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UX無関心クライアントを説得する 〜経験に基づいた効果的なアプローチ 〜

ユーザーエクスペリエンス(UX)の重要性が叫ばれる昨今、多くの企業がUXデザインの導入に前向きな姿勢を見せています。しかし、依然としてUXの価値を理解していない、あるいは興味を示さない企業も少なくありません。

本記事では、そのようなUXに無関心なクライアントを説得し、プロジェクトにUXを効果的に導入するためのアプローチ方法についてお話ししたいと思います。


1. クライアントの心理を理解する

UXに興味を示さないクライアントの背景には、さまざまな理由が考えられます。例えば:

コストへの懸念:UX改善に多額の投資が必要だと誤解している
時間的制約:迅速な開発や納期を優先し、UXに時間を割く余裕がないと考えている
効果への疑問:UX改善が具体的にどのような利益をもたらすか理解していない
既存システムへの自信:現状で問題ないと考えている

これらに共通するのは、UXへの投資がビジネス成果に直結しないという認識です。これらの懸念を理解し、適切に対応することが、説得の第一歩となります。

<📌 本セクションのポイント>
・クライアントの懸念を理解し、共感する
・UXへの投資がビジネス成果に直結しないという誤解を解く
・個々の懸念に対して、具体的な対応策を準備する


2. クライアントの言葉で語る:ビジネス目標と結びつけて

UXの専門用語を避け、クライアントが理解しやすいビジネス目標に直結する言葉を使用することが重要です。例えば:

・「ユーザビリティ改善」
    →「顧客満足度向上」、「お客様が迷わず操作できるようにする」⭕️
・「情報アーキテクチャの最適化」
    →「ウェブサイト内の顧客回遊率向上」⭕️
   「必要な情報にすぐアクセスできる画面設計」⭕️
・「コンバージョン率最適化」
 →「ゴールまでの障害を取り除く」⭕️
・「ユーザーフロー分析」
   →「作業プロセスの効率化」⭕️

同時に、データを活用して現状の問題点を具体的に示すことで、UX改善の必要性を理解してもらいやすくなります。例えば:

・「ランディングページの離脱率が80%と高く、潜在的な顧客を逃している可能性があります」
・「顧客満足度調査のNPS(Net Promoter Score)が業界平均を20ポイント下回っています」
・「UIの複雑さにより、月間カスタマーサポート問い合わせが1000件を超えています」

これらの数字を視覚的にグラフや図で示すと、より印象的です。

<📌 本セクションのポイント>
・UXの専門用語をビジネス目標に関連する言葉に置き換える
・具体的なデータを用いて現状の問題点を可視化する
・グラフや図を活用し、視覚的に訴える


3. 具体的なデータと成功事例を共有する

UXの具体的な効果を示すため、同業他社や類似プロダクトのUX改善事例を共有するのがお勧めです。例えば:

・「A社では、チェックアウトプロセスの簡素化により、カート放棄率(カゴ落ち率)が40%減少し、売上が25%増加しました」
・「B社は、モバイルアプリのナビゲーション改善後、ユーザーの滞在時間が2倍に増加し、広告収入が35%向上しました」
・「C社は、顧客サポートページの再設計により、サポートチケット数が30%減少し、顧客満足度が15%向上しました」

さらに、具体的な統計情報を提示することで、UXの重要性をより明確に示すことができます。

  • Forrester Researchの調査によると、優れたUXを提供する企業は、そうでない企業に比べて売上が約1.4倍高い傾向にあります。

  • Jakob Nielsenの研究では、ユーザビリティの改善により、売上が35%増加したケースがあり、ユーザーの生産性が約25%向上することが示されています。

<📌 本セクションのポイント>
・同業他社や類似プロダクトの成功事例を具体的な数字と共に共有する
・信頼できる研究機関や専門家のデータを活用する
・UX改善が具体的にどのようなビジネス成果につながるかを示す


4. 小さな改善から始め、迅速に成果を出す

大規模な変更ではなく、短期間で実施可能な小さな改善から始めることを提案するのは効果的です。例えば:

・「まずは、最も問題のある商品詳細ページの「購入」ボタンの位置と色を変更してみましょう。2週間の試験期間で効果を測定します」
・「ユーザー登録フォームを3ステップから1ステップに簡略化し、登録完了率の変化を1ヶ月間観察しましょう」

改善後は、成果を具体的に示すことで、UXの価値を実感してもらいます。例えば:

・「購入ボタンの改善後、商品詳細ページからの購入率が15%向上しました」
・「ユーザー登録フォームの簡略化により、登録完了率が40%増加し、月間の新規ユーザー獲得数が倍増しました」

