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800字日記/20221025tue/108「温かい缶コーヒー」
耳元でネコが鳴く。目覚める。窓の外で風がびゅうびゅうとうなる。そのうなりは春や夏とはちがう。乾いた冬の音だ。
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ネコを追ってベランダにでる。朝焼けだ。肌寒い。毛布に包まりなおす。布団が欲しい。ネコが走りまわってうるさい。起きる。洗濯機をまわして、台所を整頓して、ネコのトイレを変えて、洗面台をみがく。納豆ごはんを食べると眠くなった。
正午に起きる。部屋の掃除は済んでいた。部屋をでて隣町にむかう。
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刈り入れが終わった田を抜けて国道を南へはしる。曇っていて風は冷たい。
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ゴム手の片方かと思ったが、ひき返す。拾う。ロードバイク用の手袋だった。すごくいい手袋だ。考える。父は警官だった。学校帰りに拾った百円玉を見せると、やるといわれた。百円玉で書類を作るのは面倒で割に合わないといった。迷う。リュックに入れる。
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空が暗くなってきて腹が鳴る。弁当を作って来ればよかった。思った矢先にうどん屋が見える。迷う。
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「ごぼ天」をたのむ。うどんは、写メを撮ってくれと言わんばかりに湯気を立てる。インスタ映えするのをパシャリ撮ってやって食う。
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しまむらに着く。迷う余地はない。布団がなければ冬を越せないし、これ以上コスパの良い店は近隣にない。買うべき布団もひとつしかない。問題は、いま買うかだ。
過ぎた列車はおなじ形で二度こない。思う。
時間があったので、杵築城が見える橋を渡って城下町を散策した。ベンチに座る。
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「どこからきたのかね」
老人が声を掛けてきた。ほおが赤い。
「隣の国東からです」
ぼくは答える。
「散歩ですか? 」とぼくはいうと「ビールをね」と笑って自販機へむかう。
ベンチから立つと自販機の影から老人がひょっこり顔をだす。温かい缶コーヒーをくれた。ぼくを待っていたようだった。
「ありがとう! 」
思いのほか、声を張り上げた。
昨日の唐揚げ屋の女将といい、二日つづけてだ。
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しまむらに寄ってふとんを買う。リュックにカラビナでゆわえて背負って帰る。
(800文字)
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