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ひよこちゃんのおうち(Y.Iちゃん)

この記事は2020年10月25日にホームページにて掲載したものです。

Yちゃんがやってきた。
今日がまだ2回目の教室で、ドキドキしている様子で机に座ったよ。

紙粘土を持ってきてくれた。袋から取り出して、こね始めている。
「何を作るの?」と訊いてみたけど、僕の目をじっと見るだけで何も言わない。(笑)
まだドキドキしているみたい。
Yちゃんが作りかけているその形を見て、ひよこかな?と思ったので、そう訊いてみると、Yちゃんは「うん」と首を縦に振ってくれた。

「Yちゃんがひよこを作るなら、僕はその子を食べるオオカミを作ろうかな〜」って言葉が、僕の喉を通って前歯のところまで来たんだけど、あわてて急ブレーキをかけて追い返した。
あぶないあぶない。それは慣れ親しんだとき用の冗談だ。僕の変にふざけてしまう癖を心の奥にしまって鍵をかけた。とびきり頑丈な鍵。

僕は仕切り直して、「ひよこちゃんが住めるおうちを作ろっか」と誘ってみた。
Yちゃんは嬉しそうに「うん」と言ってくれたよ。よかった。
紙粘土に色をつけて、Yちゃんの手から、かわいいひよこちゃんたちが生まれている。Yちゃんはとても丁寧に、愛情深くひよこちゃんたちを作っている。すごく優しい子なんだろうな、と思った。


その間に僕は、空き箱の中から、ひよこちゃんにぴったりの箱は無いかな、と探したよ。
手頃な大きさの、551の豚まんの箱があった。
僕はそれを持って、「これに入れたら、ひよこちゃんたちを美味しく食べれそうだね」と言いそうになったんだけど、またもやなんとか急ブレーキをかけて、質のわるい冗談を追い返した。あぶない。つまんない冗談を閉じ込めておく部屋があふれかえって、飛び出してきてる。 無理やり押し込んで、とびきり頑丈な鍵をかけた。

仕切り直して、化粧品が入っていた無地の上質な箱を
差し出してみた。Yちゃんは、「いいね」と嬉しそうに言ってくれたので僕は安心した。


おうちの床には、フェルトを敷くことにした。
Yちゃんのアイデアだ。暖かくて気持ち良さそう。ひよこちゃんたちの気持ちを考えてて優しい。

おうちの壁に窓をつけた。箱をしめたときでもお家の中の様子が見れるように。
壁にはかわいいお花を描いた。
天井の空には、鮮やかなブルーを塗ったよ。
「夏の朝の空の色」、なんだって。とっても爽やかで気持ちのいい色。


そしてここからがYちゃんの一番の工夫。
おうちの中に家具を作ることにした。

ひよこちゃんみんなで囲める大きさの食卓。
それからふかふかのベッド。
ひよこちゃんたち、なんだかとっても嬉しそうに見える。


ところで、Yちゃんが作ったひよこちゃんは5匹。
6匹目の深緑色のリボンをしている少しふとっちょのひよこちゃんは、僕が真似して作ったのだ。
(ふとっちょになってしまった)

Yちゃんの5匹のひよこちゃんが楽しそうに団欒している様子を、僕のふとっちょひよこちゃんに遠くの物陰から見つめさせていた。(僕の変な冗談)

そしたらYちゃん、笑いながら「いいよ、こっちにおいで!」って迎え入れてくれたよ。
テーブルも6人で座れるように増築してくれたし、ベッドだって、ふとっちょひよこちゃんが入れるように、大きくしてくれた。クスクス笑いながら。(笑)

そのころには僕も、つまんない冗談部屋の鍵を全開に開けて(笑)、Yちゃんとひよこちゃんたちと、楽しく遊んだよ。
Yちゃんに影響されて、僕もひよこちゃんたちにすっかり愛着がわいていたので、お別れのときは少しさみしかった。(笑)
いまごろ、元気にしてるかな。


今度はYちゃんと何を作って遊ぼうかな。
とても楽しみにしています。



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