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舞台 『大正浪漫探偵譚-エデンの歌姫-』 の感想(ネタバレあり)

「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。」
       
  (マタイによる福音書7章7節)


はい!今回は12日に千秋楽を迎えました
舞台 『大正浪漫探偵譚 -エデンの歌姫-』について、ネタバレしまくりで感想を書いていきたいと思います!わーい!!!

いやぁ…ろまたん、めっちゃくちゃ面白かったです。

今回は個人的に考えることが多く、舞台として楽しませていただいたのはもちろん、これからの生き方(というとやや大袈裟に聞こえるかもしれませんが)や、自身の思考を改めて整理できたし、良い気づきをたくさん得ることが出来ました。

ではさっそく。以下が目次です。



どんな内容?という方向けにあらすじをサクッと貼っておきます。

あらすじ

「あの衝撃に変えられるモノは、他にあるだろうか?」
和製シャーロック・ホームズ東堂解が過去最大の連続殺人事件に挑む。

時は大正時代。
探偵業を始めたばかりの東堂解(とうどうかい)は、人と上手くコミュニケーションが取れない変わり者。家事と助手をしてくれる人物を求めていた。
大学時代の友人である北原(きたはら)は、従兄弟の売れない小説家、南条(なんじょう)をルームメイトにと東堂に紹介する。
破天荒でお調子者の南条にいまいち馴染めない東堂。南条もまた、探偵らしからぬ東堂に疑問を抱いていた。
そんな中、立て続けに不可解な連続殺人事件が起きる。
殺された彼らの共通点、東堂の手に渡った暗号、とある組織に隠された闇。
そして、謎の女の出現により、東堂は頭の回転に支障をきたす。
果たして、東堂は事件を解決できるのか―――。

舞台「大正浪漫探偵譚-エデンの歌姫-」公式サイト


この内容だけでワクワクしません?!
個人的に元々ミステリ小説が好きなのもあって、暗号とか、組織とか、、特に連続殺人事件の記載を見てめちゃくちゃテンションが上がったのを覚えています。笑
和製シャーロック・ホームズってどういう感じなんだろうとか、大正時代か〜知らないことが多いなと思い、大正時代の服装や流行ったものを調べるなどして、今回の公演をすごくすごく楽しみにしていました。


いざ観劇。


蓋を開けてみたら期待値を遥かに超える、ストレートの舞台ならではの面白さと、演者の皆さまのお芝居の熱量の素晴らしさに毎公演、圧倒される日々でした、、、

そしてどうしても先にお伝えしたいので書くと、脚本家の鈴木茉美さんをはじめ、キャストの皆さまが丁寧に、真摯に、ひたむきに、役と向き合っているからこそこんなに凄いものを観せていただけたんだなと心の底から感じる、素晴らしい舞台でした。

私の舞台観劇経験が少ないという前提は重々承知の上であえて言葉を選ばずに言うと、全演者さまたちがハマり役な舞台ってなかなか出逢えないと思っているんですよね。

ですが今回観劇したろまたんは、
「このキャストさんだからこそ、この役を最高な形で届けていただけたんだろうなぁ」と、観客であるこちらにひしひしと伝わってきて…

観劇が終わってからの帰り道や家に着いてからも、登場人物ひとりひとりの心境や境遇、想いを考えることがとにかく多かったです。


本編&各キャストさまの好きな場面


ここから一人一人に焦点も当てつつ、内容について思ったことを書いていきたいと思います。
(ネタバレが嫌な方はブラウザバックお願いします…!)


まず、いきなり「とおりゃんせ」から始まるの、初見のときけっこう怖かったんですけど観られた方々どうですか…?
ああいうわらべうたってなんというか…特有の空気感(それこそホラーな雰囲気)や、隠された意味とか色々と憶測で考えてしまうのもあって、あまり得意じゃなくて、、笑
そういう苦手意識と言いますか、普段だと表面には出てこないけれど心が少しざわつく様な、うっすらとした恐怖心を呼び覚ますことも一つの目的とされているのかなと、意図に気付いてから(違ってたらすみません)は冷静になれたんですが最初はかなり怖かったです。笑
澄華あまねさんの透き通った歌声がより世界観に合っていて、なおさら怖く感じてました…(良い意味です!)

