」


一緒に洗うのだ。それぞれ洗っていたら時間も水ももったいないし、服もよく一緒に洗う。


共有スペースの掃除が終わって隣同士の収納で各々整理する。


押入れが2つある。天袋付きの昔ながらの造り。築50年。一人で住んでいた時は空っぽだった窓際のスペースには彼女のものでぎっしり埋まっている。


「ねえ、うちもその突っ張り棒欲しい」と僕のを覗いて指をさす。
「ニトリで買えるよ」
「買うてや」
「自分で買え」
「誕プレー」
「”わか”あげたでしょ」


わか、とはいつきの誕生日に贈った観葉植物である。和歌にちなんで「わか」と命名した。


「じゃあ買い取らせて」
「なんでだよ」
「明日服届くんじゃ、もうカラボに入り切らん」
「・・・じゃあ一時的に貸してあげる」
「あざーっす、あお大好き」


やっすい愛をもらった。


「注文しとくから後でお金払ってよ」
「へいへい」


なんだかんだ甘やかしてしまう。だってかわいいから。仕方ないじゃないか。


彼女の押し入れには漫画と服と彼女が書いた本、そしてわずかな小説がごちゃごちゃと無秩序に散乱。巻数順に並べる概念がないのだ。

服もカラーボックスに入れてたり漫画の上にほったらかしにしていたりする。唯一、お気に入りのナイキのスニーカーだけが箱の上に大事に置かれていた。

アクセサリーはあまり持っていなくて、すみっこの小皿に、銀色のフープイヤリングと「結婚ごっこ」で買った500円の指輪だけちょこんと乗っている。


「”女子女子”してないじゃろ」と言った。
「アクセサリーとか香水がないってこと?」
「そう」
「まあ確かに」
「こういう女はどうよ」


大好き。


代わりの答えを探していたら洗濯機が鳴った。






























p.s.
いろんな人にイラストや漫画を描いて欲しいです(もちろん有償で)。貯金が尽きるまでいろんな人に描いてもらって、「いつき」と「あおい」を見てみたいです。

p.p.s.
個人で働いているのでお仕事のやり取りには慣れています。また、インボイス対応しております。『「じゃ」へ。』を読んでみて「描いてやってもよかろう」という方はぜひInstagramのDMにお願いします。


https://www.instagram.com/ao__k__ao/



生活費になります。食費。育ち盛りゆえ。。