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小説感想『魔眼の匣の殺人』今村昌弘(読了:2022/10/12)


作品紹介

今村昌弘の『魔眼の匣の殺人』は2019年に東京創元社より出版された作品。文庫版は2022年に出版されいる。「本格ミステリベスト10」で第2位「週刊文春ミステリーベスト10」で第3位「このミステリーがすごい!」で第3位「ミステリーが読みたい!」で第3位を受賞している。ちなみに前作(デビュー作)はミステリ関係賞4冠で、コミカライズや実写映画化もされている。

同シリーズ一作目の『屍人荘の殺人』は既読で、文庫化されたタイミングで本作も購入。中々時間が取れずしばらく積んでいたけどやっと読み終えた。

一部を除きネタバレは避けるけど、ある程度内容には触れているので注意。
#誰が犯人で、トリックは~~等の極端なネタバレは無し

以下はあらすじの引用。

「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」人里離れた施設に暮らし、予言者と恐れられる老女は、その日訪ねた葉村譲と剣崎比留子ら九人に告げた。直後、彼らと外界を結ぶ唯一の橋が燃え落ちて脱出不可能に。予言通りに一人が命を落とし、さらに客の女子高生が予知能力者と判明して慄然とする葉村たち。残り48時間、死の予言は成就するのか。

引用:東京創元社HP

物語の進み方

前作の『屍人荘の殺人』と同様、超常現象をベースに物語が進む本格ミステリ作品。パニックホラー要素があった前作と比べると今作は大人しめな印象。前作は漫画版、映画版も見ているため、映像が刻まれていて派手な印象が残っているだけかもしれないが…。

面白いポイント

予知能力という超常現象がしっかりとルール化されており、違和感なく本格ミステリとして推理を楽しめる。下手にくどい説明をすることなく、非日常的な要素が推理の前提として組み込まれている。この手の作品では、解説パートで「そんなんありか~~」となる展開は普通のミステリ作品以上にご法度だが、もちろんそんなことにはなっていない。

多かったレビュー

レビューを漁っていると、葉村くんと比留子さんのラブコメ的な要素を気にして楽しんでいる人が意外と多い。個人的には人に勧める際にネックになることがある(苦手な人が一定数いる)ので正直どちらでも良いかな…。無ければ無いで寂しいかもしれないけど。

もう一つは前作と比べて地味というレビューが目立ったが、舞台設定上仕方ない意見かなと。個人的には前作はTRICK劇場版、今作はドラマ版のような印象で、どちらも味があって好き。

★ネタバレあり感想★

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それなりに気合を入れて推理したけど、被害者も加害者も全く当たらず。序盤に出てきたトンネルの階段話と王寺の関連や、サキミの正体なんかも当然当たらず。サキミが実は…というのはなんとなく読めたが、伏線まで読み切れたわけじゃないので感覚的なもの。

少し気になったのは、前作を読んでいないと「予知能力は存在する」という点に核心が持てず、いつまでも予知能力自体がブラフとして残り続けるのでは…という点。前作を読んでいれば「前作がアレだったから、今作でもこれくらいは当然できるでしょ」と前提に組み込める。そうでない場合、サキミの予知能力が本物かはさておき、そもそも前提ルールとして理解して良いのか…と推理のノイズになる人もいるのではと感じた。十色のスケブ予知(猪、土砂崩れ)で察してくれということなのかな。

まあ、前作を読んでないと序盤で出てくる娑可安湖の件や明智さんの描写もなにかの伏線だと思ってしまうだろうし、前作を読んでいること前提の作品なんだろうなと勝手に合点

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おわりに

久しぶりに冒頭に見取り図が載っている作品を読んだ。次回作の『兇人邸の殺人』も文庫化されたら読もう。

余談だが、あとがきによると本作の前後で予知・予言ものが何故か集中して出版されたとのこと。有栖川有栖の『インド倶楽部の謎』、阿津川辰海の『星詠師の記憶』、辻堂ゆめの『今、死ぬ夢を見ましたか』、澤村伊智の『予言の島』、これに今作を含めて5作らしい。『インド倶楽部の謎』と『予言の島』は既読だが、近い時期でこんなに出てたのか…。

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