つまり、あの始まり方のおかげで、一気に物語の世界に引き込まれました。


そこから、淳平くん演じるしょうたと、小坂さん演じる南条が交互に話すんですが、その内容も重みがあるなと。
孤児である「しょうた」と、売れない物書きの「南条」は立場は違えど、たしかに誰からも
"選ばれない人間”(孤児=独り、売れない物書き=読みたいと思う人が居ない⇒どちらも必要とされていない≒選ばれない)なんですよね。
そんな2人に語らせて、誰と出会ったんだろう…?と思わせておきながらすぐに東堂を出すのではなく、上野は(姿は見えないけれど)東堂に対して占いの結果について語り、北原は南条と喋るという、並行した演出もすごく好きで。
そして、占い師の上野と南条に同じ意味の台詞を言ってからの東堂が「探偵です」と登場⇒オープニングが始まるという流れが鮮やかで、いつもめちゃくちゃテンション上がっていました。

オープニングも立ち位置がエデンのメンバーは舞台の高いところに並んでいたりと凝っていて…
一人一人皆さんの表情や歩き方の違いから、どういったキャラクターなのかなと想像出来るあのオープニングが音楽も含めてとてもすごく好きなんですが、
特に好きな部分が
曲調が一変しサイコロの映像が流れてからの、馬木也さん演じる沼井の登場 です。

あそこの場面は何度観ても、いや何度も観るからこそ、沼井は…といろいろと考えてしまうんですよね、、詳細はエデンとその思想についてで後述します。


キャストさんお一人ずつについてここからわーっと書いていきたいんですが…


まず、竹中さん扮する東堂の台詞量、おかしくないですか??笑
事前のアレン座の配信でも台詞量多いとは聞いていましたが、尋常じゃない長さで初見のときびっくりしまくったあの衝撃、今も覚えています…笑
しかもアフトのお話で伺ったところ、いざお稽古となった時はすでにもう台詞をほぼ完璧に覚えられていたとか…すごい…!!
しかもあの澱みなくすらすらと話すのって息継ぎのタイミングとかも難しいと思いますし、何言ってるのか分かるように、そして聞いていて眠くならないように話されているお姿が、これが東堂解なのか…!となりました。
しかも少しずつ覚えられたとのことで…シンプルに努力の賜物なのだなと、、
あと個人的に思ったのがパンフレットの質問に対する回答も文章の量が多くて(文字サイズも竹中さんのページだけ小さいですよね!?笑)東堂っぽいなぁと読んでいて思いました。

次に小坂さんの南条。
いや〜あらすじで想像していたけれど、これこそ南条なんだろうな!ってなりました。アフトの時に淳平くんが「小坂さんの南条を観てしまったからそれが正解に見えてしまって…」と話していたけれど、まさにそうだなと。
なんといいますか、こういう人物、いそう〜!ってなるんですよね、、
最初のあの足を掻いて蚊を仕留めようとするところもアドリブとのことでしたが、そういった部分や、西宮に対してフアンだから照れた表情を見せつつソワソワしているお姿など、細かい所作が全部、南条がもし大正時代に生きている人間だったらそういうことをしてそうだなぁと思わせる説得力があって、観ていてほんと飽きなかったです。
あの細かいお芝居が、より南条のキャラクターをよりリアルにしているなと感じていました。

淳平くんのしょうたは、孤児という恵まれない境遇でいながらも一歩踏み出す勇気と、そして腐ることなくまっすぐな心を持っていたからこそ、今の状況を打破出来たのだろうなと…
東堂との出会いはしょうたにとって貴重な出会いではあるけれど、あくまできっかけに過ぎないのかなと思っていて。もちろん、東堂がねずみやしょうたを、1人の人として接しているのはあるけれど、しょうたが東堂に対して、「ありがとう」という気持ちと、それを行動に移そうと思える勇気がなければ自分の身を呈してまで東堂のことを守ろうとはしなかっただろうし、終盤の東堂の台詞の
“平等であることはありえない。しかしそれを知ることで人は次に進むことができる。” を体現しているなと感じました。
そして、「誰か…助けて…」や「お腹…すいた…」の台詞は短いからこそ、表情だったり、声のトーンだったりが重要になると思っていて。しょうたは孤児だから周りに対して心を閉ざして、希望の見えない状態だから目に光が無いけれど、東堂と関わるにつれて世界が広がり、笑顔も増えていく、そういった繊細なお芝居が改めて大好きだなと感じていました。

