宇野碧 aoi uno 小説家

小説家です。自由になるための物語を書いています。 発信源はnoteのみなので、ここが読…

宇野碧 aoi uno 小説家

小説家です。自由になるための物語を書いています。 発信源はnoteのみなので、ここが読んでくださる方と出会う場になれば、と思っています。 『レペゼン母』(講談社) 『キッチン・セラピー』(講談社) 『繭の中の街』(双葉社)

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  • シェアハウス碧

    シェアハウスでゆるく共同生活をしながら、人生のあれこれについて小声でお話しするようなマガジンです。 個人的なこと、「これはシェアしたほうがいい」と思うことをダイレクトに書いています。 お好きな部屋でお過ごしください。 月4回ほど更新します。 下宿料は月500円、敷金礼金なしです。 #【仕事部屋】 執筆のバックヤード、小説の書き方など 創作の頭の中を公開しています #【キッチン】 食にまつわるエッセイ #【子供部屋】 子育てという混沌についてのルポ #【ライブラリー】 好きな本・映画・マンガ 未発表掌編小説 #【ベッドルーム】 恋愛・結婚のおはなし #【リビングルーム】 雑談 #【アウトドア】 旅についてのエッセイ

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小説家の宇野碧のnoteを見つけた方へ。

こんにちは。小説家の宇野碧と申します。 人と人の根源的な「わかりあえない」をヒップホップ×親子で紐解いた小説『レペゼン母』でデビューした者です。 未読の方はこちらをどうぞ 何のために書くのか。 それはもちろん、届けたいから。物語を通じて、伝わってほしいものがあるから。私にとっての小説や依頼を受けて書くエッセイは、メッセージを多くの人に届けるための方法です。 だけど一方で、 小説という器には入らないもの、 とてつもなく個人的だけどその向こうに知らない誰かにつながる気配があ

    • いつかはいなくなる

      「ねえ、みんなしんじゃうの?」 最近、4歳の娘がよく死についてきいてくる。 「パパも、ママも、みーちゃんも、ばあばも、オークワの人もみんなしんじゃうの?」 最後のオークワというのは、和歌山県のスーパーマーケットのチェーン店のことだ。 「そうだよ。生き物はみんないつかは死ぬんだよ」 たとえ県内最大手のスーパーマーケットの店員だったとしても、例外ではない。 「どうしてしぬの?」 「うーん、どうしてだろう。死ななかったらつまらないからじゃない?それに、生まれた生き物がみんな死ななか

      • ミャンマーの豚の脳みそ

        旅先での忘れられない味は、たいていその土地で生きる誰かとセットになっている。 19歳の夏、私はバンコクのスワンナプーム空港でヤンゴン行きのフライトを待っていた。 機体トラブルで搭乗が伸びに伸びていて、搭乗ゲートで待っている乗客たちはどんよりとしていた。たまに「あと1時間」と期待を抱かせるアナウンスがあり、そのたびに待っている乗客たちの間ですこし生気が戻ったものの、結局5時間ほど遅れた。 待っているあいだに、近くに座っていた中華系ミャンマー人のチョウナイさんという人と知り合っ

        • クセを生かす

          「ちょっと癖がある」「あの人は癖が強い」「手癖が悪い」、などなど。 癖という言葉は、総じてあまり良い使われ方をしない。カーリーヘアを「くせ毛」というのも日本独特で、日本の考え方を映しているような気がしていた。

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          かたつむりと性をめぐる冒険③

          ある本を読んで、「どういうことだろう?」と理解できなかった部分が、他の本を読んでいて不意に解答を得られることがある。 すこし前に「セックスする権利」という本を読んだ。 フェミニズムと性をめぐる英米のムーブメントを俯瞰し、複雑なことを複雑なまま考える筋肉を鍛えてくれるような良書だった。

          かたつむりと性をめぐる冒険③

          かたつむりと性をめぐる冒険 ②

          かたつむり…? その章の内容は、1999年に男女共同参画社会基本法が制定された後、男女共同参画社会に向けた活動、とりわけ「ジェンダーフリー」という言葉がことさらバッシングされていたというもので、その根拠となっていったのが八木秀次がジェンダーフリーを批判する時の「カタツムリ論」であったという。

