ツリー_プレゼント

クリスマスの気まぐれ.1

駅前の噴水公園の、キラキラ輝くイルミネーションは、12月15日からクリスマスまでの期間限定のイベントだ。

期間が短いからこそ、その為だけのカップルというよりは、もうそばにいるのが当たり前な“恋人”たちが見に行くもののように思える。

私もいつかは…
そう夢見て、何年経っただろう。
現実はというと…

デパートの販売員の仕事は、どんどん後輩が入社してきて、先輩は少しずつ幸せな退社をする。
気づけば、すっかりベテランと呼ばれる位置についてしまった。

店員とお客さまのやりとりは、ほとんどが記憶にも残らず過ぎていってしまう。
それでも、何気ない一瞬だからこそ、心地よく過ごして欲しい。

そういう接客は、難しくもあるけれど楽しい。
仕事はやりがいもあるし、なんといっても…
一生懸命働いた後のビールはおいしい!

今日も仕事を終えてから、いつもの居酒屋に、いつものメンバーで集まる。

「今年もイルミネーションの時期ですねぇ。」

後輩のアヤメが、ビールのグラスを差し出しながら言う。
アヤメは私が教育係を担当して以来、今は担当の部署は違うけれど、仲良くしている。

「そうだねぇ。」

アヤメは学生時代からの付き合いの、同棲中の彼がいる。
…ひがんでいるわけではないけれど、一緒に成長していけるような関係は、羨ましくはある。

「あれ?
カンナくんは来るんだっけ?」

向かいに座るこちらは、私が入社当時に教育係を担当してくれた、スミレさん。
美人で少し厳しいけれど、仕事ができて、すごく尊敬している。
そしてその本性も…。

男の人に“守りたい”なんて思わせてしまうその細腕で、軽々とジョッキを持ち上げて、ビールをゴクゴク飲む。
仕事中はきっちり結っている長い髪の毛は、今はバサリと無造作におろしている。

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