三浦さんの北原は、貴族でありながらも嫌味が一切なく…人柄の良さがとても伝わってくる素敵な役柄だなぁと、好ましく観ていました。
そして表情でのお芝居が特に得意な方なんだろうなと。怪訝そうな顔や少しいたずらっぽい表情はもちろん、笑顔の使い分けが印象的だと感じました。
貴族という役柄だと、品がある堂々とした立ち振る舞いは一歩間違えると自慢げに見えてもおかしくはないのですが、好青年という印象を見事にもたらしていて…
「楽屋でも貴族だからのびのびとしていました」とお話しされているチャーミングなところも面白く、北原の持つ人の良さを、元々三浦さんがお持ちだからより、北原が好ましい存在に見えるのかなと思っていました。
また、北原は南条を東堂に紹介するという、欠かすことが出来ない存在だなと。北原がいなかったら東堂は南条に出会うことはなかったと思うし、もしかしたら今回のこの連続殺人事件が解けなかったかもしれないと思うと、人と人の繋がりって大切だなと。

大平さんのねずみは面倒見の良い、頼り甲斐のあるお兄ちゃんといった感じだけれど、東堂に対しては子どもらしくなるところが可愛いなぁと思って観ていました。少年探偵団に任命されて嬉しそうにするお姿が特に!
表情や所作がほんと子どもにしか見えなくて、大平さんのその自然体な感じのお芝居が素敵だなぁと思っていたのですが、特におぉ!!すごい!!と思ったのが10日の夜公演です。
東堂がねずみに成功報酬を渡す場面で、なんとお財布が見つからないというハプニングが起きたんですが…咄嗟の事態にも関わらず、大平さんが「まだ〜?」「増し増しで!」とアドリブ力を効かせたことによって、自然な形でお話が進み…
あそこの場面、座席的によく見えたのですが、大平さんのお力があったから切り抜けられたんだろうなと。舞台は生ものと言いますが、大平さんの瞬発力を存分に感じられて貴重でした…!
また、しょうたと物語が進むにつれて良い関係性になっていくその距離感、空気感がとても自然ですごいなぁと思って観ていました…
ねずみは、見た目こそ汚いと南条に軽く揶揄されていましたが、心は綺麗で、そして仲間はもちろん、1人であるしょうたを心配に思うという優しさを持った強い子なんだなと、魅力的で。ねずみもしょうたもお互いに良い影響を与え合っているところがすごく好きでした。

足立さんの本川は、今回登場する中で最も人間らしいし、最も可哀想な人物だなと…
自分の保身のために仲間を売って後悔する、それを紛らわすためにお酒に入り浸る、でも人間臭さが存分に出ていて憎めないキャラだなと。
臆病でありながら友達想いというキャラクター設定もこういう人って実際居るだろうなと感じていたらアフトで当て書きと伺い…!特に居そうだなと感じていた理由はだからなのかと納得しつつ、足立さんは魅力的な方なんだなと興味が湧きました。そして本川、首絞められまくりですよね。笑
初日だと馬木也さん演じる沼井に首を噛みつかれ、千秋楽では手を噛まれ…悲惨だ…と思いつつ、、
また、森下に縄で首を絞められるシーンも本気で首を絞められているようにしか見えなかったです。
なので初日〜3公演目までは首に縄の跡が付かないのか心配していました…笑
一番エデンの中で「誰かの役に立ちたい」という意思を持っていたのは本川だったのではないかと。だから本川はエデンに入ったのに…と、また、タイミングが違えば死なずに済んだのでないかと考えさせられました。

