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きみをまっすぐ歩かせるとか

辻村深月さんの「ツナグ」という本を読みました。

あらすじを簡単にまとめると、生者と死者を一度だけ再会させる能力を持つ使者「ツナグ」の高校生が、依頼を通して葛藤しながらも成長していく様子を描いた物語です。

読了後、この物語を題材に詠んだ歌たちです。

命を主題とした作品は世の中にたくさんあります。
でも、それって実はすごいことじゃない?と思わされました。
生きることと死ぬことはいつでも私たちのすぐそばにあります。
もはや私たちの存在自体が生と死であると考えることもできます。
それなのに、ことばで十分に語れるものではないと改めて感じました。

なぜ生まれてきたのか、何のために生きればいいのか、ということを私はよく考えます。答えらしきものがわかったことはなくて、たいていは綺麗事みたいな安っぽい説明を結論として思考を止めるところまでがセットです。

この物語を読んだ時も、生きる意味について考えていました。
やっぱり答えはまだ出ませんでした。

ただ、この問いへのヒントとなるような一節があり、私の心に強く残りました。

だけど、死者の目線に晒されることは、誰にだって本当は必要とされているのかもしれない。どこにいても何をしてもお天道様が見てると感じ、それが時として人の行動を決めるのと同じ。見たことのない神様を信じるよりも切実に、具体的な誰かの姿を常に身近に置く。
あの人ならどうしただろうと、彼らから叱られることさえ望みながら、日々を続ける。

『ツナグ』辻村深月 新潮文庫

亡くなった人が自分を見ていると思うから、私たちはまっすぐ、誠実に生きられる。みなさんも感覚的によくわかるはずです。
生きる意味は確かにわからないかもしれない。でも、死んだ後で大切な人が道を踏み外さないように、まっすぐに生きるための力になれる。
それだけで、今わたしが存在する意味はある、そう思いました。
この考え方は、これから生きていくためのお守りになるはずです。

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