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小説感想『完全なる首長竜の日』乾緑郎(読了:2022/8/26)


作品紹介

乾緑郎の『完全なる首長竜の日』は2011年に宝島社より出版された作品。文庫版は2012年に出版されいる。第9回の『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。

当時、雑誌の『ダ・ヴィンチ』でプッシュされていたのを薄っすらと覚えている。読もうと思った記憶はあるが、結局読まないままだった作品。2013年に映画化されたものは観た記憶があるが、内容は全く覚えていなかった。

何故今更手に取ったかというと、YouTubeでプレシオサウルスの動画を見て、なんとなく本作を積んでいることを思い出したのがきっかけ。作品とは全く関係がないところから引っ張り出してきたが、映画の内容も忘れているし、せっかくなので読んでみることにした。

ネタバレは避けるが、ある程度内容には触れているので注意。

以下はあらすじの引用。

少女漫画家の和淳美は、植物状態の人間と対話できる「SCインターフェース」を通じて、意識不明の弟と対話を続けるが、淳美に自殺の原因を話さない。ある日、謎の女性が弟に接触したことから、少しずつ現実が歪みはじめる。

引用:宝島チャンネル

作品の魅力

あらすじにもあるように、この作品は「SCインターフェース」なるものを使い、主人公と意識不明の弟が対話をすることで物語が進む。その中で、これは現実世界の出来事なのか、それとも仮想空間の出来事なのかと混乱する描写が繰り返され、一気に読むと不思議な酩酊感を覚える。読者としてはどこが着地点で、そもそも物語が進んでいるのかを把握するのも難しい。

この感覚をプラスに捉えるかマイナスに捉えるかで本作の評価は分かれると思う。ミステリを期待して読むと、中々話が進まずもどかしく感じるだろう。伏線も割りとハッキリしているので、身構えて読み進めている人は、早く答え合わせがしたくてモヤモヤするのではないかと思う。個人的には、物語が進んでいるのか戻っているのか分からなくなる感覚を楽しめた。

多かったレビュー

「ミステリ?いやいやSFでしょう」というレビューが多い。このミス大賞!と宣伝されていたため、当然それなりのミステリを期待して手に取った人が多いはずなので、まあ分からないでもない。

個人的にはあまりジャンルは気にしないタイプなので、普通に楽しめた。つい手癖で最低でも片足はミステリに置かれているジャンルを選びがちだが、もう片方の足が何の要素に突っ込まれていても面白ければ気にならない。


おわりに

積読本を消化できて良かった。読み終えた後、結局最期まで映画の内容を思い出すことはできなかった。YouTubeで予告映像を見てみたところ、内容はかなり違っているみたいだった。

ちなみに、予告映像では小説版のネタバレが含まれているので、これから読む人は注意。直接的ではないが、映画用に話を組み替えた結果、映画版シナリオの前提条件が原作のネタバレになってしまっている。動画の概要欄に記載されているあらすじで原作のネタバレがされていて笑ってしまった。

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