見出し画像

ぬりたくり(H.Iちゃん)

この記事は2019年9月22日にホームページにて掲載したものです。

美味しい肉じゃがの作り方が詳しく書かれているレシピ本があるみたいに、最近は美味しい配色パターンが書かれている本が多く売られている。

「配色デザイン例」だとか「配色アイデア本」だとか、僕らがいちいち絵の具を混ぜ合わせてあれこれ考えるよりも、プロが考えた優れた配色を真似すれば、自然といいデザインができますよっていう、そんな本。


自分が表したいイメージから索引すれば、それにあった配色が載っている。高貴なイメージにしたいときはこの配色にしましょう。ナチュラルな色はこれ。パリをイメージさせたいならズバリこの配色、という具合にね。


さらにはスマートフォンの無料アプリも充分すぎるほど発展していて、カメラに色を写せば、「あぁ、それならこの色を組み合わせてみたらいいんじゃないかな?」って、とても親切にたくさんの候補色を提示してくれる。

だけど、それって料理でいうところの化学調味料。そしてマニュアル化されすぎた調理手順。

誰がいつ作っても同じ味になる。
人参の切り方も、ジャガイモの蒸し加減も、醤油やみりんの量も、いつでも全く同じになる。
そしてなんだか少しつまらない。


僕が好きなのは手作りの色。
生きてる心の感性が、何度も味見をしながら、塗りたくる色の組み合わせ。

その日の気分で、その時の感情で、いいなと思った色を組み合わせていく楽しさ。

楽しいときは楽しい色になる。
うまくいかないときは、うまくいかない色になる。


Hちゃんはすごいよ。
絵を描くとき、色を塗るとき、とても素直だ。自分の心をそのまま表せている。
その素直さって絵を描くときにすごく大切なことだと思う。


一流のデザイナーにも、色彩検定の偉い人にも、そして優れたAIにさえも、この配色は真似できない。
ぜったいにHちゃんにしかできない。

Hちゃんの出来上がりの絵を見たとき、いつもドキッとする。何度も見返したくなる。


人が心で描く絵はいいな。

この記事が参加している募集

#私の作品紹介

96,726件

#オンライン展覧会

17,307件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?