          かたつむりと性をめぐる冒険 ②

          かたつむりと性をめぐる冒険①

          あれはたしか2003年、学生時代に留学していた頃の話。 留学先の学校で知り合った日本人の男の子と話をしていたときに彼が、「性別がわずらわしい。どちらかの性別しか選べないとか、自分の生物学的な性別に合わせて生きなきゃいけないのは不自由で違和感がある」というようなことを言っていた。 わたしもその頃、よくそのことについて考えていたので、「わかる」と共感し、「雌雄同体のカタツムリとかになりたくない?」と言ったところ、「ああ、カタツムリ!すごくいいね!」と返ってきた。 今思い返せば、

          かたつむりと性をめぐる冒険①

          あなたが今夜もよく眠れますように

          今日もなにかのドッキリかと思うくらいのものすごい日差しが照りつけていて、干していた足拭きマットが完膚なきまでに、徹底的に、バリバリに乾いた。これは、いつもより余分に水分を吸収してくれるんじゃないか?という期待と、乾きにくい足拭きマットが一時間でこんな状態になるなら屋外にいる人間はどうなってしまうんだろう、というおそろしさが入り交じる。

          あなたが今夜もよく眠れますように

          生きている青

          黒を身につけなくなって、何年くらい経つだろうか。 昔は、特に冬、黒いニットやコートを着ることも多かったし、「痩せて見える色」という認識だったので店でもよく手に取っていたと思う。 ある時から、黒を着ていると気が滅入ることに気づいた。たぶん、ぼんやりしていたらわからないくらい微妙にじわじわと、なのだが、生体エネルギーが奪われている感じがするのだ。自分らしさが閉じ込められて社交性が硬直し、表面的にしか人と関われないようなモードになる。 思い返すと、黒を着ている時にあまり心から楽し

          ナウシカにはなれないけど、ゴキブリは殺さない

          理解できないものはたくさんあるのだけど、そのひとつが「虫がダメなんです」という人だ。 非難とかではなく、自分の実感としてどうしてもわからない、ということ。

          ナウシカにはなれないけど、ゴキブリは殺さない

          『玉繭』~「繭の中の街」サイドストーリー

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          『玉繭』~「繭の中の街」サイドストーリー

          仕事って何だろう、と考えていたらこうなった

          車に乗り込むと、助手席に乗った息子が刀(おもちゃ)をつきつけてきた。 「何のつもりだ」 「ママを誘拐して身代金1億円要求する」 「誰に?」 「お金持ちの人に」 「見ず知らずのお金持ちが私のために1億払うわけないやん」 「まちがえた。パパに」 「パパが1億も持ってるわけないやん」 「まちがえた。1万円だ」 そもそも人質の人選が間違っている。

          仕事って何だろう、と考えていたらこうなった

          本と出逢った瞬間

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          世界は断言できないことばかり

          「知らんけど」を関西人以外も使うようになって久しい、らしい。 「知らんけど」、「わかんないけど」、「かもしれない」、「とか思ったりするんだけど」…どれも断定を避ける言葉で、私はよく使う。口頭だけじゃなく、文章でも使いがちだ。 「断言」って、断つという字面もそうだけど、音の響きもゴツゴツしているし、すっぱり切ってしまってお互いに逃げ場がないような、ゆとりを許さないようなおそろしさを感じる。 「知らんけど」グループの一言は、すっぱり切った断面の間に座布団を置いて「例えあなたと意

          世界は断言できないことばかり

          夏と夜

          小説推理で特集する、「夏に読みたいオールベスト小説」への寄稿を依頼された。28人の小説家が、夏に読みたくなるおすすめの小説をコメントと共に紹介するという企画らしい。 面白そう!とすぐに受けてから、はて、夏…と考え込んだ。 夏… 夏……summer…… 頭の中でTUBEの歌がリピートするばかりで、小説が浮かんでこない。 (どうでもいいけど昔、TUBEのボーカル前田さんと飯島直子が離婚した時、街頭インタビューで『前田さんは夏以外は家にいるから夫婦円満だと思ってたのに』というコメン

          夫婦間のバランス

          前回の記事を読んだ方がくださったコメントで、夫婦について色々と思い出したり考えたりすることになったので、書いてみたい。 あれは数年前のこと。 「夫婦関係や子育てに役立つお話を聞く会をするので、ぜひ来ませんか」 地域の顔見知りの女性から誘われた。 詳細もわからないし面倒だったけど、再三誘われていたので、行かなきゃ申し訳ないかな…という気持ちがあり、妊娠中で仕事を休んでいて時間があったこともあり、そのお話会とやらがある公民館へ出向いた。