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午前二時、キッチン、キミ。

あおはさー、とキミが言った。

午前二時だった。

つまらない意味で優しいんだよ。

そう言いながらキミはゴソゴソと冷蔵庫を物色していた。

キッチンのテーブルで文章を書いていた。仕事が忙しいのでこの時間にひっそり書くのだ。賞に応募するための小説だった。受賞できるとは思っていない。他に上手い人はごまんといるから。

どういうこと?と聞いた。気になったので。

キミは言った。

誰も傷つけない奴は誰にも好かれないよ。と。

僕のパソコンを指さして「あおの文章ってさ、トゲがなさすぎるんだよ」と言った。

「死ねとかうざいとか書けってこと?」
「違う。書きすぎってこと」

「説明しすぎなんだよ。それが必要なシーンもあるよ?心情を表現するためにさ。でもそれ以外でも書きすぎ。noteのエッセイでもさ、『受賞できるとは思っていませんが、』とか『人によります』とかさ、やんわりした言葉を使ったりさあ。そういうのあとがきとかに入れてんじゃん。文法も整合性も、丁寧に書きすぎ。矛盾を怖がりすぎ。それって結局自分を可愛がりすぎてんだよ。偽善。自分にも読み手にもだよ。過保護かよ。余白がないからつまらない。トゲってそういうこと。もっと読み手を突き放しなよ。全員救おうとするな。そういうやつは誰も救えないし、誰からも好かれない」

午前二時、彼女の文章講座。

あおはさー、と言った。

午前二時だった。

つまらない意味で優しいんだよ。

キミはゴソゴソと冷蔵庫を物色していた。

キッチンで文章を書いていた。仕事が忙しいのでこの時間にひっそり書くのだ。賞に応募するための小説だった。

どういうこと?

誰も傷つけない奴は誰にも好かれないよ。と。

僕のパソコンを指さして「あおの文章ってさ、トゲがなさすぎるんだよ」と言った。

「死ねとかうざいとか書けってこと?」
「違う。書きすぎってこと」

「説明しすぎなんだよ。それが必要なシーン以外でも書きすぎ。文法も整合性も、丁寧に書きすぎ。過保護かよ。余白がないからつまらない。トゲってそういうこと。もっと読み手を突き放しなよ。全員救おうとするな。そういうやつは誰も救えないし、誰からも好かれない。」

午前二時、彼女の人生講座。



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