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2019年12月の記事一覧
魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 53
学校に着くまでに涙は引っこんだけれど、ひさしぶりに会ったヨンベはそれでも私の顔を見るなり「おはよう、どうしたの、なんかあったの?」ときいた。
「あ、うん、ちょっと飛んでるときに目にごみが入っちゃって」私は飛びながら考えたいいわけを伝えた。
「わあ、そうなんだあ」ヨンベは痛そうな顔をした。「目が赤くなってるよ。薬草もらいにいく?」
「ううん、もう痛くないし、ちゃんと見えてるし、だいじょうぶ」
魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 52
ヨンベにツィックル便を送ると、すぐに返事が来た。
「クロルリンクムーンって、はじめて聞いたよ。私もいま見てるよ。すごくきれい」
「うん、ほんときれい」私はあらためて満月を見上げながら、しあわせな気持ちに全身つつまれた。「いっしょに見てるのって、なんかうれしいね」
「これが『遠く離れた場所にいる大切な友達との絆』だよね」
「うん」返事のあとおもわず「ふふふふ」と笑った。
もどってきたカ
魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 51
それから私は、両手のなかにハピアンフェルを大切にもったまま、ものも言わず鬼魔たちに背をむけて丸太の家へ帰った。
うしろでユエホワやケイマンやサイリュウや(たぶん)ルーロが私の名前――みじかい方の――を呼んだけれど、ふりむきもしなかった。
「もうポピーとは呼ばないで」とちゃんといい渡したわけだから、返事しなくてもいいと思って返事もしなかった。
ハピアンフェルは私の手のなかでふわ、ふわ、と
魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 50
お昼ごはんの後も、私のピトゥイはイゼンとして発動しなかった。
もちろん、いろんなスタイル――というのかどうか――を、ためしてみた。
唱える前に目をとじて、心をとぎすませて、一点に集中して、思いきり唱える。だめだった。
逆に力を抜いて、キャビッチも頭上たかくさし上げるのではなく、ひじを曲げて楽にかまえて持ち、ふだんと同じトーンで唱える。だめだった。
両手で持って。だめだった。
魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 49
「ピトゥイ」叫ぶ。
何も、起きない。
キャビッチは、手の中にある。手のひらの、上に。
それは祖母のキャビッチ畑になっていたもので、どちらかというと小さめのもの。葉の色は、うすいベージュオレンジだ。ころんとまんまるく、いかにも「野菜の子ども」といったイメージをあたえる。そしてなにより、さすがはガーベラのキャビッチというべきか、私の手のひらから伝わる魔力を、すべて、ひとしずくたりとももらさ