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【2000字ノンセンス小劇場】君たち文化祭でバンドやるんだよね

「そうなんすよー。クラスにめっちゃ音楽詳しい奴がいて、いろいろ教えてくれるんすよ。そいつがボーカルもやるんすけど声超綺麗で!」
「チッ、惚気かよ」
「惚気ってそのトーンで言うのやめて。なんか違う漢字当てそうになるから。呪怪のろけとか。それとも除毛のろけかな?俺は脱毛されちゃうのかな?」
「いつでもむしってやるぜ」
「笑顔が!怖すぎる!さては本気でしょ!君今真実の口に手突っ込んでも挟まれないでしょ!」
「なんか地下鉄のアナウンスみてえだな」
「『扉付近の方は、手を挟まれないようご注意ください。♪ピンポン、ヒャラララララララン♪』っていうあれね!地下鉄のドアって真実の口だったの?」
「はあ?何言ってんだお前イカれとんのか」
「いや言い出したの君だからね?」
「知らねー」
「その指は仕舞いなさい。あーあ、すんごい顰め面。イケメンが台無しよ?見てくださいよこの眉間の皺の深さ!マリアナ海溝もびっくりでしょ?いやね、こいつこんな顔してますけど一応ドラムなんすよ。俺はギター」
「超へたくそ」
「酷くない!?」
「うっせ。てめえは黙ってリコーダーの吹き語りでもしてろ」
「リコーダーの!吹き語り!」
「アホ面でピーヒャラ踊ってればウケるんじゃね」
「いやなんなの。そしてそれ真顔で言うのね。君ってあれだよね、天然のボケだよね」
「俺は呆けてねえ」
「いや完全に今ボケだから!俺ずっとツッコミしてるから!月に代わって、ツッコミよ♡」
「...」
「謝るからその目はやめて!」
「てめえは呆けを通り越してイカれてんな」
「うっ…、撃たれた…俺はもう駄目だ…言葉の凶器で儚くなりぬ悲劇の少年(享年16歳)に全米が涙する…」
「16?お前誕生日いつだ」
「えー、悔しいから教えてあげない。当ててみな」
「2月29日」
「なんで?!俺4年に一度しか歳とらないの?」
「精神年齢4歳なんだからちょうど良いだろが」
「ちょうど良いって何かな?!嗚呼、最期にもう一度食べたかったぜ…日清のカップヌードル…」
「最後の晩餐がカップヌードルで良いんかよ」
「いやー、俺らの心強い相棒じゃん?雨の日も風の日も雪の日も胃袋を健気に支え続けた三分クッキングじゃん?」
「あれを料理と呼ぶとか脳みそ沸いとんのか」
「♪あれが、料理じゃなければ、何と呼ぶのか、僕は知らなかった~♪」
「米津かよ。良い感じに纏めようとしてんじゃねえわ」
「えー、良いじゃんよねづー」
「『いけずー』のトーンで米津言うな。失礼だろうが」
「ところで話を戻すと、こいつのドラム凄くて。ほんと何でもできるんすよ。わが校のレオナルドダビンチ!」
「…てめえも、最初の頃よりは上手くなったんじゃね、ギター。ちょっと。ひょっとすると。微妙に。微小変位dxくらいには」
「なんか急にデレがきたと思ったらめっちゃ薄めるやん。カルピスがカルピス風味の微かに残る水になったやん。俺のときめきどうしてくれんの」
「もうええわ」
「「どうも、ありがとうございましたー」」
「ってなんでやねん!ていうか『もうええわ』はツッコミの!俺のセリフ!」
「俺は呆けてねえ」
「いやボケてるから!俺もだいぶ怪しくなってきたけどまだツッコミの矜持は持ってるから!」
「...」
「なによ」
「いや、怪しい自覚あるんだー、と思って?」
「やっぱり、ない」
「どうやら俺とお前の間には万策を用いても超越し難き認識に於ける隔絶が鎮座し意思の疎通を妨害しているようだ」
「普通の言葉で喋って!俺国語力低いの!理系だから!」
「そうも言えねえだろうが」
「ハイ、数学もできません」
「せいぜい気張ってリコーダーの吹き語り練習して出直せ」
「だからなんなの、吹き語りて」
「チッ、だから俺は文化祭の出し物はデスマッチが良いっつったんだよ」
「お前の案が採用されるくらいなら俺喜んでピーヒャラするわ」
「おー、大いにやってくれ。そしてスベッて昏倒しろ」
「ところでピーヒャラって何だっけ?踊るポムポムプリン?」
「てめえは一旦食い物から離れろ。踊るポンポコリンだろ」
「おお!ローマの暴君ネロが子猫に見える程のヤンキーの口から出るポンポコリンが新鮮だ…!呼子のイカもびっくりよ」
「ああ?てめえマジで一回ぶっk」
「ブッ…クオフね!何か売りたいものがあるのかな?ブックオフ!」
「ということで俺らのバンド聴きに来なかったらぶっ殺す」
「ああ、言っちゃったよ…。ごめんなさい、カバーが間に合わなくて」
「まあ聴きに来ても音で殺るがな」
「うーん!それは絶対楽しませるっていう決意表明なんだよね!俺はそう信じてるよ!」

―暗転―



 修学旅行のレクレーションで同級生がやってた漫才が面白くて忘れられない葵さん、なんかこういう、なーんにも考えないで、アホみたいにしょうもなくて笑えるやつを作りたいなーというフィーリングで書いた妄想劇場。タイトル通りノンセンス。小劇場ならぬ苦笑劇場。疾走感しかない。ところてんはのどごし。タモリさん曰くうどんにコシはいらない。
 いやー、笑いって難しいですね。あなたにちょっとでもクスッとしていただけたら嬉しいです。


※(ひそひそ話) 元ネタをご存知でない方も十分面白く(多分?)感じられるように作ったつもり(強調!)ですが…元ネタがわかる方、同志ですね。今すぐそっちに飛んで行って握手したいです。




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