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本当に人間はAIと敵対できるのか | 映画「ザ・クリエイター/創造者」感想

 ⚠️ネタバレには配慮してません

 映画館で予告を見て面白そうだなあと思って見に行った。IMAXで予告編とか見ると、二割増しぐらいに面白く見えるんだよね。もちろん、この映画がつまらないってことじゃないよ。

あらすじ

遠くない近未来、人を守るはずのAIが核を爆発させた—— 人類とAIの戦争が激化する世界で、元特殊部隊の〈ジョシュア〉は人類を滅ぼす兵器を創り出した“クリエイター”の潜伏先を見つけ、暗殺に向かう。だがそこにいたのは、兵器と呼ばれたAIの少女〈アルフィー〉だった。 そして彼は“ある理由”から、少女を守りぬくと誓う。やがてふたりが辿りつく、衝撃の真実とは…

公式より

 付け足すところとしては、AIと人類の戦争とあるけど、反AIの欧米と、親AIのアジアに分かれて戦争をしているって世界ってことは書いておくべきだと思う。AIから核攻撃を喰らってブチギレてAIを廃絶しようとしているアメリカ(おそらくヨーロッパも?)と、AI技術を開発し続けたアジアが衝突している。AIを滅ぼすためアメリカがアジアを侵略している形になる。ロシアや中東やアフリカや南米はどんな立ち位置なのかは明示されておらず、わからなかった。中東なんかは宗教的に反AIなんじゃないかなと想像してみたりするけど、まあ、素人の安易な想像でしかないね。ちなみに日本も親AI側。

感想

 率直に言って面白かった。IMAXの大画面と大音響に見合う迫力のある映像で、映画館で見るにふさわしい映画だった。そして、今、この映画が公開されることになんか、世界情勢を絡めて色々想像してしまう。軍事力を背景に侵略する大国と、戦いたくないけど自衛のために戦う小国。当然、映画を作っていた期間を考えれば偶然だろうけど、何かしらのメッセージ性を感じてしまうのは仕方ないのかもしれないね。

アメリカが悪と映るように描かれている

 アメリカはAIを滅ぼそうとしている。AIに協力する人間も同様に容赦なく殺す。それはAIによってロサンゼルスに核が落とされ、許せなくなってしまったからだ。911の時のアメリカのように許せなくなってしまったのだろうね。許すためには理性が必要だ。圧倒的に衝撃的なことがあると、理性が揺らいでしまうのだろう。

 アジアの国々はAIと共存している。うまくいっている。だからAIを敵視する必要がない。そこにアメリカが攻めてきて、容赦なく人やAIを殺していく。アメリカにはアメリカの理由があるんだけど、この映画で描かれているのは、アメリカが侵略者であり、悪ということだ。

ラスボス的存在の空中基地ノマド

ポスターに載ってるこいつ

 アメリカの超兵器、空中基地ノマド。空中戦艦とかの方がカッコいいと思うんだけど、空中基地だって。1兆ドルかけて開発したトンデモ兵器で、空中を移動して、敵国に侵入し、中から飛行機を出したり輸送機で地上部隊を送り込んでくる。それだけではなく、ノマドから高火力の爆弾やらミサイルをバカスカ撃ってくる。空中空母? とにかく超強い兵器。だけどあんまりカッコよくはないよね。シュッとしすぎてるっていうか、ゴテゴテ感がない。見た目の強さが足りない。

 こいつのおかげでアメリカはAI軍団に勝っているらしい。逆にAI軍団のアジアではノマドを破壊することで戦争に勝てるということになる。

 映画を見ていて、なんで敵国に侵入する空飛ぶ的に対空攻撃が仕掛けられないのかよくわからなかった。みんなノマドを見ているだけで、地上から攻撃しようとしなかった。年代は2060年ぐらいで、AIが載ったロボットが動くぐらい科学が発展している。現代にだって地対空ミサイルとかあるし、飛行機がなくても、爆弾乗せたドローンとか突撃させられそうだし、ノマドに攻撃しないっていうのもわからなかった。何か設定があるのかもしれない。

超パワーを持ったAI

 高度に発達したAIロボットと人間の違いはなんだろう? 人間には寿命がありAIにはない。人間は育つのに時間とお金がかかる。AIはすぐに増えることができる。戦争においては、兵士を生産できるという時点で超強い。

