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魔法野菜キャビッチ3 キャビッチと伝説の魔女

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ポピーは魔法の世界に住む少女。その世界では「キャビッチ」という、神から与えられた野菜で魔法を使う――「食べる」「投げる」「煮る」「融合」など。 13歳になったポピーは、新たに「シ…
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2020年4月の記事一覧

魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 70

「それで、このあとどうするの?」母が祖母にきいた。「妖精があらわれるまでずっとここで待つつもり?」
「いいえ」祖母は肩をすくめた。「どうやら粉送りたち、もうこの森の中にはいないようだから、場所を変えるわ。でもせっかくだから、ひとつやっておきたいことがあるの」そう言って祖母は、肩からななめにかけてある小さなバッグの口をあけ、中をのぞきこんだ。
 ハピアンフェルがその近くに、ふわりと降り立つ。
「出て

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 69

 かぐわしく香る色とりどりの花にはたちまち実がなり、花びらはおしげもなくはらはらと散り落ちていった。ああ、とため息をもらす人もいた。私も、こんなにあっという間に散っちゃうなんてもったいないなあ、と思った。
「フュロワ神が、時間を早くまわしているんだろうね」父がつぶやく。
「えっ」私はおどろいた。「時間を?」
「そう。花たちの時間をね」父がにっこりと笑う。「ぼくたちがあっというまに老人になったりはし

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魔法野菜キャビッチ3 キャビッチと伝説の魔女 68

 大工の人たちは、菜園界から持って来た道具で、さっそく木を切ったり石を掘りだしたり土をこねたりしはじめた。
 ルドルフ祭司さまはじめ聖職者の人たちは、アポピス類――人間の形をしたものも、ヘビの形をしたものも――たちをまわりに集めて、神さまを敬うためにどのようにしたらいいのかを教えはじめた。
 アポピス類は、私たち人間を見つけたときとおなじくどこかのんびりと――というかぼんやりとした感じで聖職者たち

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魔法野菜キャビッチ3 キャビッチと伝説の魔女 67

 人びとはいっせいに首をたれ、帽子をかぶっているものはそれを取り、女性たちは胸の前に手を組み、地面にひざまずく者もいた。
 私たち家族もいったんは首をたれ瞳をとじたのだけれど、父と母と祖母はすぐに顔を上げ「神よ」と声をそろえて質問しはじめた。
「妖精たちは悪意をもってやっているのでしょうか」
「アポピス類たちはどこに隠れているのでしょうか」
「地母神界は今どういう状況にあるのですか」
 そんなにい

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