クリスマスの気まぐれ.17

「お店の検索とか、口コミとか、ちょっと調べるとたくさん載ってるよ?」

会ってから、映画を見ている最中以外は、ずっと右手ににぎりしめているスマホを掲げられた。
確かに、雑誌やネットでお店の検索をしたり、口コミや評価を見ることもある。

だけど、さっきみたいに雰囲気の良さそうなお店を見つけて、ドキドキしながら入ったり、ちょっと口に合わなくてガッカリしたり…。
そういうのも、私は楽しいと思う。

と、思ったけれど、言えるはずもなく、ハハハと曖昧に笑った。
なんとなく、モヤモヤを抱えたまま目的のお店に到着した。

こぢんまりとしているけれど、すごく混んでいて、外にも数名待っている人がいる。
寒さに身体がプルプル震えそうになって、せめて気を紛らわせようと空を見上げると、
ハラリ、ハラリと雪が舞ってきた。
…寒い。

「おいしいものは、やっぱり待たなきゃいけないんだね。」

村田さんにニコニコ笑顔でそう言われて、思わず笑みを返したけれど…。
開店してまだそんなに時間は経っていないのに、もう外まで人が待っている。

これがもし。ラーメン屋さんや、おそば屋さんならば回転率がいいから、そんなに待たなくても入れるかもしれない。

だけど、お酒も色々置いているみたいで、ゆっくり飲んだり食べたりする雰囲気のお店みたいだから、どれだけ待つだろう。

決して、待つのが我慢できないほど、気が短いわけじゃない。
せめて暖かい時期ならまだしも、今は真冬で雪も降ってきた。
今日はオシャレ重視で、防寒が足りない私が悪いのかもしれない。
…だけど。

「さ、寒くないですか?」

おそるおそる尋ねると、

「おれ、体温高いのか全然平気。」

いつの間にか取り出した手袋をはめていて、この手袋はスマホ操作できるんだよ、
なんて自慢げに話してくれた。
待つのも楽しいと言わんばかりだ。

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