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【BL小説】人と獣の境界線

あらすじ

人と獣人は対立し、両種族から迫害される有翼人。
薄珂の弟・立珂は身体を覆うほど大きな羽に苦しめられる有翼人だった。
人間に襲われるが獣人の隠れ里が匿ってくれることになる。
そこで兄弟は多くの人に出会うが、薄珂は兎獣人の天藍に惹かれていく。
しかしその先に待つのは平穏ではなかった。
三つの種族を巡るファンタジーBL。
illust Dimoon様(Twitter @Dim_Dim0)



 生き物の気配がしない入り江に、薄珂(はっか)は有翼人である弟の立珂(りっか)を背負ったまま倒れ込んだ。
 立珂の羽はおそろしく巨大だ。それは十六歳にしては小さな立珂の体を覆い隠すほどに大きく、身体の自由を奪っている。さらには背中に負っている大きな傷から血が流れ、羽も服も真っ赤に染まっていた。
 薄珂に羽はないが、全身傷だらけで立珂の血が染み服は真っ赤になっている。

「大丈夫だぞ、立珂。すぐ手当してや――っ!」

 激しい頭痛が走り、薄珂は反射的に頭を押さえた。

「薄珂……あたまいたいの……?」
「……大丈夫だ。それより人間が追ってこれないとこに隠れないと」

 薄珂は隠れる場所を探してきょろきょろするが、見えるのは闇深く光も差し込んでいない森と果ての見えない海ばかり。
 とても潮風を防いで休めそうな場所はなく、それでも立珂を休ませなければと立ち上がろうとするが、その時ドスドスと地響きのような音が聞こえてきた。

(足音? 人間じゃない。獣か……?)

 こんなに大きな足音をさせるなら相当な重量のある獣だ。薄珂は懐から小刀を取り出し、いつでも抜けるように帯に差し込んだ。
 薄珂は身を隠せそうな大きな岩の陰に目を付け、立珂を負ぶって立とうとした瞬間激しい頭痛がして倒れこんでしまう。

「薄珂!? 薄珂!」

 薄珂の視界がぐるぐると周り、とても立つことなどできない。
 それでも足音はどんどん近付いてきて、もう間近に来ているのが分かった。薄珂は立珂を隠すように抱きしめたが、身体よりも大きな立珂の羽を隠すことはできない。

(今度こそ立珂を守らなきゃ……)

 足音はついに薄珂のすぐ隣までやって来た。ふっと陰になり、かなりの大きさであることがうかがえる。
 逃げなければと思っているのに薄珂の頭痛は収まらず、立珂を抱きしめたまま意識は途切れた。


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アルファポリス(全編共通)


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