松村さんの山根は、東堂に対して大切なことを伝える重要な役割を担っているなと。
彫り師というところは想像つかなかったんですが、アフトでお話しされていた、ややオタク気質なところがある≒一点に集中⇒刺青も集中して描く、命を捧げているという解釈がなるほどなぁとなりました。西宮さんに恋をしてから、ずっとブレずにまっすぐなところが素敵だなと思っていて。
これまたアフトのお話になりますが、現代だといわゆる全通が当たり前のオタクだろうと言われていたのも印象深かったです。笑
個人的に、その想いを大切にする姿勢と、芯を持ってまっすぐに生きる姿がオタクとしても、人としても素敵だなと感じる存在でした。
だからこそ、東堂に与えた影響の度合いは、かなり大きなものではないかなぁと思いました。
自身がオタクということもあり、なんというかその仕事に真っ直ぐ向き合いながら趣味に打ち込む姿勢を見習いたいなと思った、身近に感じる存在でした。

高士さんの島田は、警察官という大正時代だとおそらく現代よりもかなり縦社会の風土が強い組織に属しているからか、やや東堂に対しても当たりが強い場面が見られました。
そういった印象が強かったのですが、物語が進むにつれ彼の中での心境が変化していき、終盤での東堂との会話から彼の「正しさ」を感じられる描写が素敵だなと。
そして、内部の閉じられた文化が強い環境でも「正しい人」は存在するのだ、という希望を見出すことが出来たのは島田だからだろうなと思いました。
高士さんの島田は歩き方も、衣装も警察官らしくてとても似合っていて…最初の東堂と接する時にため息をついているところも警察官のちょっと嫌な部分が出ていて良いな〜と感じていました。
役柄的に自身の警察官という役目に打ち込んでいる「真面目さ」以外の、感情の機微や心境の変化の表現が難しいのではないかなと思っていたのですが、最初に東堂に出会った時と最後の深々としたお礼からしっかりと伝わってきました。

澄華さんの西宮は、ほんと歌姫だ…!!となるくらい澄んだ歌声で…のびのびと歌われていて、、エデンから抜け出してしたかったことが出来て幸せなんだろうなということがとても伝わってきました。
そして…魔笛、本当にお疲れさまでした、、全て聴かせていただいたのですがどの公演も素晴らしくて心の中で盛大に拍手を送っていました。
また、お芝居も魅力的で…いつの回だったか、シーン31の、森下との会話で綺麗な涙を流されているのがすごく記憶に残っていて…
また、シーン35のエデンのみんなが次々といなくなり、沼井と西宮しか残っていない時の去り際の表情も好きでした。笑顔ももちろん魅力的なのですが、悲しい表情は特にこちらに感情が伝わってきて胸が痛くなりつつも好きでした、、
最後のメッセージ、台本を購入して謎解きをしていたんですがぜひ「いつか再会を」したいと心から思う、魅力的な歌姫だと感じました。
そして、アフトでは澄華さんの可愛くて素敵なお人柄が伝わってきて、見ていてニコニコになりました。(栗田さんにBSの番組っぽいと言われていた)MC、特に素敵でした!!

七瀬さんの林は、殺陣はもちろん、身体能力がとにかくすごかったです!オープニングの登場の際に手を付かずに回転する時点でどうなってるんだ…?となりましたし、東堂に一度やられて倒れてから回転しつつ起き上がるところ、ブレイクダンスで回り慣れているからこそできる動き方なんだろうなと興味津々でした。ここまで動ける女性の役者さんって他にいらっしゃらないんじゃないかと思うくらい格好良かったです。
そして林は、沼井の考えに共感して最後まで付いて行ってたからこそ沼井がいなくなってしまってどうなってしまうのかなと、すごく今後が気になる人物でもありました。
回想の時にエデンのみんなとニコニコしているお姿が、沼井と2人で会話してる時や他の時は終始冷たい表情になっていて…昔のエデンは良かったけれど、どんどん窮屈になってしまったから笑顔も無くなったんだろうなと思うと…
アフトでは特技のブレイクダンスを見せていただく貴重な機会もありがとうございました!
また、お芝居が、板の上に立つのが楽しい〜!という気持ちが伝わる笑顔もきらきら輝いていて素敵でした。