このように、ビジネスKPIとの連携を明確に示すことで、UX改善の直接的な効果を理解してもらいやすくなります。

<📌 本セクションのポイント>
・小規模で実施可能な改善案から始める
・短期間で効果測定ができる項目を選ぶ
・改善後の成果を具体的な数字で示し、ビジネスKPIとの関連を明確にする


5. クライアントの参加を促し、UXの価値を体感してもらう

段階的な理解促進

ここまで来たら、UXの概念を徐々に導入することができます。例えば:

1.「人間中心設計(HCD)」という言葉を使い始め、その意味を簡単に説明する
2. 簡単なユーザーテスト(5人程度)を実施し、その結果をクライアントと共有する
3. ペルソナやカスタマージャーニーマップなど、基本的なUXツールを紹介し、それらがどのようにビジネス理解に役立つかを説明する

クライアントの参加を促す

クライアントを巻き込むワークショップやセッションを企画します。例えば:

ペルソナ作成ワークショップ:クライアントと共に主要ユーザー層を定義する
プロトタイプレビュー:改善案のプロトタイプをクライアントと共に確認し、フィードバックを得る
ユーザーテスト:実際のユーザーテストをクライアントに観察してもらい、直接ユーザーの声を聞く機会を提供する

参加型アプローチにより、クライアントのUXへの理解と関与が深まることができます。

<📌 本セクションのポイント>
・UXの概念を段階的に導入し、クライアントの理解を促進する
・クライアントを巻き込むワークショップやセッションを企画する
・実際のユーザーの声や行動をクライアントに直接体験してもらう


6. 長期的なビジョンを共有し、継続的な改善の重要性を伝える

UX改善の継続的な価値を示し、長期的なビジョンを共有します。例えば:

競合他社との差別化ポイントとしてのUX
 「継続的なUX改善により、業界内でのユーザー満足度No.1を目指せます」
顧客ロイヤリティ向上
 「優れたUXは顧客の継続的な利用を促進し、生涯顧客価値を高めます」
ブランド価値向上
 「ユーザーフレンドリーな製品は、ブランドイメージの向上につながり、新規顧客獲得にも寄与します」

長期的なビジョンを描き、合わせて具体的なロードマップをクライアントに提示するのが効果的です。

<📌 本セクションのポイント>
・UX改善の長期的な価値を具体的に示す
・競合他社との差別化、顧客ロイヤリティ、ブランド価値などの観点から説明する
・具体的なロードマップを提示し、継続的な改善の重要性を伝える


7. よくある壁と対処法

UX導入を進める過程で、クライアントからの典型的な反論に遭遇することがあります。以下に主な壁とその対処法:

「予算がない」
 
→ ROI(投資対効果)を具体的に示し、小規模な改善から始めることを提案する
「時間がない」
 
→ アジャイル手法を用いた段階的な改善を提案し、各段階での成果を示す
「現状で問題ない」
 
→ 競合他社との比較データや潜在的な機会損失を示す
「UXは主観的で測定できない」
 → 具体的な指標(コンバージョン率、顧客満足度など)を用いて、UXの効果が測定可能であることを説明する
「既存のユーザーが変化を好まない」
 → A/Bテストを提案し、実際のユーザー行動データに基づいて判断することを提案する

これらの壁に対しては、常にデータと具体例を用いて対応し、クライアントの懸念を丁寧に解消していくことが重要です。

<📌 本セクションのポイント>
・クライアントの懸念や反論を予測し、事前に対策を準備する
・データや具体例を用いて、客観的かつ論理的に対応する
・クライアントの立場に立って、懸念を丁寧に解消していく姿勢を示す


まとめ

UXに無関心なクライアントを説得するには:

1. クライアントの心理を理解する
2. クライアントの言葉で語る:ビジネス目標と結びつけて
3. 具体的なデータと成功事例を示す
4. 小さな改善から始め、迅速に成果を出す
5. クライアントの参加を促し、UXの価値を体感してもらう
6. 長期的なビジョンを共有し、継続的な改善の重要性を伝える

段階的なアプローチを取ることで、クライアントのUXへの理解と信頼を徐々に構築できます。UXの価値を伝えることは一朝一夕にはいきませんが、粘り強くアプローチすることで、最終的にクライアントの理解と協力を得ることができるでしょう。

UXの導入は単なる製品改善にとどまらず、ビジネス全体の成功に直結する重要な戦略です。クライアントとの信頼関係を築きながら、共にユーザー中心の製品開発を進めていくことで、持続的な成長と競争力の強化を実現できると信じています。


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