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かたつむりと性をめぐる冒険①

あれはたしか2003年、学生時代に留学していた頃の話。
留学先の学校で知り合った日本人の男の子と話をしていたときに彼が、「性別がわずらわしい。どちらかの性別しか選べないとか、自分の生物学的な性別に合わせて生きなきゃいけないのは不自由で違和感がある」というようなことを言っていた。
わたしもその頃、よくそのことについて考えていたので、「わかる」と共感し、「雌雄同体のカタツムリとかになりたくない?」と言ったところ、「ああ、カタツムリ!すごくいいね!」と返ってきた。

今思い返せば、言動や印象にどことなくフェミニンなところがあり、女性の恋人がいた彼はノンバイナリー(男女どちらの性にも固定されないセクシュアリティ)だったのかなあと思う(そしてわたしはノンバイナリー要素が少しあるシスジェンダーと言えるかもしれない)。
あの頃はまだ、ノンバイナリーという言葉も認知されていなかったのだけど、彼のかたつむり、いいね!という前のめりな反応と、自分の違和感を共有できたようなほのかな嬉しさは、くっきりと覚えている。

けれどまさか、20年以上経ってそのことをこれほど思い出すことになるとは、考えていなかった。

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2,775字
すべて未発表、noteのみのエッセイです。

シェアハウスでゆるく共同生活をしながら、人生のあれこれについて小声でお話しするようなマガジンです。 個人的なこと、「これはシェアしたほうが…

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