栗田さんの森下は、一番しんどい立場だったんじゃないかなと。優しいとみんなから言われる人物が"神送係"として任命される。大事な役割ではあるけれど、優しい心を持った人がやるにはあまりにも酷な役目で…
「エデンが家だから。」という言葉から察するに親がそうだったから構成員になったのかなと思っていたのですが、台本に"両親が構成員"と書かれてあり、やはりそうか…と。
両親がそうだと、そのエデンの思想を昔から無理やり植え付けられているようなものなので、だからこそ抜け出すという判断が出来なかったのかな…と思いました。
沼井に殺されるときの緊迫感溢れる演技にいつも惹きつけられていたのですが、特に千秋楽でなさっていた自身の腕(エデンの刺青が入っているところですね)を何度も叩いているお姿が観ていて本当に辛くて…恐怖を感じて過呼吸になりつつ、諦めて静かになるところ、絶望が伝わっていました。
"消せない絆"が枷になっていたんだろうなぁ…
また、森下が西宮との約束を守り、初めての独唱会を観に行ったこと、西宮は知る由もないのかと思うとほんとやりきれないですね、、、

林田さんの上野は占い師という立場上、いろんなことがきっと見えていて、だから「思想を分かつ女」と表現されていたんだろうなと。
個人的に表情のお芝居がすごく好きでした…!
シーン18の沼井と2人で話している時の、「そうね…」が特に好きで…演技力のある方ってすごい…ととても、惹きつけられていました。
母親かよと言われるような、エデンでも周りのみんなのことをよく見ている気配りの人である上野。
最初の理想としていた環境からどんどん変わっていってしまうのをどういう心境で見ていたのかなと。
台本だと、上野は逃げようとして倒れたところを森下がナイフを振り上げて刺すという描写なんですが、実際の公演では自分の死を受け止めて森下のナイフに自ら刺されにいってましたよね。
そのようなお芝居をなさっていたのは、きっと森下の立場を考えた末での、上野の持つ優しさと強さが出た行動だったのではないか…と考えていました。

河内さんの木崎は、勝手な発言で申し訳ないんですが登場時から胡散臭さが出まくりで…こちら側(今回で言うと北原のような良い人側)なの!?と思い観ていたのですが、やっぱりエデン側でしたね、、となってました。笑
北原と木崎の関係はきっとエデンが表面化しなければ続いていたのかなと感じるし、だからなおさら木崎が守りたかったものは人と人のつながりではなくエデンの教えだったのかと思うと……
シーン33で、北原の会話の後に「さて…」と言いながら腕を叩くお姿、この後の戦闘を考えて腕が鈍っていないかと叩いていたのもあると思いつつ、自分はエデンの人間だという意味を込めて、エデンの刺青が入っている部分を叩いていたのではないかな?と想像していました。
あと、殺陣のレイピアのスピード感がすごくて、ヒヤヒヤして…見守るの楽しかったです。

馬木也さんの沼井は、"お芝居とは何か"の真髄を見せていただけたと個人的にとても強く感じる人物でした。あまりにもすごくて、、毎公演、熱量に圧倒される日々、とても貴重だったと思います。
沼井の立場を考えるとすぐにボロボロ泣いてしまうんですが、馬木也さんが沼井だったからこそこうしてすごく伝わってきたんだろうなと。
沼井はもちろん許されない行為をした人物だけれど、それも信念が強すぎたからで…救いがあればと願わずにはいられませんでした。
現実が見えなくなってしまった虚な瞳と、怒りやすいのを押さえつけようとするお姿、感情を露わにした場面は、こちらもエデンの一員となった気持ちでビクッと毎公演なっていました。
特に初日の、本川の首を絞めるだけにとどまらず思わず噛みついてしまうところや、爆弾を奪って照明にぶつかってしまったお姿、完全に役に入り込まれていて…月並みな言葉で恐縮ですが本当に素晴らしかったです、、
そういう恐怖さを与える場面だけでなく、シーン34の林や西宮に対しての最後の接し方が、、2人にとっては紛れもなくお父さんのような存在だったのだろうなと思っています。寂しそうな微笑み、忘れられません…
アフトでは、ベテランであるにも関わらず他のキャストのみなさまと気さくにいつもお話しされる「楽屋番長」であると伺い、驕らずに対話をなさる素敵な方だなぁととても伝わってきました!
馬木也さんの生のお芝居を観れたこと、とても素敵な財産だなと思いました。