 とはいえ、戦闘においては同じ武器を使って殺し合うため、人間とAIに差があるようには見えなかった。(AIの方がセンサー類で人間より優位に立てそうな気がするけど)

 地上戦だけならAI軍団の方が強いんだろうね。
数で攻められるから。だけど、戦争の行方を左右するのは、ノマドみたいな相手の攻撃が届かないところから一方的に大火力を浴びせられる兵器なんだろうね。しかも、アメリカは馬鹿でかい地上要塞のような戦車を投入している。あれはカッコいいし素敵。

 で、アジア勢はノマドを倒さなきゃ戦争に勝てない段階まで来ていた。だから、ノマドを無効化する兵器、超パワーのAIが開発された。そのAIは自分の周辺の電気機器を自在に操ることができる。ノマドに乗り込めばノマドの電源を止めて落とすことができる!!!

 乗り込むことができるなら普通に爆弾仕掛ければいいのでは?
(実際本編では超AIがノマドを止めたけど、ノマドを壊したのは主人公の爆弾)

 あれ? 主人公だけ乗り込んで爆弾爆発させても問題なくね? AI必要あった? まあ、細かいことは気にしないでおこう。

結局は家族の物語

 主人公のジョシュアは潜入工作員で、AIを創り出した人間(クリエイター)を見つけ出すのが任務。場所は東南アジアかな。たぶん。ジョシュアはクリエイターの娘に取り入って、情報を取ろうとするが、娘に惚れて結婚して子供も作っている。(ダメ工作員だな!)

 ジョシュアと嫁が暮らしているところに、アメリカ軍の急襲があって、なんだかんだあって、嫁とお腹の中の子供が死んでしまう。

 ジョシュアはアメリカで自暴自棄の生活を送っているが、嫁が生きていたという情報があり、嫁を探すためやべえ兵器を破壊するミッションに参加する。

 これが映画序盤の流れなんだけど、破壊するやべえ兵器ってのが超AIなんだね。そのAIの正体は、ジョシュアの嫁が自分の赤ちゃんの姿をそのままコピー?したAIのロボットだったんだ。だから、ジョシュアからすれば自分の子供(娘)と同じってことになる。

 で、なんだかんだあって(2回目)、ジョシュアはやべえ兵器の元に辿り着く。兵器を破壊しようと思ったら、その正体は子供のAIで、殺すことができなかった。なんだかんだあって(3回目)ジョシュアと子供のAIは行動を共にする。ジョシュアの目的は嫁を探すことで、AIが手掛かりなると思ったからだね。期せずしてジョシュアは自分の娘と旅をすることになる。この時点では気づいていないけど。

 ジョシュアはアメリカ人らしく反AIで、AIを機械としか思っておらず、殺すことも電源を切ることとしか思っていない。娘のAIもぞんざいに扱っていた。だけど、行動を共にしていくうちに、娘AIに感情移入して、だんだんと特別な存在になっていく。

 娘AIの正体がわかってからは、ジョシュアは完全にパパになった。AIのことを娘として見るようになる。娘AIの方もパパと認識する。つまり完全に親子になる。感動的だね。そして、嫁(植物状態で生きていた)の遺志を継いでノマドを破壊するために、娘と共にノマドへ乗り込んでいく。破壊に成功してハッピーエンドとはならないけどね。

おわりに

 今見るべき物語だと思う。AI対人間というありふれた単純な物語ではない。AIと共存する側と、AIを拒絶する側の争い。AIを色々なものに置き換え可能だと思う。

 映画ではアメリカは反AIでAIを滅ぼす側に回ったわけだけど、本当にそんな単純な反AIになるのかなぁとは思う。だってさ、今だってプログラムのChatGPTにすら人間性を、知性を認識してしまうんだ。人間は騙されやすい。本当に高度なAIができあがったら、もうそれは本当の人間に似た存在になり、人間と共に生きる隣人になる。AIと結婚する人も大量に出てくる。みんなAIが友達になる。相談相手になる。つまり、AIを滅ぼすことは人間自身を滅ぼすこと同じなんじゃないかと思う。プログラムなんて安易な切り捨てはできなくなると思う。

 こういう思考ができるところがSFの楽しさなんだろうね。今映画館で見ることができてよかったと思うよ。

ポストカードもらったの忘れてたので載せておこう

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