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葵むらさき
2020年4月27日 23:09
「それで、このあとどうするの?」母が祖母にきいた。「妖精があらわれるまでずっとここで待つつもり?」「いいえ」祖母は肩をすくめた。「どうやら粉送りたち、もうこの森の中にはいないようだから、場所を変えるわ。でもせっかくだから、ひとつやっておきたいことがあるの」そう言って祖母は、肩からななめにかけてある小さなバッグの口をあけ、中をのぞきこんだ。 ハピアンフェルがその近くに、ふわりと降り立つ。「出て
2020年4月21日 00:35
かぐわしく香る色とりどりの花にはたちまち実がなり、花びらはおしげもなくはらはらと散り落ちていった。ああ、とため息をもらす人もいた。私も、こんなにあっという間に散っちゃうなんてもったいないなあ、と思った。「フュロワ神が、時間を早くまわしているんだろうね」父がつぶやく。「えっ」私はおどろいた。「時間を?」「そう。花たちの時間をね」父がにっこりと笑う。「ぼくたちがあっというまに老人になったりはし
2020年4月14日 09:56
大工の人たちは、菜園界から持って来た道具で、さっそく木を切ったり石を掘りだしたり土をこねたりしはじめた。 ルドルフ祭司さまはじめ聖職者の人たちは、アポピス類――人間の形をしたものも、ヘビの形をしたものも――たちをまわりに集めて、神さまを敬うためにどのようにしたらいいのかを教えはじめた。 アポピス類は、私たち人間を見つけたときとおなじくどこかのんびりと――というかぼんやりとした感じで聖職者たち
2020年4月7日 21:23
人びとはいっせいに首をたれ、帽子をかぶっているものはそれを取り、女性たちは胸の前に手を組み、地面にひざまずく者もいた。 私たち家族もいったんは首をたれ瞳をとじたのだけれど、父と母と祖母はすぐに顔を上げ「神よ」と声をそろえて質問しはじめた。「妖精たちは悪意をもってやっているのでしょうか」「アポピス類たちはどこに隠れているのでしょうか」「地母神界は今どういう状況にあるのですか」 そんなにい