エデンとその思想について

ここからは今回の物語の根幹となっているエデンという宗教について個人的に感じたことを実際の宗教の要素を拾いながら考察したいと思います。
正解が何かは分からないのですが、自分ではこういう部分が繋がっているかも?と思ったのを整理したく。
アフトで茉美さんが「キリスト教の学校に通っていたから、今回はそういった宗教の要素を取り入れたかった」とお話しされていましたが、
私自身キリスト教の学校に中〜大で通っていまして。なので、なおさらエデンの宗教観についてはたくさん気になるところがあって…

まず前提として、エデンの人たちだってなにも元々は殺しがしたいわけじゃないし、「持つ者は持たざる者に与え、より良い平等な社会を作りたい」という思想は宗教として何もおかしくないし耳障りもよいです。
ただ、持つ者=エデンの構成員、持たざる者=その他の人々というところはいささかいただけないなと。宗教は自分の心の支えにする分にはとても良いと思うのですが、自分たちを「持つ者」とするのはけっこう、というかかなり傲慢さが出てしまっていると思うんですよね。
そして、何よりも今回の事件の起因となってしまった裏切った場合は死をもって魂を神の元へ送り、浄化させる≒死は神が平等に人々に与えた唯一の権利という根底の理念は…思想が強すぎてしまっている部分が最悪の結果として表れてしまったのかなと。それが本当に悲しくて、やるせなくて…

ここでそのについての考え方をご参考としてキリスト教の聖書から引用します。

記述を見ると、

「人間には、一度死ぬことと死後にさばきを受けることが定まっている」

(聖書 ヘブル人への手紙 9章27節)

とあるんですよね。
こちらの場合は「我々人間は神の前では誰しもが罪人であるから、キリストを信じることで救われる」といった考えなんですが、なんというか近いものがあるなと個人的に思っていました。
今回はキリスト=沼井ですね。沼井を信じないと救われない≒罰が与えられるの構図になっているのではないかなと思っていました。

このnoteの冒頭で引用した、マタイによる福音書の一節の"求めなさい。そうすれば、与えられる。"
も、エデンの思想である「持つ者は持たざる者に与える。必要とされることを美徳とし、神に祈る」と少し通じる部分があるのではないでしょうか。

実際、今回だと東堂は探偵というやや特殊な立場であるけれど、明らかに「持つ者」側なんですよね。探偵という立場上、知識や閃きを与える側という意味なのはもちろんですが、パンと牛乳を「持たざる者」である孤児であるしょうたに対して「与える」という行為をしたのは自明です。
「お腹…すいた…」と言ったしょうたは「求めた」から「与えられた」のもあるのでは?と。

なのでこの辺りのシーンから、エデンの思想が一概に全て悪いとは言い切れないのではないかと個人的には考えていて。(もちろん罰し方とかはダメですが)

ただ一方で、エデンの人たちが掲げる「この印を持つ者として人々を救うのだ」や「エデンの精神を胸に、弱き者を助けていく」の"弱き者"の中にはきっと、しょうたやねずみといった、いわゆる圧倒的に持たざる者、つまり弱き者であり本当に救いを必要としている存在は視界に入っていないように見えるのも皮肉だな、、と思っていました。

宗教…「信仰や思想は、強制すべきものではない」と、東堂の口からも言われているとおりなのは私も同じ考えなんですが、改めて難しいです。
考え方の違いを認め合うことが出来ていたら、違った結果になっていたかもしれないのに、沼井は「私は受け入れることはできない。」と東堂の考えを最後まで否定しているんですよね、、
そこをもしほんの僅かでも受け入れることが出来たら……

物語終盤の、エデンのみんなで楽しくお酒を飲みながら語り合うシーンが特に好きなんですが、沼井が思想を語っている一方エデンの人々は1人また1人と去っていく描写が本当にしんどくて、泣きまくりでした。
虚と実のバランスがあやふやな沼井は独りになりながらもどこか虚な目のまま、自分の信念をずっと語っていて…あぁ、この人は本当に周りが見えなくなってしまったんだな…と。
どういう気持ちで上に立ち続けたのだろうか、諦めてしまうしか選択肢は本当になかったのかと心情を考えると辛くて、歯痒くて、やりきれなくて…心がすごく痛みました。


アフタートーク&ナノさんのライブ

裏話はあまりレポしない方が良いのかな…?とあまり分かっていないので(どうなんですかね…そこらへんのルール等に詳しい方いましたらコソッと教えてください)オブラートに包みまくって書くと、みなさまが真摯にお芝居に向き合っているのがとても伝わり、全てのアフトが楽しくてずっと聞いていたいくらい楽しいお時間を過ごさせていただきました!!

