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蒲生氏郷の兜(Y.Nくん)

この記事は2021年1月10日にホームページにて掲載したものです。

鉛筆やペンで細かい線画を描くのも楽しいけれど、たっぷりと絵の具をつけた筆で描く絵の楽しさを、子どもたちにはどんどん味わってほしい。

エンピツやペンから描き始めるとね、どうしても細い部分が気になってしまう。輪郭線や、顔の表情。手の動き。細かい表現から描き進んでしまう。そうすると、いざ全体へとなかなか進まないのだ。


筆で描く絵というのは、僕の(独特な)感覚で例えると、砂遊びなんかと似ているように思う。まずは大きなスコップで、ザクザクと砂山を作り上げて行くときのあの感覚。それから小さなスコップで形を整えたり、穴をあけたりするでしょ。

それから粘土遊びにも似ているように思う。
ほら、粘土でゾウを作るとき、まずは大きな体や頭からこねるでしょう。それから足、そして耳や鼻や目を付け足していくでしょ。

鉛筆だけで描こうとすると、この順番がどうしても逆になってしまうのだ。ついつい細かい鼻や耳から描き始めてしまう。
この順番が逆になるだけで、絵はとっても気難しくなる。細かい表現にはじめからさっそくぶつかってしまって、イヤになったりあきらめたりする子どもたちの姿をたくさん見てきた。


僕がよくオススメする絵の具がアクリルガッシュ。
ちょっとくらい間違えても、思っていた色が塗れなくても、乾けば後からいくらでも塗り直しができるのもいいところ。失敗を気にせずに絵が描ける。砂遊びするみたいに、とっても気楽にね。だから絵がどんどん楽しくなる。



そんなわけで、Yくんにもアクリルガッシュをすすめてみた。彼の描きたいテーマや性格に、ぴったり合うような気がしたから。いつも学校で使っている水彩絵具とは違っておもしろい。その魅力を感じてくれるはずだと思った。


Yくんはなかなかの歴史通だ。彼が持って来ている分厚い戦国時代の本はとても擦れていて、何度も何度も読み返していることがよく分かる。
お気に入りの武将の話をたくさん聞いた。その中で今日は蒲生氏郷(がもううじさと)の兜を描くことに決まったよ。
(余談だけど僕は歴史が大の苦手で、戦国武将なんか3人くらいしか言えない。もちろん蒲生さんのことなんて存じ上げない)


まずは薄い鉛筆で、画用紙に大まかな当たりをつけた。
線は決して一度で正確に描こうとしなくていい。というか、だいたいでいい。「まあこんな感じだね」というところで、さっそく絵の具に取り掛かろうと用意をした。
そのことにYくんは驚いていたよ。絵はまずきっちりと線画を仕上げないといけないと思っていたみたいだったから。大丈夫、これは塗り絵とは違うんだ。「線からはみ出さないように綺麗に塗る」だなんて考え方は忘れていい。


筆に黒色の絵具をたっぷりとつけて、描き始めた。鉛筆の線はあくまでも目印だ。筆の大胆なストロークで見る見る兜が描かれた。楽しいね。
次は白い絵具で、兜のツヤを表現したよ。少しくらい間違えても、また黒を塗って描き直せばいい。

Yくんと絵具がどんどん仲良くなっていく。兜の背景には、燃え盛る炎を描いたよ。どう?この豪快な炎!
筆のストロークが活かされていて、迫力満点だね。


これだけ十分に筆で遊べたら、いろんな絵を描くことが楽しみになるよ。

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