クリスマスの気まぐれ.16

村田さんは、眉間にシワを寄せてスマホに入力を始めた。
カタンとドアが開いて、店の中から人が出てきた。
若いカップルがニコニコしながら、

「おいしかったね!」
「また来たいね!」

そう話しながら、遠ざかっていく。

「おいしかったって言ってましたよ!」

自分のカンが当たったかもしれないと、嬉しくなる。
…だけど、

「…え?
あんな知らない人のこと信じちゃうの?
ナズナちゃんは素直だから、騙されやすいのかもよ?」

歪んだ笑みを向けられた。

「え?」

心にズキリと、不快な痛みを覚える。

「あ、ここダメだって!
近くにいいお店あるみたいだから、行こう。」

村田さんは楽しそうにそう言うと、スマホの画面と辺りを見比べながら歩き始める。
腑に落ちないけれど、仕方なくそのまま後をついていく。

「お店に詳しいお友達がいるんですか?」

気を取り直しつつそう問いかけると、久々に一瞬目が合って、弾けるように笑い出した。

「あははは!
ナズナちゃんって、ホント天然!
マジで癒されるわー。」

「?」
そんなにおかしなことを言ってしまったのだろうか。
…ついでに、私は天然なんかじゃない。

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