お芝居が好きな方々だからこそ産み出される熱量、空気感、その想いを味わえたこと、今回の観劇でいちばんの幸せでした。
いや〜どのアフトも楽しかったですほんと、、キャストのみなさま全員が大好きになりました。(展示会、ぜひ行きたいな〜と思っています…)

そして急遽決まったナノさんのスペシャルライブも最高で。ろまたんのシリーズのテーマ曲とのことですが、歌詞を見ると今回の内容にもとてもリンクしていて鳥肌が立ちまくりでした。

特に歌詞の、

誰もが彷徨う運命の行方、喜びも、怒りも、悲しみさえ 誰かにシンパシーを求めてて、はばかる心の壁を乗り越え
誰もが違う道を歩んでて、生まれて、生きて、散りゆく命も 誰かに心許して初めて、何も悔いない人生と呼べる

https://www.lyrical-nonsense.com/lyrics/nano/gloria/

の部分がすごく重なっているなと…
ちょうど公演が折り返しのタイミングでナノさんの「Gloria」を生で聴けてすごく嬉しかったですし、おかげでより一層ろまたんの世界観を感じることが出来ました。
(これは余談なのですが、個人的に高校生時代にナノさんの歌ってみたやCDなどよく聴いていたので懐かしさがすごかったです。その時の友人と久しぶりに連絡を取るきっかけにもなりました、ありがとうございます…!)
アフタートークだったりライブだったりと、お芝居に焦点を当てた企画が盛りだくさんな舞台に通うのは初めてだったので毎公演とっても楽しかったです!

まとめ

今回の観劇を通して、相手の考えや変化を受け入れることの大切さ、一歩踏み出すことで何かが変わるかもしれない。ということ、そして自分の考えに固執することの怖さをとても感じました。

少し個人的な話をすると、
基本的には
"みんな一人一人違うんだから、考えも違っていて当然であるし、いろんな考えを聞きたい、聞いた上で物事を考えたい"というスタンスを意識するようにして日々生きるようにしているんですが、その考え自体が気付かない間に相手に押し付けになっていることもあるかもしれないと思いました。
他にも、身につまされる場面もたくさんありました。(本編では台詞としては言われていないけれど、台本には書かれているフアンについての記載とか…)
だからこそ、1公演も欠かさず観ることができて良かったと心から思います。(令和版の山根ですね。笑)

このろまたんは、他にもまだまだ気づいていないだけで伝えたいことはたくさんあるんだろうなと思いますし、きっと改めて公演と台本を見返すことでパズルのピースがはまり、新たな気づきがまた得られるのではないかと感じる作品でした。

私も最後の東堂の台詞のとおり、"明日を生きていくために"日々少しずつでも前に進んでいこうと思います。

長くなりましたが…
この公演期間中にも大切な出逢いがありました。
そしてたくさんの貴重な気づきも得ることが出来ました。

そしてなにより、
皆様のお芝居が大好きな方々の集まり
だということが全身に伝わる、素敵なお時間を届けてくださりありがとうございました。
「舞台 大正浪漫探偵譚-エデンの歌姫-」に出逢えたこと、幸せです。


248 Q-LX,XLI,LXVII,XI,XLIV,LXVII,XLIV,LI




P.S.
まだろまたんの過去作品を観れていないので、北早翔太が東堂の助手としてどうなるかや、警察官として初めて登場する島田の繋がりをしっかり観ようと思います…公演期間中に観てから千秋楽を迎えたかったなというところだけ後悔していますが…
観終わったら気づきがさらにたくさんあると思うので、また視聴次第noteに追記しようと思います。

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