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人生波風ばかりだが、今日も。20230324fri270

398文字・20min

男は目覚めた。股が温かく漏らしたかと頭を擡(もた)げる。くぼみでネコが丸まっていた。布団から起き上がってパソコンを開く。昨日のブログ記事を読みかえした。内容はひどいが文章は読みやすかった。

昨日の女に吐かれた言葉が男の胸に、魚の骨のようにささる。
「私が知りもしない女や娘に今後も慰謝料をはらう。私は耐えられません」
未婚の五十女だった。

男は残りの人生を考える。なにかが間に合わない気がした。人間の人生は奇妙で不思議だ。自分でなりたい職業には向いていない。向いている職業には興味がない。職業という社会通念に向いていない。片足で生まれた少年はプロサッカー選手になりたいと育つのか? それ以上考えるのをやめる。
梅雨の紫陽花の葉の裏に這うナメクジや田に生えるカエルだったら、少なくとも今の男の人生よりも楽だったろうに。

机に投げ出された文庫本をよむ。妙な活力が湧いた。
波風ばかりだが、今日も書こう。男は思った。

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