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映画が完成しました 「青い記憶-Shades of Indigo-」

 自然の恵みと発酵がもたらす藍染めに魅せられた職人たちの姿を記録したドキュメンタリー映画です。

出演:佐々木龍大、日下田正、青木正明、北村仁、大西美由紀、リンダ・ブラシントン、小島卓磨、
清水雅士
監督:ヨシダシゲル

その仕事は、かつてどんな街にも村にも
必ず一軒や二軒はあった

遥か昔、人類はとある植物の葉に含まれる成分が
空気に触れると青く発色することを発見しました
これが藍染の歴史の始まりです

その起源は古く、
紀元前の古代エジプトまで遡ります
日本にはおよそ1500年前に大陸から伝来し
長い年月をかけて成熟した技術は
江戸時代に頂点を極めました

しかし19世紀にヨーロッパで発明された
化学染料によって世界中の暮らしの中から
天然由来の藍の青は失われていきました
それは日本も例外ではありません

何世代にも渡って継承されてきた先人達の知恵は
その歴史的役割を終えこのまま消えゆく
運命なのでしょうか?

藍は生き物
藍の青は発酵によって生まれます
染め液は、何億、いや何兆という微生物たちが住む小宇宙です
気温や湿度によって日々コンディションが変わり
瓶ごとに色の個性が異なります
今日染めた藍が、明日には違う色になることもあります
季節の変わり目には体調を崩して良い色が出せないこともあります
そう、藍は絵の具のように常に安定した顔料ではなく生きているのです
人間は微生物たちのサポート役にすぎません
職人たちは、匂い、味、音、色、触感、五感の
全てをフル稼働させて彼女らが何を求め、
或いは何が足りないかを見極めるのです

本気で昔の人の気持ちになる

そこから始めないと紐解けるものではない

自分の小さな一生では絶対に先人達の技術に追いつけない

藍染師 佐々木 龍大

日本の藍染の技術が最も高かった
江戸時代~明治初期の青を追求し
手間のかかる当時の技法を用いて
再生に挑む孤高の職人便利な機械に頼らず、
身体感覚を研ぎ澄ますことで藍と向き合っている

日本にはまだ知識が残っている

それらをよく見て追いついてほしいと思う

私も試みたが、なかなかその域に達することができなかった

染織家 日下田 正

江戸時代から続く日下田藍染工房の九代目
素材にとことんこだわり天然繊維と天然染料のみを
使用して作品を制作している
自ら育てた綿で紡いだ糸は工業製品にはない独特の趣きがある
残念なことに工房の後継者はいない

化学の歴史はわずか数百年         

人類は何千年も昔から染色をしている

平安時代の頃にはすでに完成している                     

古代染色研究家 青木 正明

天然染料の美しさに魅了され、古代の色彩と染色技術の探求を志す
古文献の調査や研究だけでなく実践を大切にし
化学的なアプローチによってかつての色の再現を試みている

限られた狭い国土の中で
少しでも豊かに生きようとした祖先達は
電気もガスもなかった時代に
身の回りにあるものだけを利用して
いろんなものを青く染めてきました
使う素材は全て再利用できるものばかりです
サスティナブルという言葉が注目される遥か
太古の昔から資源を有効活用し自然と共存する術を
熟知していたのです

地球の裏側の食糧や燃料を運んで来る事が
当たり前になり私達はかつてない豊かさを
手に入れましたがパンデミックや戦争によって
グローバル経済が破綻しつつある中今の快適な暮らしが
持続可能ではないことを実感し始めています
先行きの見えない時代をどう生きるのか?
もはやその問題を避けて通る事はできません

藍染は試行錯誤と創意工夫がもたらした
壮大な人類の叡智そのものですが
スピードと効率が求められる市場経済の中で
ビジネスとして成立させ次世代にバトンを渡すのは
容易な事ではありません
しかし短期的な経済指標では絶対に計れない価値がある事を
私は藍と向き合う人々の生き方の中に見た気がします
その眼差しや考え方にこれから先の未来を切り拓くための
貴重なヒントがあるのではないか
そう思いながら私は夢中になって映像に記録しました

