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《語彙の三語三文》:手書き帖 4.8〜4.15

2730文字10min


四月八日(月)

【馥郁たる・ふくいくたる】
⑴馥郁たる梅の香り
⑵「馥郁たる子さーん!」
「ハーイ!」
「診察室五番からお入りください」
⑶馥郁たれりこの梅、この桃、この女の太もも

【悴む・かじかむ】
⑴寒すぎる。手足が悴んできた。
⑵「手が悴んでハシがモテない」
「ブリッジのハシかい?」
⑶悴む手女は千も万も擦る / 誓子

【拗ねる・すねる】
⑴「マサル。そんなに拗ねるないでよ」
「なんだよマサヨそんなに拗ねなくても良いじゃないか」
「あのふたり、あんなところで何をやってるんだ?」
⑵「すぐに拗ねるな! それじゃあまるで子どもだぞ! 」
⑶拗ねて、気を引くプロポーズ大作戦!


四月九日(火)


【諳んじる・そらんじる】
⑴「私はドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟の全巻を諳んじることができる」
「口だけは達者だな。それに、なんの役に立つんだ」
⑵「腸閉塞、みかん、戴冠式、胎内、虎に扮装、枢機卿、代金、事実、ついに、大統領! 」
「君はいったいなにを諳んじているんだ? 」
⑶「きみはいったいなんなら諳んじられるんだ? 」
「先生、今は暗記はナンセンスですよ。そんなものケータイにやらせればいーじゃん」
「えーん」

【貂・てん】
⑴「これはイタチか? 」
「いや、貂だ! 毛皮にしたら高く売れるぞ」
⑵「見ろ、あれを! 」
「エメラルドの王冠と白貂のマントを身につけた、目もくらむような美女だ! 」
 低地からやってきた。
⑶あの貂の毛皮の女、さてはおれへの挑戦状だな。

【反駁・はんばく】
⑴政府は先日の反政府の声明に反駁した。
⑵「おまえ、おれがそんなに愚かだって反駁するのなら誰にでもわかる例で喩えてみろ」
「お前はドラゴンボールの神龍に『好きな願いをひとつだけ叶えてやろう』と言われて『ギャルのパンティが欲しい』と答えたウーロンくらいに愚かだってことだ」
⑶男は何ひとつ反駁できなかった。


四月十日(水)


【棕櫚・しゅろ】
⑴棕櫚はヤシ科の常緑高木
⑵葬儀用の棕櫚の環
⑶棕櫚でつくったたわしとほうき

【クラビコード】
⑴「主に16世紀にヨーロッパで用いられた鍵盤楽器ってなーに? 」
「クラビコード! 」
「どこでもドア! みたいに言うな! 」
⑵「クラビコードのスペルは? 」
「clavichordですが、スペルだけ覚えても、なんの役にも立たないね」
⑶私はネットでしかクラビコードを見たことがない

【護教論・ごきょうろん】
⑴私は大司教と護教論をたたかわし、外国の君主と国事について語り、教皇と神について論じることができるようになった。
⑵異教徒からの非難・攻撃に対し、キリスト教の真理を弁護・弁証する弁証論それが、護教論。」
「それが、護教論。CMの文句みたいに言うな! 」
⑶「護教論を学べば宗教や信仰や批判からじぶんをまもることができる」
「ひろゆきみたいに? 」
「それは使いようだな」


四月十一日(木)

【貞操帯・ていそうたい】
⑴貞操帯って小説で初めて読んだ。
⑵それから貞操帯をネットで調べました。
⑶そしていま、ネットで買った貞操帯を妻と愛人にそれぞれプレゼントしました。二人ともぼくに含み笑いを見せました。

【同衾・どうきん】
⑴「同衾って言葉なんだかエロいね」
「お前の頭がエロいんだ。おいテレビみろ、今年の流行語大賞が発表されるぞ」
「今年の流行語大賞は…… 同衾です! 」
「もうまったくエロく感じない。金メダル! みたいに同衾が輝いてきた……」
「言わんとしていることはわかる。人口に膾炙っていうんだ」
⑵二週間も経てばあの女、どんな男とも同衾するわ
⑶彼女と同衾していたら(➡︎荷風、あめりか物語)

