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おばけやしき(M.Iちゃん)

この記事は、2021年5月2日の教室の様子です。

僕はMちゃんの発想が大好物だ。
彼女の考えつくことはぜんぶ面白い。
言うなれば大胆で、ときどき奇天烈で、それでいて無垢で、とてつもなくフレッシュ。

Mちゃんが何かをひらめいたときはいつも、「そうだ、」と言って目を輝かせる。
「そうだ、サメの絵を描こう!」
「そうだ、お店をつくろう」
「そうだ、ネコが遊んでいるところを描こうっと」

誰に伝えるでもなく、まずは言葉にする。
自分のアイデアを形にするための、はじめの第一歩だね。
(その独り言はあまりにも大きいので、僕に喋りかけているのか?といつもMちゃんの顔を見てしまう。そんな僕の反応を、Mちゃんはチラッと横目で見てくる。笑)

本日の「そうだ、」は「おばけやしきを作ろう!」だって。

Mちゃんの「そうだ!」は、一日に何度でもやってくる。

例えるなら、アイデアの芽があっというまに木になり、枝先から花が咲き、気がつけば美味しそうな実にまでなっている。
ほんとなら、その食べごろの果実が落ちてしまう前に収穫をしないといけないんだけど、同時にいくつもの枝から実るものだから、熟れて落ちていく果実を本人ですら獲りそこねている感じ。笑

僕が隣で、大きな大きなカゴを背負って、アイデアの果実を大慌てで集めているんだけど、ぜーんぜん間に合わない。笑
(当のMちゃんはというと、果実を拾う気はない笑)



今回のおばけやしきも、もとを辿れば「遊園地を作りたい」から始まったことなのだ。
「そうだ、遊園地を作ろう。遊園地にはゴーカートがあって…、観覧車もあって…レストランもあって……。そうだ、”まずは”おばけやしきを作ろう!」。

以前Mちゃんのひらめきを僕がまとめてあげようと、マインドマップに記すのを試したことがある。初めの10個くらいまでは調子よく進められたのだけど、Mちゃんの発想が突拍子もないところへ飛んだり、連想があまりにも多く、A4用紙が鉛筆の線でぐちゃぐちゃになったので、早々にあきらめることにした。笑


そんなものに収まらないくらい、Mちゃんにはとても豊かな発想力がある。とても贅沢で、素晴らしい長所だ。
さて、その素敵な発想をどうやって形にしていく?どういうふうに表していく?


ここらで、やっと僕ら大人の出番だね。

僕がいつも心がけているのは、子どもたちのひらめきに対して、すぐさまレスポンスをとってあげること。
それは早ければ早いほど良いと考えている。

「思いついた!」と呟けば、すぐに画用紙を渡す。
「どうやって描こうかな…」と迷えば、たくさんの画材を広げてやる。
「分かんない」と悩めば、となりに座って一緒に考えを後押しするんだ。

子どもたちのアイデアって、思いつきも早ければ消えてしまうのも早い。
放っておくと、あっというまに頭の中から消えてしまう。
それから賞味期限がとっても短いんだ。

揚げたての天ぷらみたいな。
搾りたてのミルクみたいな。
焼きたてのケーキみたいな。

その時にしかない旨味がある。
子どもたちのその出来立てホヤホヤのイメージを、アツアツのまま、いちばんフレッシュな状態で形にしてあげたい。
どの画材で、どんな描き方で、どのような表現にすればいいのか、子どもたちが描きたいもの・作りたいものによーく耳を傾けて、いちばん良い手立てを一緒に考えていく。



進路が決まってからのMちゃんはすごいよ。
驚きの集中力と、持ち前の器用さと、クリエイティブな熱意で、あっというまに形にしてしまう。

黒い壁に描いたのは、ガイコツに、ろくろ首に、一つ目小僧!
絵の具を混ぜて火の玉まで。
前回の経験を活かし応用して、画材の選び方や描き方だってどんどん成長してる。

不意に新しいアイデアを思いついて、手がけているものを放ってどこか違うところに行こうとするMちゃん。
「もしもし」と呼び戻すのも僕ら大人の役割。笑


半日かけて出来上がったおばけ屋敷は、立派だった。
Mちゃんの大好きなぬいぐるみたちが入り込んで中で遊べるようになっていたよ。
僕もお客さんとして招待してくれた。
Mちゃんの作品はいつも、出来上がってからが醍醐味なんだ。



これからどんなアイデアが出てくるんだろう?
どんな作品ができるんだろう?

Mちゃんのこれからを、とてもとても、おまけにもう一つ、とっても、楽しみにしているんだ。

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