監督 ヨシダシゲル

1970年生まれ(53歳)福井県出身。
1993年文化学院建築学科を卒業
その後、建築家、長谷川逸子のアトリエで非正規社員として働く傍ら俳優や舞台演出、インデーズバンドのギターを務めるなど自らの表現方法を模索する時期を過ごし25歳で映像のディレクターとしてキャリアをスタートさせる
2003年、映画監督、長谷川和彦の新作『連合赤軍』の助監督候補に選出以後数年にわたり資料収集や脚本執筆に関わる
ただ残念ながら『連合赤軍』が実現することはなかった
主な作品として現代美術家の村上隆の創作活動を追った映像やフジファブリック『あなたの知らない僕がいる feet.秦基博』などがある

青い瞬間を求めて

まだ日常がコロナの影響下にあった2022年の11月22日、
はじめて藍染師の佐々木氏の工房を訪ね翌2023年1月5日から撮影を開始、
2024年の1月31日に青を巡る旅は終わりました
制作に費やした日数は346日、
北は青森、南は宮崎と、撮影で訪れた都道府県は19に及び
走行距離は地球の外周に匹敵する4万キロを超えました

青い空、空を鏡のように映す川や湖、空との境が
曖昧な水平線…
淡い水色から黒に近い濃紺まで、刻々と変化する
日本の四季には実に様々な青い瞬間が訪れます
それは藍染師たちが追い求めてやまない色であり、
私達日本人にとっての心の色かもしれません

しかし青い瞬間は刹那的で
あっという間に過ぎ去ってしまいます
また様々な気象条件が重ならないと青い世界を
記録することはできません事前にロケハンをし綿密に計画を立てたのに、
無駄足に終わった事もあればたまたま立ち寄った場所で
幸運に恵まれた時もありました
諦めて帰ろうとした時、突然天候が変わって奇跡的な瞬間に
出会えたことも一度や二度ではありません
沢を横切るツキノワグマと目があったことも
(本編で使用しています)
氷点下の坂道でタイヤが滑って冷や汗をかいたこともありました

撮影地の中には有名な景勝地も含まれますが、
場所が特定できる絵葉書のような切り取り方は極力避けました
それは想像の中だけに存在する幻のような青い世界、
心の風景に近づきたいと願ったからです
そして多くの人たちが一度は体験したかもしれない、
日常の傍にある事象として伝えたかったからです

撮れた映像は私の狙いではなく殆どが偶然です
青く美しい瞬間に立ち会うには、
焦らず気長に待つしかありません
それは藍と向き合う人々の営みにも少し似ています
偶然はちっぽけな私の狙いを遥かに超えてくる
自然からの予期せぬ贈り物でした
「青い記憶」はそんな偶然の積み重ねによって導かれた作品です

■撮影地 青森県/岩手県/秋田県/宮城県/山形県/福島県/長野県/栃木県/神奈川県/静岡県/富山県/石川県/福井県/岐阜県/京都府/大阪府/三重県/山口県/宮崎県

タイトル            「青い記憶」
監督              ヨシダシゲル
製作              近藤 純代
エグゼクティブ・プロデューサー 原田 満生
プロデューサー         菅野 和佳奈
                山田 雅也
サウンドエディター       勝俣 まさとし
レコーディングミキサー     古谷 俊幸
翻訳・通訳           大神田 リキ
FANTASIA           古賀 久也
                畑 瑞木
配給              コギトワークス
制作プロダクション       ACCA
                monosashi Public Relations 
                tateito-yokoito
製作プロダクション       FANTASIA
                YOIHI PROJECT
出演              佐々木 龍大
                日下田 正
                青木 正明
                北村 仁
                大西 美由紀
                リンダ・ブラシントン
                小島 卓麿
                清水 雅士

上映に向けた準備を進めています。
詳細が決まりましたら各SNSにてお知らせ致します。


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