【反撥・はんぱつ】
⑴反撥したが、なぐられた。
⑵だれよりも強く反撥する。
⑶沈黙をもって反撥をする


四月十二日(金)


【不羈・ふき】
⑴あの男はじつに奔放不羈な男だ。
⑵独立不羈な男だ。
⑶彼には不羈の才がある。

【軋轢・あつれき】
⑴「私はキミの心の軋轢を取り外したい! 」
「まずはその話し方からやめてちょうだい! 」
⑵親との間に生じた軋轢は生コンをうめても固まってもすぐにヒビが入る。
⑶私がつくった新バンド名は「軋轢バッキャンベイビーズ!」夜露死苦!!

【古色蒼然・こしょくそうぜん】
⑴「この色は古色蒼然だ」
「まだアラサーですけど」
⑵「古色蒼然たる佇まいだ」
「まだアラフォーですが」
⑶「この肌は」
「お前が言うな!」
「あれ? どこに古色蒼然をいれるの? 」
「サンキュウ」


四月十三日(土)


【鹿爪顔・しかつめがお】
⑴「おまえ、鹿爪ぶった顔するな。おんなでもできたか? 」
「わかった? でへへ」
⑵「君はしかつめらしい顔してるね」
「誕生日なんです」
「あ、そうだいま駅前でセールスやってるんだ。いまからいそいでいかないと……  」
⑶「あなた、しかつめらしげに私を見るわね。今晩ほしいの? 」
(あ、サダコとの夜を思い出していた…… )

【凄絶・せいぜつ】
⑴「先生、すみませんぼく30年凄絶な争いを『そうぜつなあらそい』と読んでました」
「謝らないで良い。心に秘めておけば、他人にいわくてもいいことだ」
⑵「おれは凄絶な人生を遂げたい!」
「言ってできるっもんじゃないぞ」
⑶凄絶な夫婦げんかは、妻の一撃で幕を閉じた。

【激越・げきえつ】
⑴激越な口調で演説をする
⑵情に激越して小説を書いた。発禁になった。
⑶何よりも激越に愛されたい。


四月十四日(日)



【蘊奥・うんおう】
⑴芸の蘊奥を極める。
⑵「おれの蘊奥を見よ!」
⑶「はーい! 小保方流の蘊奥オークションはじめます。まず100円から」
「はいはいはい!」
「1000円!」
「1500円!」
「…… 」

【パテント】
⑴パテントで稼ぐその男、綿鍋銅三。
⑵私は企業から最も恐れられる女、パテントクラッシャー! 顔美顔、ガンミガンよ! 」
⑶「パテントプール会社設立しよう」
「だれのために? 」
「もちろんみんなのためだよ」
「で、きみが会長になるのか? 」
「…… 」

【沙汰止み・さたやみ】
⑴道路拡張計画は沙汰止みになった。
⑵おれの念力で万博を沙汰止みにして見せる。
⑶首相官邸から発表される政策はすべて沙汰止みになった。ある中国人職員が議員会館に踏み入れたあの日から。


四月十五日(月)


【さかさ海月】
⑴「いま、さかさくらげみないなー」
「連れ込み宿のことですか? 」
「うん」
「ぼくも一度入ってみたいです」
⑵『普通のホテルですね』と、山名が訊いた。『さかさくらげよ』(包丁1954丹波文雄「面河ホテル」)
⑶♨︎はどこ? 伊香保にあるよ。

【灰緑色・かいりょくしょく】
⑴灰緑色は電子辞書にありませんでした。
⑵「灰色がかった緑色とは? 」
「灰緑色! 」
「ピンポン! 」
⑶灰緑色の海

【丸髷・まるまげ】
⑴私は丸髷先生だ!
⑵「いてててて、おれの丸髷をつかむな!」
⑶「この丸髷、100円から!」



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