シェア
葵むらさき
2019年2月20日 19:08
私たちは箒でキューナン通りまでいっしょに飛び、手を振って別れた。 そこからまっすぐ、家にむかって飛ぶ。 飛びながら……私はもう、気がついていた。 ふわ、ふわ、ふわ まただ。 そう、今日もやっぱり、聖堂を過ぎたあたりから、“それ”はついて来はじめた。 私はあえて、急にふりかえったりとかしないでいた。 そいつがびっくりして、またすばやく逃げてしまってはいけないからだ。
2019年2月12日 17:06
「ふっふっ」私は鼻たかだかに笑ってみせた。「いまさら何いってんの。うちのママは天下のフリージアよ」「ガーベラの、実の娘……か」ユエホワは前を見ながら、小さくつぶやいた。「気に入られてよかったね」私も前を見ながら、嫌味をこめて言った。「“あの”ガーベラにさ」「――」ユエホワは何も言わなかった。 ちらりと横を見ると、目を細めて唇を尖らせ、明らかに嫌そうな顔をしていた。「また連れて来
2019年2月8日 11:44
その夜ベッドに入ってから、ふと“あの声”を思い出した。「ユエホワって誰?」 あの、小さな、幻のような、声。 細くて、透き通った声だった……女の子の声なのかな? 鬼魔、だったんだろうか。 鬼魔……何類だろう……あんなに、控えめで、はかなげで、小さくて可愛い鬼魔なんて、いるのかな…… と、そこまで考えたあと、私はすっかり眠り込んだ。 ◇◆◇ 鬼魔なら